医学界新聞

2018.11.26



Medical Library 書評・新刊案内


おだん子×エリザベスの急変フィジカル

志水 太郎 著

《評者》津田 雅子(宝生会PL病院看護部長)

新人だけでなく,ベテランの後輩指導にも役立つ

 フィジカルアセスメントは,患者の状態を把握し,緊急性があるかないかを判断し,必要とされる治療や看護につなぐ目的で行われます。看護職にとってフィジカルアセスメントは必須のスキルです。

 『おだん子×エリザベスの急変フィジカル』は2016年1月25日発行の『週刊医学界新聞(看護号)』に掲載された連載第1回目(第1夜)から,大変興味深く,毎月楽しみに読んでいました。「わかりやすいな。現場ですぐ役立つな」と思い,病院の各部署にもこの連載を案内していました。今回1冊の書籍として発刊され,活字も大きく読みやすくなりました。

 本書は,夜間や救急など,現場で遭遇しやすい急変場面で使える,実践的なフィジカルアセスメントが症例の中でわかりやすく説明されています。ぜひ身につけておきたい技術,見逃さないでおきたい観察のポイントが満載です。また,装丁やイラストが素敵で,堅苦しくなく,誰もがすぐ手に取ってみたくなる本です。

 早々に各部署に1冊ずつ購入したところ,現場の看護師からの感想は「患者の急変前にはサインがあることが書かれている。サインを見逃さないためには,日ごろの観察が大切だと実感している」「表紙がかわいいので気軽に手に取って読める。1章,1夜ずつで,読み切りやすい」と,たいへん好評です。患者の急変を見逃さず,適切な対応を身につけるために,とても役立つ内容が簡潔かつ明瞭に表現されています。各章に,「急変ポイント」や「エリザベス先輩のキラキラフィジカル」,「おだん子のメモ」で,学びのポイントがわかりやすくまとめてあります。経験の浅い看護師にも,ベテランの後輩指導にも役立ちます。

 さらに,ありがたいことに付録として,ポケットに入れて勤務中いつでも使える「ひと目でわかる! キラキラフィジカル総まとめ」カードが付いています。バッグに入れて持ち歩けば,職場以外の場所でも活用できます。

 近年では,在宅や介護老人保健施設で過ごされる患者さんにかかわる看護師も増えてきました。看護師がドクターコールや救急車コールするときに,的確なアセスメントができ,患者の生命を救えることにつながると思います。ぜひ,多くの看護職に本書を読んでいただき,成功体験を積み重ねていただきたいと思います。

A5・頁122 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03543-9


《看護教育実践シリーズ4》
アクティブラーニングの活用

中井 俊樹 シリーズ編集
小林 忠資,鈴木 玲子 編

《評者》近藤 麻理(関西医大大学院教授・国際看護学)

ベテラン教員にこそ読んでほしい,自らの教育実践を言語化できるようになる書

 「今さら教育学のシリーズ本ですか……」と,看護教育の実践者の方々のつぶやきを想像しながら書評を書いております。

 この手の本は,新人教員が読むべきだとの思い込みはありませんでしょうか。特に,「アクティブラーニング」と書名にドーンと書かれていれば,なおさらかもしれません。実のところ,私もそう思っていました。しかし,書評しなければならないので本書をくまなく読みました。すると,教育経験者が読んだほうが,より面白いことに気付いたのでご紹介させていただきます。

 ベテラン教員たちの普段の授業の中に,本書に登場する数多くのアクティブラーニングの手法を見つけ出すことができます。自分で考えたやり方だと思っていたけれど,「私のやったあの方法には,こういう名前があった」と感心したり,「外国でも共通に使われていたんだ」と世界中の教員とつながったような気分になれたりするのです。また,アクティブラーニングの効果として,コミュニケーション能力はもちろん,チームワーク,タイムマネジメント,人の話を傾聴する,相手に伝わるように話すなどの社会的スキルが知識と同時に身につくわけです。これは,一石二鳥ですよね。

 本書には二つの利用方法があると思います。一つは,初学者として教育を学ぶ教員が,学生の学習を保証するために基礎的な講義法を学ぶための必読書としてです。もう一つは,ベテランも含めて全ての教員が,自分の教育の実践を客観的に振り返り,学生の学習の質を高めるための参考書としてです。

 組織的に教育成果を評価する際には,学生が積極的に関与して学習できたかどうかが重要であり,そのためには具体的な授業方法を世界共通の言語で表現することが欠かせません。私たち看護教員は,アクティブラーニングをやってこなかったのではなく,むしろ,ずっとやっていたのです。しかし,何をやっているかを表現する言語を持っていなかったのです。本書を参考に個々の教員が自らの教育実践を言語化できるようになるのではないかと思っています。

 私は本書を読みながら,教育学者とともに,看護教育の展望について,堅苦しくなく,コーヒーでも飲みながら語れる日がいつか訪れるといいなあと思っています。そのような対話の実現に向けて,「看護教育実践シリーズ」にこれからも注目していきたいです。

A5・頁196 定価:本体2,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03646-7

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