医学界新聞

2013.08.26

がん患者の“外見”の問題を支援


支援センターの説明を行う野澤氏。“隠す”ことを意識せずに試着を楽しめるよう,約60個のウィッグの中には,ピンクや金髪など派手なものもそろえる。
 がん治療が進歩し,「どれだけ生きるか」より「どのように生きるか」を考える時代になりつつある。社会生活を送りながら治療を続ける患者も増えたが,治療過程で生じる脱毛やむくみ,爪の変質など外見の変化が苦痛をもたらしたり,ライフイベントに支障を来す例も多い。しかし,そうした外見の変化への予防やケア,その影響についてはエビデンスの集積段階にあり,がん診療連携拠点病院でも多くが手探りで支援している状況だという。

 そのようななか,このたび国立がん研究センター中央病院に「アピアランス支援センター」(以下,支援センター)が新設。医療機関の独立部門としてがん領域における外見の問題を扱う日本初の施設であり,看護師,薬剤師,心理士のほか腫瘍内科医,形成外科医,皮膚科医がチームでサポートを行う。

 7月31日の説明会では,がん研究センター理事長の堀田智光氏が「“がんとの共生”を見据えた社会的なアプローチも,治療法の開発などと同等に重要」と発言。支援センター長の野澤桂子氏は「外見は“社会との接点”。その変化は患者の自己肯定感を低下させ,常に病気を意識させる因子ともなる」と指摘し,スタッフの山崎直也氏(皮膚腫瘍科)も「命と引き換えに傷が残ることを受忍する時代ではない。外見の変化をカバーすることで治療もスムーズに進み,治癒の喜びも大きくなる」と語った。

 支援センターは,商業ベースに拠らない安全で公正な知見を届け,患者の“生きる力”を支えることを目的に,研究・教育・臨床の3領域で活動を展開する。現在は患者向けの美容講習会や結婚式などの個別サポート,医療者向け研修会などを開催。今後は,一括した情報提供から個別介入まで支援を4段階に区分した「がんセンターモデル」を軸に,外見の諸問題を包括するガイドラインの作成や,他地域のがんセンターとも連携した,全国規模のネットワーク作りも進めたい考えだ。

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