医学界新聞

2013.02.25

第1回日本公衆衛生看護学会開催


  第1回日本公衆衛生看護学会が,1月14日に佐伯和子会長(北大大学院)のもと,首都大東京荒川キャンパスにて開催された。2012年7月に設立された本学会にとって初の学術集会。「新たな公衆衛生看護の創造――すべての人々の健康と生活を支える保健師活動を語り合おう」がテーマに掲げられ,全国から集まった保健師,教員など約680人の参加者が活発な議論を交わした。


佐伯和子会長
 会長講演に立った佐伯氏は,時代に即して公衆衛生を担ってきた保健師の活動の本質は,医療者としての知識・技術を持って住民の生活の場へ働きかけ,地域社会の健康な生活を支える仕組みをつくることにあると主張。本学会の活動の方向性を,公衆衛生看護学の研究を後押しすることで,保健師活動の根拠となる学問を確立させることとし,質の高い実践の実現により国民の健康増進を図りたいと述べた。最後に氏は,「新たな公衆衛生看護の創造の第一歩を本会の議論の中から踏み出したい」と語り,降壇した。

これからの保健師に求められるものを考察

 シンポジウム「保健師活動の過去から未来を語る」(座長=聖路加看護大・麻原きよみ氏,国際医療福祉大・荒木田美香子氏)では,世代の異なる3人の保健師が自らの活動を振り返って,時代を超えて変わることのない保健師の本質を探り,よりよい実践を行うために求められる保健師活動の在り方を考察した。

 初めに登壇した大場エミ氏(母子愛育会)は自身の保健師活動の歩みを交え,法改正に伴って変化してきた地域保健を取り巻く環境や保健師業務を解説し,保健師の地区組織活動の弱体化が見られていると指摘した。地域の健康課題が多様化・複雑化するなか,保健師は,地域住民が支え合って互いに力をつけていく「ソーシャル・キャピタル」に立脚し,住民主体の健康な町づくりに向けた支援を行う必要性を訴えた。

 産業保健師の立場から発言したのは亀ヶ谷律子氏(HSプランニング)。多くの中小企業とかかわるなか,「現場に足を運び,さまざまな人と対話すること」「一つひとつの体験を総括すること」が自らの保健師活動の上で重要であったと述べた。また,これからの公衆衛生看護活動に必要なこととして,保健師の活動を支える知識と技術の集積・理論化を図り,保健師の活動特性や役割を明確にすること,同業他職種だけでなく,他業種とも連携を深めていくことを挙げた。

 大阪府豊中市健康福祉部の田中淳子氏は,地域で行った母子保健活動事例や,同市の保健師が集まって地区診断を実施する「合同研修会」を紹介。それらの経験を通じ,訪問活動や地域住民との対話,抽出したデータから地域の状況を把握し,地域のニーズに基づく保健師活動を実践することの大切さを認識したという。氏は最終的な保健師活動の目標を,住民自らが地域の課題を発見し,対策を講じられるようになることと述べ,「保健師として,地域住民が力をつけていくことを支える立場でありたい」と語った。

 総合討論では,地域活動の重要性が再確認されるとともに,基礎看護教育・現任教育の在り方を見直す必要性にも話が及んだ。

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