医学界新聞

2015.04.27



第5回日本看護評価学会開催


会場の様子
 第5回日本看護評価学会(理事長=藍野大・菅田勝也氏)が3月14-15日に東医歯大湯島キャンパス(東京都文京区)にて開催された。本紙では,シンポジウム「病院および看護の国際化について――米国CLASガイドラインから学ぶ」(司会=千葉大・野地有子氏)の模様を報告する。

◆病院と看護に“国際化”を

 世界各国で急速に病院の国際化が進んでいる。米国では文化的・言語的な違いによって,受けられる保健医療サービスに不平等が生じることがないよう,組織対応のガイドライン「Culturally and Linguistically Appropriate Services(CLAS)」が発表され,公共政策として普及している。日本でも外国人患者の受け入れを行う病院は増えているものの,個別の対応が充実しているとは言いがたい。外国人患者に対する医療提供は,生活習慣や価値観などの違いから生じる戸惑いも多く,病院における文化対応能力(Cultural Competence)の教育と環境整備は急務であると言える。

 はじめに,司会の野地氏が581施設の看護部長を対象に実施した,外国人患者受け入れに関する実態調査の中間結果を報告した。回答のあった180施設のうち,外国人患者に特化したデータ収集を実施しているのはわずか21施設(11.7%)であったものの,「受け入れが増えている実感がある」と回答した施設は3割を超えており,外国人患者を看護する機会は増加傾向にあると分析。ガイドラインが作成されている米国でも,看護師の多くが外国人患者の対応時に,国籍や使用言語,習慣や価値観の違いによる診療・看護上のトラブルが発生した経験を持つという調査結果を紹介し,日本でも今後さらに増加が見込まれる外国人患者の受診に備え,トラブル発生時の問題解決プロセスの検討が求められると訴えた。

 CLASガイドラインの執筆者の一人であるJulia Puebla Fortier氏(DiversityRxエグゼクティブディレクター)は,日本で自動車事故に遭い,救急外来を受診した経験を語った。同様に日本での受診経験を持つ外国人を対象に行ったアンケート結果もあわせて示し,外国人患者が言語的な障壁によって抱く不安について説明。こうしたアンケートなどから彼らの不安を知ることは,外国人患者の視点に立った病院作りをしていく上で必須であると述べた。さらに,看護師は患者や患者家族にとって最も身近な権利擁護者であり,看護師がケアの公平性に関心を持つことは,国籍を問わず全ての患者の利益につながると呼び掛けた。

 最後に登壇したのは倶知安厚生病院の林久美子氏。北海道の道央に位置する同院は,スキーやスノーボードなどの観光地として有名なニセコ・ルスツを医療圏に含み,冬期には骨折での入院が多いという。近年では外国人観光客も増加し,冬期4か月間での外国人患者数は千人を超えると説明した。そのため,冬期の通訳5人体制,院内表示の英語併記の徹底など,外国人患者に合わせた環境整備が進んでいる。その一方で,英会話のできる看護師にかかる業務上の負担や,日本の習慣や治療内容を理解してもらう難しさなどの課題も挙げ,病院施設の国際化には医療者の理解と教育が不可欠だと説いた。

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