医学界新聞

寄稿

2019.07.08



【視点】

全国の医学生が英語で学ぶオンライン外科勉強会

今村 清隆(手稲渓仁会病院外科主任医長)


 英語による医学教育のために常勤外国人医師を2001年から雇用し,臨床留学に力を入れる当院には,臨床留学に関心のある医学生が年間100人以上見学に来ます。臨床留学しないまでも,医学生や初期研修の段階から英語で医学を学ぶ重要性を多くの医学生は認識しています。しかし具体的なプランを実行している方は少ないと思います。

 当院では10年以上,米国にて外科レジデントが毎年受験するABSITE®(American Board of Surgery In-Training Examination)や,米国の外科専門医試験のテキストを用いて,研修医と毎週コツコツ勉強会を行ってきました。

 最近になって,ビデオ通話アプリZoom1)を使うことでオンライン会議が以前よりずっと身近になりました。Zoomを用いれば安定した通話品質で100人まで同時参加可能なオンライン会議を手軽に開催できます。また,他のビデオ通話アプリとは異なり,Zoomではオンライン会議室を開いておけば,各人が自由に参加できます。

 そこで,当院の勉強会を発展させて,英語と外科に興味を持つ全国の医学生を対象に,19年1月から毎週オンライン勉強会を開催しています。医学生なら無料で誰でも参加可能です。勉強会は『Surgery――A Case Based Clinical Review』(Springer)というテキストを用い,扱う章をあらかじめ明らかにして,学生に予習を促しています。当日はテキストに沿って講師が学生に問い掛けながら,皆で学習内容を確認し疑問点を解決します。講師があらかじめ作成したスライドなどの参考資料を適宜示し,テキストだけでは足りない部分の理解を深めます。勉強会は6月までに18回行い,延べ143人の医学生が参加しました。堅苦しくない会をめざしており,学業やアルバイトなどで忙しい中でも参加できるように自由参加とし,途中参加や途中退室も可能です。参加学生からは,「『わからないところがあるほうが勉強会のやりがいがある』という先生の言葉とアットホームな雰囲気で楽しんで参加できる」「英単語や疾患を調べて講義に参加することが習慣化し実力が身につく」「英語が堪能な学生も一緒に勉強するので刺激になる」「卒試や国試の勉強にもつながる」などの感想を得ています。

 また不定期で,実際に海外で活躍している当院の臨床研修修了生によるオンライン講義も開催しています。今年の5月にはカナダ・モントリオールで小児外科フェローシップをしている宮田真先生にこれまでの経歴,米国やカナダでの小児外科研修の実際をお話しいただきました。参加した学生や研修医は講義を聞くだけでなく,宮田先生から英語で出される小児外科領域の口頭試問にもチャレンジしました。

 このように全国の医学生と一緒に日々勉強を続けながら,時折,実際に海外で働いている外科医から話を聞いて刺激を得ることが,学習リズムを身につけ,学習を継続する意欲を呼び起こしてくれると考えます。

 内科系を志望する医学生向けにはこのような機会が既にあるのかもしれませんが,外科系を志す医学生にとっては貴重な機会と考え,紙面を借りてアナウンスさせていただきました。試しに参加したいと思う方は遠慮なくご連絡いただけますと幸いです。

医学生向け外科オンライン勉強会「TKH Surgery for Med Students」

●日時:毎週火曜日21~22時
●使用テキスト:『Surgery――A Case Based Clinical Review』(Springer)
●参加連絡:今村清隆(imamura-ki◎keijinkai.or.jp)まで
(メールを送る際,◎は@に置き換えてください)

参考文献・URL
1)Zoomウェブサイト.


いまむら・きよたか氏
2005年筑波大卒。北九州総合病院で初期研修後,08年より手稲渓仁会病院で後期研修。14年4月より同院における外科系初期研修医の教育担当。17年より現職。専門は消化器外科,ヘルニア。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook