医学界新聞

2016.03.28



シミュレーション教育における指導者の役割

第1回シミュレーション教育ワークショップ開催


 第1回シミュレーション教育ワークショップ――インストラクションデザインと実践(主催=東京医療保健大医療情報学科)が2月22日に同大世田谷キャンパス(東京都世田谷区)にて開催された。同学科では,学生が多職種の実践を体感できるよう,高機能シミュレーターを用いた模擬的な臨床体験を導入している。本稿では,医療者教育で有名なハワイ大のSimTikiシミュレーションセンターディレクターを務めるBenjamin W. Berg氏がシミュレーション教育における指導者の役割について語った講演の模様を報告する。


講演するBerg氏
 学習者自身が能動的経験を得られるシミュレーション教育は,医療者教育に効果的であることが多くの論文で示されている。現場に近い状況で学習者の能力を伸ばせること,専門家としての実践能力(コンピテンシー)を批判的視点をもって向上させることがメリットとBerg氏は語った。

学習者自身の自己評価と自己修正を促す指導を

 氏は,シミュレーション教育を効果的に実施するには指導者の育成が重要だと述べる。指導者の第一の役割はカリキュラムの構築。シミュレーション教育を,戦略的にカリキュラムに組み込む努力が必要である。氏は,インストラクションデザインのADDIEモデルを元に,分析・設計・開発・実施・評価を繰り返し,より良いプログラムへと成熟させていく必要性を訴えた。シミュレーション教育の内容は,学習者と指導者双方からフィードバックを受けて,常に改善していくことが重要だという。

 第二の役割は,シミュレーション後の「ディブリーフィング」における,ファシリテーターまたはコーチとしての指導だ。教育のゴールでは,一定の習熟基準を全ての学習者が達成することが求められる。シミュレーション教育であれば,学習者の習熟レベルを授業中に確認でき,個人に合わせて訓練の回数や指導を変化させたり,基準をクリアできるまで繰り返し訓練を行わせることが可能になる。この反復訓練を効果的に行うために重要なのが,「学習者自身が自己評価と自己修正をしていくために,シミュレーション後に行われるガイド付きの振り返り」と定義されるディブリーフィングであり,シミュレーションそのものよりも長い時間をかけて行われる。指導者は改善点を指摘するのではなく,適切な質問を投げ掛けて学習者が自分で気付くように導いていく。フィードバックを通してどこに焦点を当てて学習すべきかを学習者自身が気付くことで,自ら学び,目標に到達する能力が養われると解説した。

 氏は最後に,シミュレーション教育を取り入れる場合,時間・コスト・マンパワーの問題に留意し,効果を考えながら徐々に取り入れるようアドバイスして講演を締めくくった。

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