医学界新聞

2013.02.25

Medical Library 書評・新刊案内


心電図を見るとドキドキする人のための
モニター心電図レッスン

大八木 秀和 著

《評 者》生天目 安英(福島第一病院・循環器内科)

心電図を読む上で最も大切なことに応える一冊

心電図はどこから見る? 読む?
 「心電図がわからない!」と言われる看護師さんに「心電図はどこから見ますか?」と質問すると,みなさん,フリーズしてしまいます。

 心電図がわかる方は,自分なりの心電図を見る順序が決まっています。実際は,心電図を読んでいくのに決まった方法はありません。見落としさえなければいいのです。

 心電図の波形を一生懸命覚えても,心電図が読めない一番の理由は,この順序にあります。本書では,心電図を3つのルールと4つのステップから,レッスン形式で読み解きます。

《3つのルール》
 ルール1:心拍数を見る
 ルール2:QRS幅を見る
 ルール3:症状を知る

《4つのステップ》
 ステップ1:リズム(RR間隔)を見る
 ステップ2:P波を見る
 ステップ3:QRS波を見る
 ステップ4:ST変化を見る

 初めの《3つのルール》は,ルールに基づいて,"心電図が正常か? 異常か? を判断できるようになる"ことを目的としています。

 そして心電図と臨床症状と合わせ,緊急度,危険度を即座に判断させることで,心電図波形に特化した,今までのモニター心電図の本とは趣を異にしています。このため,特に夜勤中に心電図の判読を迫られたときに判断に困らないような,看護サイドに立った解説になっています。

 さらに,ルールを理解するための基礎知識についても,かみ砕いた表現で説明されており,"QRS幅が狭い,広いってどういうこと?"といった,超初心者の疑問もわかりやすく解説してあります。

 次の《4つのステップ》では,心電図を"決められた手順で読む癖をつける"ことを目的としています。初めに述べた心電図はどこから見るのか,そして見落としのない読み方について,ステップを通して習得していきます。

 (リズムは?)⇒(P波は?)⇒(QRS波は?)⇒(ST変化は?),常にこの手順を踏む癖をつけるのがねらいです。リズムを"音"でとらえる点は,視覚だけではなく,聴覚を動員して心電図を読むという点で,なるほどと気付かされました。

心電図を読む上で最も大切なことは?
 私が本書にとても感銘を受けた点は,臨床を最大限に重視しているところです。臨床医,看護師,医療従事者にとって,心電図が読めることはとても大切なことなのでしょうが,著者がルール3で"症状を知る"と示しているように,まず,患者さんをみることが,最も大切なことだと思います。そしてこれこそが,心電図を習得していく近道なのです。

 波形と症状から,大丈夫な心電図か,緊急を要する心電図かを身体で覚え,"瞬時に危険な心電図波形を見極め,瞬時に対応する"ことが本書の最終目標です。

 本書は心電図に対応する解説がまとまっているため,行間が空いて見やすくなっています。またレッスンごとのイラストが絶妙で場面をイメージしやすいため,一気に読み進められる一冊です。

B5・頁112 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01617-9


《JJNスペシャル》
看護研究の進め方 論文の書き方 第2版

早川 和生 編著

《評 者》上田 伊佐子(徳島県立富岡東高等学校羽ノ浦校 看護科・専攻科看護科/専攻科長)

看護研究のテキストとして,授業で活用したい1冊

 本書は「看護研究の進め方」「論文の書き方」「プレゼンテーションの方法」がコンパクトに凝縮されており,看護研究のプロセスをこの1冊で理解することができる。これまでも類似の書籍が種々発刊されているが,基礎看護教育に携わる私が,本書を看護研究テキストとして採用したいと思うのは,次の点からである。

"砂時計モデル"で研究にかかる時間と労力がイメージできる
 第一は,研究のプロセスを10段階に分け,その過程を"研究プロセスの砂時計モデル"として,砂時計の砂の流れで表現したところである。砂時計のくびれ部分にあたる,リサーチクエスチョン(研究上の問い)を絞り込むまでの準備段階をしっかりすること(砂時計の上部にある砂の量をためておくこと)が,その後の研究をスムーズに進めていくために重要であることを,砂時計で表現している。初めて研究を行う人がこれをみると,研究ステップの時間と労力をイメージしやすい。

研究で重要とされるスキルを丁寧に解説
 第二は,研究で重要とされる「リサーチクエスチョンの洗練の仕方」と「研究計画書の書き方」「クリティークの視点で文献を読むこと」が丁寧に解説されていることだ。

 初学者はとかく研究の意義や方向性を明確にしないまま,自分の興味本位で研究をスタートさせてしまいがちである。看護実践のなかから生まれた「答えを見つけたい」と思うテーマを,「意義のある」研究に昇華させるためには,先行文献をしっかり読んでリサーチクエスチョンを絞り込み,研究計画書を練るという緻密な作業が必要である。そして,論理の一貫性や信ぴょう性が確保された研究を進めていくためのベースは,文献をクリティークする力であり,私は,研究の入り口に立つ学生のその力を育てたいと思っている。本書ではこの「クリティークの視点で文献を読む」ツボが,わかりやすく解説されている。

親しみやすいページ構成
 第三に,研究に欠かせない内容がしっかりと書かれているにもかかわらず,サクサク読めるところである。親しみやすい文章表現や,カラー誌面,豊富な図表・イラストが読む人の理解を助けてくれる。コラム「よくある相談と回答」で,初学者が陥りやすいピットフォールを補ってくれていることもありがたい。そして,難解な用語には同じページ内の「NOTE」で解説がされており,さらに詳しいことが知りたい人のために文献を紹介してくれている。意欲が高まった読者は,それをヒントに専門書に手を伸ばし,本書の内容とリンクさせながら次のステップにつなげていくことができるだろう。

 看護師がケアの質を担保するためには,患者のニーズを満たすための質の高いケアを日々創造していく必要がある。看護ケアのエビデンスは,実践の場で生じた疑問を研究し,その成果を蓄積して実践に還元することにより明らかになっていく。その研究の入口では,科学的な態度や考え方を培いながら,研究本来の楽しさを感じられることが大切である。本書は,初学者が「新しい『知』の生産者に自分もなれる」という自信を抱きながら,さらなる研究の楽しさの連鎖反応を創造していくために,最初に手に取るべき1冊である。

AB判・頁192 定価2,520円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01683-4

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