医学界新聞

2014.04.14

オープンダイアローグが秘める可能性
ナーシングカフェ「『オープンダイアローグ』ってなんだ!?」のもようから


左から石原氏,斎藤氏,向谷地氏。
 斎藤環氏(筑波大),向谷地生良氏(北海道医療大),石原孝二氏(東大大学院)を講師に迎えた医学書院ナーシングカフェ「『オープンダイアローグ』ってなんだ!?」が,3月24日,医学書院(東京都文京区)にて開催された。

 「オープンダイアローグ」は統合失調症に対する治療的介入の手法で,フィンランドの西ラップランド地方に位置するケロプダス病院のFamily Therapistを中心に,1980年代から実践されているもの。危機状態にあるクライアントのもとへ,“依頼から24時間以内”に“専門家チーム”で出向き,“状態が改善するまで毎日”患者と家族や親類を交えて“対話”する――。このシンプルなアプローチにより,抗精神病薬をほとんど使うことなく,2年間の予後調査で初発患者の82%で症状の再発がないか,ごく軽微なものに抑える等,目覚ましい成果が得られたと報告されている[関連文献PMID:14606203,16433289,12197148,16633478]。

 当日はまず,斎藤氏がその手法の概要を解説した。現場で行われる対話の特徴として,「患者の発言を批判せず,次の問いをもたらす形で応答」「診断や症状を焦点化せず,患者の置かれている状況に着目」「合意に至ることではなく,異なる視点の共有を目的とする」「入院治療・薬物療法は可能な限り行わず,その可否も患者を交えた話し合いの中で行う」等を列挙。「これまで急性期の統合失調症というと『とにかく薬物療法』という状態だった。オープンダイアローグはその状況を変える希望がある」と期待を寄せた。また,英国ロンドン市内で開催された「Open Dialogue Weekend Seminars 2014」に参加した石原氏は,「ストラテジーやテクニックではなく,考え方であり,他の人々とのかかわり方である点が強調されている」と報告。セラピストが心を開き,当事者の前で互いの考えを話し合う「自己開示」も重視される等,その手法の特徴的な点を挙げた。

 「浦河べてるの家」の設立者・向谷地氏は,こうした手法を「これまで積み重ねてきた臨床的な経験やエビデンスを取り込んだ,現実的なアプローチ」と評価。「統合失調症治療の在り方,精神疾患を抱える患者が暮らしやすい生活等,これまで蓄積されてきた議論をさらに深める必要があるのではないか。その必要性を示した点からも,オープンダイアローグの実践は意味がある」と自身の見解を示した。

※本イベントのもようは,弊社発行の『精神看護』誌17巻4号(2014年7月発行予定)で,より詳しく掲載予定です。

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