医学界新聞

2018.07.02



第20回日本医療マネジメント学会


 第20回日本医療マネジメント学会学術総会(会長=KKR札幌医療センター・磯部宏氏)が6月8~9日,ニトリ文化ホール,他(札幌市)にて開催された。シンポジウム「国内における単回使用医療機器(single-use device;SUD)の再生製造品の安全な利用について」(座長=国際医療福祉大大学院・武藤正樹氏,相模原中央病院・柴崎敦氏)では,SUDの再製造がもたらす医療費削減や地球環境保全への期待と再製造品の有効性・安全性における課題が議論された。

単回使用医療機器の再製造の意義と課題は?

シンポジウムの様子
 高額なSUDの中には,希少金属を含む製品や廃棄時の環境負荷が高い製品がある。「再製造」はこれまで使い捨てられてきた使用済みSUDを回収し,洗浄(分解),部品交換,検査,滅菌などのプロセスを経て新たに製造販売することを目的とした仕組みだ。欧米では2000年代から,オリジナル品(未使用のSUD)と同等の有効性・安全性を保証するシステムを構築し,再製造を行ってきた。日本もAMED研究事業「単回使用医療機器の再製造の在り方に関する調査研究」(研究開発代表者=武藤氏)を踏まえ,米国の規制を参考に2017年7月に省令等を改正し,SUD再製造の規定が整備された。

 初めに登壇した中井清人氏(厚労省)は「オリジナル品の滅菌再使用と再製造は全く別物。再製造は薬機法に基づく製造販売業許可を受けた者が,再製造品目ごとに製造販売承認を得て販売する製品」と強調した。限りある資源や地球環境の保全につながるだけでなく,欧米ではオリジナル品と同等の有効性・安全性を保ちながら価格を3~5割程度に抑えられていることから,医療材料費の抑制の面からも注目されるという。普及に向けてはオリジナル品ごとに何回まで再製造可能かのデータ収集が求められるとし,耐久性・性能保証のさらなる検討が必要との見解を示した。

 ドイツを中心にEUの近年の動向を紹介したのは武藤氏。ドイツでは2002年にロベルト・コッホ研究所による「病院衛生と感染防止に係る勧告」(KRINKO勧告)を満たす再製造条件のもと,現在では大学病院の90%がSUD再製造品を使っているという。2017年にはEUで統一規制が整備され,オランダ,ベルギーなど多くのEU諸国がSUD再製造に動き出す一方で,かつてSUD再使用によるクロイツフェルト・ヤコブ病が起きたフランスは再製造を行わない方針を取るといった各国の見解の違いも報告した。

 「院内での滅菌再使用ではなく,再製造を」と訴えた上塚芳郎氏(東女医大)は,1990年代までSUDを滅菌再使用していた米国が,2000年以降,再製造にかじを切った状況を今の日本に重ねた。米国との比較から,日本での再製造品の浸透には,①オリジナル品をもとに部品を設計・製造し,同等の有効性・安全性を持つ機器を作るリバースエンジニアリング技術の進歩,②再製造が期待されるSUDの多くが包括診療費外の出来高請求となる保険償還価格システムの変更の二つが鍵となると論じた。

 古木壽幸氏(メディアスソリューション株式会社)は,SUD再製造品のニーズと課題を探るため,2015~16年に医師や看護師,オリジナル品製造販売業者などに行った調査を発表。当時,再製造品に対して,医療現場からは安全性とトラブル時の責任所在,製造販売業者からは製品の質を不安視する意見が多かったとした。氏によれば,承認制度の整備によりこれらの懸念はカバーされたものの,採用は後発医薬品調剤体制加算のような経営的メリットがないと進まないとの課題があるという。現場看護師からの「複数回使用できる製品を使い捨てるのはもったいない」といった声を紹介し,「これからの時代,再製造品はなくてはならないものになる」と普及に意欲を見せた。

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