医学界新聞

書評

2016.05.16



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学生と臨床現場の架け橋に


理学療法の臨床実習に必要な“備え”とは何か

上村 忠正(医療法人社団白峰会湖南病院・理学療法士)


学生に精神的・時間的余裕を!

 理学療法士の臨床実習といえば,とにかく「きつい」と言われます。その「きつさ」はどこから来るのか。自分の経験を振り返ると,予備知識,“備え”が不足したまま実習の場に赴いていたためだと思いました。備えというのは,具体的な“もの”だけでなく「人としてのマナー」や「精神的な準備」,「情報」も含みます。

著者の1人である上村忠正さん
 そこで発行したのが理学療法臨床実習サポートブックです。私を含めた6人の理学療法士が自分の実習期間を振り返り,「あのときこれがあったなら……」と思う“もの”と“こと”をまとめました。

実習指導者や患者さんとのコミュニケーションをサポートしたい

 実習中に実習指導者,患者さんとコミュニケーションがうまくとれたかどうかは,実習の全体,そして評価にも影響します。本書では,よいコミュニケーションをめざす上で必要なことや,ピンチのときはどうすればよいかといったことを,個人的経験を元に書きました。雑談力の付け方,飲み会でのマナーなどの細かいアドバイスから,実習指導者と関係が悪くなったり留年しそうになったりしたらどうしたら良いかなどに至るまで,幅広く紹介しています。6人の著者も,それぞれ実習ではいろんな恥ずかしい経験をしました。そうした経験を洗いざらい披露することで,読んだ学生が,「ああ自分だけじゃないんだ」「この人よりはマシだ」と思って楽になればと思っています(笑)。また,実習指導者が何を感じているのかも経験者に書いてもらっています。

 本書を通して,実習には大変さだけでなく,下のマンガみたいにあたたかい経験もあることが伝われば幸いです。


教員から

実習指導者と学生が気持ちよく付き合っていけるかどうかは、実習の結果を左右します

小手 彰太(水戸メディカルカレッジ理学療法学科教員)


「厳しく」から「サポート」へ

 昨今の臨床実習は「学生なのだから知識や技術がないのは仕方がない。学生に学ぶ姿勢や意欲があるならば未熟であっても不合格にはせず、サポートしよう」という捉え方に変わってきています。逆に言えば、学生は、前向きに学ぶ姿勢と意欲があることを、いかに誤解なく実習指導者に伝えるかがポイントになります。

実習指導者だって傷つきます

 以下は実習指導者から聞いたエピソードです。

 実習生が来て、彼の患者さんに接する様子を見ていたら、あまり患者さんを見ていないような気がしたので、それではよい理学療法士になれないと思い声を掛けることにしたそうです。「病気や機能だけでなく、患者さんもよく見てね」と。実習指導者としては意識して優しく言ったのですが、ふと気付くと学生が涙目になっていてびっくり。もしかして強く言い過ぎたのだろうか、もっと優しく言わなければと思い、「いいかな……? 患者さんのQOLをもっとよく見て……」と言いかけたところ、学生の目がさらにうつろに。疲れもあるのだろうと思い、その日はフィードバックをやめて早く帰ってもらうことにしました。しかし次の日の朝、学校教員から電話が入り、「学生が、実習を続ける自信がなくなったとのことですので実習を中止にさせてください」と言われて唖然。

 〝傷〟という意味で言えば、学生だけが一方的に傷つけられているわけではありません。

 実習指導者は自分の臨床の仕事の時間を割いて、無償で実習を担当してくれています。それは「学生が臨床を経験し、学ぶのを助けよう」という、ほとんどボランティア精神によるものです。学生の側に学ぶ意欲が見られなかったり、態度が不遜だったりすれば、実習指導者だってエネルギーが枯渇し、腹を立てたり傷ついたりするのです。

 学生と実習指導者がお互いに気持ちよく実習を通して付き合っていけるか。これは理学療法の技術と同等あるいはそれ以上に、実習の結果を左右する重要な要素だと言えます。


学生から

心強いサポートになった

栗崎 裕一(水戸メディカルカレッジ理学療法学科3年)


 私は先日2年次の臨床実習を終えたばかりの、理学療法学科3年の学生です。今回の実習で『理学療法 臨床実習サポートブック』を活用しました。

 学生としてどのような態度で臨床実習に臨めばよいのか、あいさつ、治療を見学させていただく際の注意点、患者さんへの配慮など、教科書では学べないことが「先輩方の実習中の経験談」に記載してあり、心の準備ができました。

 先輩方も苦労したんだ、というエピソードが、クスっと笑えるマンガで描いてあり、よいシミュレーションになりました。

この本にはここまで書いてある!

 →実習前のあいさつの電話のかけ方
 →遅刻・欠勤の時の電話のかけ方
 →これを持っていかないとイタい物リスト
 →お礼状の書き方サンプル
 →デイリーノート,デイリーアクションシート実例
 →先輩が書いた症例レポートとレジュメ19種類
 →エビデンスを探す際のオススメ検索サイト
 →動作・姿勢の描き方サンプル(データ付)
 →家族構成・相関図,家屋図の描き方

理学療法 臨床実習サポートブック
レポート作成に役立つ素材データ付

著:岡田慎一郎/上村忠正/永井絢也/長谷川真人/村上京子/守澤幸晃

理学療法士をめざす学生の臨地実習をトータルにサポートするガイドブック

 学生が苦戦する臨床実習でフル活用できる実習の手引書。実習の流れを概観した後、デイリーやレポートを書くためのノウハウを、経験者ならではの視点でアドバイスする。

 お礼状の書き方をはじめ、コミュニケーションのコツや危機克服Q&Aも役に立つ。

 作成者のアドバイス付のレポート19種類、そして「歩行図」「動作図」「姿勢図」「反射図」もコピーが可能な形式でWebからアクセスできます。

B5・頁224・2015年 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02413-6

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