APN活躍の輪を日本でどう広げるか(シンポジウム「We are all Japanese Advanced Practice Nurses――共に考えるAPN の可能性と未来」より)
2018.08.27
APN活躍の輪を日本でどう広げるか
日本出身で主に北米でより高度な教育を受けたAdvanced Practice Nurses(APN;高度実践看護師)およびPhysician Assistants(PA),ならびにプログラム在学中の大学院生で構成されるJapanese Advanced Practice Nurses and Physician Assistants of America(JAPNPAA)主催のシンポジウム「We are all Japanese Advanced Practice Nurses――共に考えるAPNの可能性と未来」(座長=がん研有明病院・鈴木美穂氏,宮崎大・原田奈穂子氏)が7月16日,APNに関心を持つ看護師を対象に東大(東京都文京区)にて開催された。APNには助産師,麻酔看護師,クリニカル・ナース・スペシャリスト(CNS), ナースプラクティショナー(NP)が含まれ,米国では約60年間の歴史がある。日本でもAPNの普及に注目が集まる中,先行する北米ではどのような教育・臨床の体制を作り,社会に根付いてきたか。各演者の発表のダイジェストを報告する。
先行する北米から参考にすべきAPNの方向性と仕組み作り
発起人の野々内美加氏 |
米国でNPとしてプライマリ・ケアを提供する神崎桂子氏(California Veterans Affairs-SNF)は,NPの役割と機能を発表した。米国の場合,高齢者保険のメディケアと低所得者保険のメディケイドでの診察が認められているNPが8割以上を占める。他にも,NPの専門分野は全年齢層を対象とするFamily NPが6割に上るなど,プライマリ・ケアを支えるNPの割合が高いとのデータを報告した。
日本のAPNは,職場における役割をいかに深めていくべきか。米国の成人内科クリニックにて診療するNPの伊東めぐみ氏(El Dorado Internal and Family Medicine)は自身の考えを述べた。日米で共通して看護師は社会から信頼の厚い職種であることから,看護師個人として常に情報をアップデートして看護の質をさらに高め,組織としてCNSを活用することによりEvidence Based Practiceを推進すべきと訴えた。
「APNにとって,継続教育は義務であり,責任であり,権利である」と話したのは成人・高齢者NPの實取直子氏(UCLA Medical Center/Osato Medical Clinic)。米国の場合,NP資格は3~5年ごとの更新制で,一定時間の臨床実践と継続教育が求められる。更新のための学習はNP個人の義務である一方で,教育機会を与える雇用者の責務にも言及し,UCLAでは学習のために年間40時間の有給保障があると紹介した。
木村千尋氏(訪問看護ステーションうんなん)は約5年にわたり米国でNPを経験後,2016年に帰国し,現在は島根県で訪問看護師として在宅医療にかかわっている。日米での経験を踏まえ,日本の在宅医療の課題とAPNの役割を考察した。敗血症予防,褥瘡管理といった慢性期の医療ニーズだけでなく,高齢者施設での総合的医療や地域での緩和ケアニーズにAPNが応えていく重要性を述べた。
カナダでNPとしてプライマリ・ケアを提供する野々内美加氏(Fraser Health)は, NP導入が始まった1990年代後半~2000年代のカナダと今の日本の状況を重ね,社会的な組織作りの重要性を訴えた。NPの歴史が浅いにもかかわらず,カナダで短期間で社会に浸透した背景には,NP教育機関,免許の管理等を通じて看護師・NPの質保証を行う機関,NPの役割を社会に広報し政府と交渉するNP協会の三者の独立と協働があるという。新たな領域を切り開くに際し,「正しいことを,熱意を持って行えば,周りに必ず伝わる」と日本の看護界にエールを送った。
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