医学界新聞

2013.09.23

看護関連事業の予算獲得に向けて

第17回日本看護管理学会開催


シンポジウムのもよう
 第17回日本看護管理学会(会長=日看協・福井トシ子氏)が「人口減少時代の人的資源管理」をテーマに,8月24-25日,東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。本紙では,自治体の看護関連予算獲得に当たっての看護管理者の役割について議論したシンポジウムのもようを紹介する。

看護管理者に必要な予算獲得に向けた働きとは

 学会企画シンポジウム「どうなる? 看護関連予算――一般財源化のインパクト」(座長=石田まさひろ政策研究会・大島敏子氏,慶大・小池智子氏)では,看護関連事業の予算獲得プロセスが紹介され,看護師を育成・支援する重要な事業を実施,継続していくために,看護管理者が行うべき働きかけについて論じられた。

 地方公共団体における看護関係予算の一部が,特定財源(特定の使途に交付される国からの予算)から一般財源(使途が限定されていない国からの予算)に移った経緯を説明したのは,国立看護大学校の田村やよひ氏。これによって看護職員確保対策関係事業は医療提供体制推進事業に含まれる一事業となり,地域によっては看護関係予算の確保が困難になったという。氏は,看護関連事業予算の獲得のために,看護管理者には,(1)臨床現場における課題の明確化,(2)自治体の看護関係予算の動向の把握,(3)政策担当者や議員への予算要求,(4)予算計画に沿った事業実施と予算継続の要求,の4つの働きが求められると主張。会場の看護管理者にエールを送った。

 大阪府看護協会の前会長である豊田百合子氏(大阪保健福祉専門学校)は,新人看護師研修事業について府の予算獲得に成功した経験を紹介。2009年度当時,府の新人看護職離職率が全国平均の8.6%に対して10.3%と高かったことを受け,府看護協会は新人看護師の卒後臨床研修事業への予算を府行政に申請したが,認められなかった。そこで方針を転換し,府議会議員に対して事業による医療環境向上の効果を訴えた結果,理解が得られ,予算を獲得。研修事業の実現とともに離職率も改善したという。氏は,好機を逃さない行動力と賛同者の確保が予算獲得を実現させたと振り返り,これからの看護管理者は予算政策への関心と人の心を動かす力を持つべきと結論した。

 新卒看護職員の離職だけではなく,出産・育児等を理由とした離職や看護学生の県外就職による看護師不足が課題の山形県では,2012年度より看護師確保の予算を増額し,(1)看護学生の確保定着,(2)現職者のキャリアアップ,(3)離職防止,(4)再就業促進を目的とした「山形方式・看護師等生涯サポートプログラム」を実施。渡邊丈洋氏(山形県健康福祉部)がその成果を報告した。具体的には,新卒看護師研修や県内看護学生への職場説明会の回数を増やし,現役看護師のキャリアアップ支援や離職した看護師の復職支援も実施。その結果,2012年度末の看護学生の県内就職率は前年の61.5%から68.3%と上昇,病院勤務の新卒看護職員離職率は前年の6.3%から4.2%と低下し,いずれも改善した。また,ナースセンターを介した看護師の再就業率も全国平均24.5%に対して36.6%と高値を示し,これらの改善結果に会場からは驚きの声が上がった。

 最後に大島氏は「一般財源化によって看護事業予算は保障されなくなったが,看護管理者が周囲の意識を変えていくことで事業は実現できる」と締めくくった。

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