医学界新聞

2018.03.19



第45回日本集中治療医学会開催


 第45回日本集中治療医学会学術集会(会長=千葉大大学院・織田成人氏)が2月21~23日,幕張メッセ,他(千葉市)にて開催された。本紙ではICUでの早期離床に関する研究報告と議論がなされたシンポジウム「ABCDEFバンドル――人工呼吸患者への早期離床の開始時期と介入頻度を考える」(司会=自治医大・布宮伸氏,東女医大・堀部達也氏)の様子を報告する。

ICUにおける早期離床・リハの具体的方法に,さらなる検討が求められる

 ABCDEFバンドルとはICU入室患者の長期予後改善をめざす包括的対策である(G,Hが加わったABCDEFGHバンドルを本紙第3259号にて解説)。2018年度診療報酬改定では「早期離床・リハビリテーション加算(1日につき500点)」が新設される見込みで,ICUでの早期離床・リハへの注目が高まっている。司会の布宮氏は,早期離床を重視する流れに好感を示しつつも,具体的な介入方法は確立されていないと指摘し,今回のシンポジウム企画に至ったと説明した。医療者はいつ,どのような介入を行うべきか。

 最初に登壇した集中治療医の劉啓文氏(前橋赤十字病院)は,早期離床プロトコールの導入が患者アウトカム(人工呼吸器装着期間短縮,退院時歩行率上昇,院内死亡率減少など)を改善するかを確かめた後方視的研究を概説した。ICU入室時の全例リハオーダー,評価アルゴリズムでの患者状態に応じた離床強度の決定,医師・看護師・理学療法士の三者による離床の実行を含むプロトコールの実施により,患者アウトカムは有意な改善を示したという。また,プロトコール導入で入院総医療費が一人当たり約2割減ったことにも言及し,早期離床・リハ領域のさらなる研究に期待を寄せた。

 ICU入室中の筋力低下が原因の運動機能障害(ICU-acquired weakness;ICU-AW)とリハ活動時間にはどのような関連が見られるか。理学療法士の渡辺伸一氏(国立病院機構名古屋医療センター)はこの点を明らかにする研究を3施設共同で行い,ICU-AW予防に必要な1日当たりのリハ活動時間のカットオフ値は22.7分であったと報告。この値が診療報酬上の1単位(20分)より長いことから,診療報酬上の介入のみでは活動量が不足する症例もあると考察した。研究の過程で,離床だけでなくベッド上での筋活動の重要性が示唆されたとの見解も述べた。

 続いて植村桜氏(大阪市立総合医療センター/看護師)がICU入室人工呼吸患者への早期リハの効果について,運動機能と認知機能の指標であるFIMで検討した結果を発表した。ICUにおける人工呼吸器装着患者へのリハにより退院時のFIMの改善傾向が見られたが,平均的な改善度は日常生活に監視・介助を要するレベルにとどまったという。リハの開始時期や介入頻度でFIM改善率の有意差は検出できなかったことについて氏は,除外症例が多いなど研究上の限界に触れ,今後の研究の必要性を訴えた。

 ICU入室患者における早期離床に関する各国の先行研究の対象者に着目したのは松嶋真哉氏(聖マリアンナ医大横浜市西部病院/理学療法士)。他国に比べて高齢化率が高い日本では,海外の先行研究(研究対象者の年齢中央値50~60代程度,入院前ADL自立が多い)と患者背景が違う可能性がある。同院ICUでの9か月間の調査にて,同院ICU入室者の年齢中央値は74歳で,入院前よりADL低下を有する患者が多い(2~4割)ことが判明したという。氏はこれを踏まえ,海外の研究を日本にそのまま応用することは難しいと考察。早期離床の開始時期や介入頻度は日本独自の検討が求められると述べた。

会場には医師,看護師,理学療法士らが多数詰め掛けた。総合討論では,演者の研究方法などについて議論が繰り広げられた。

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