MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2012.10.22
Medical Library 書評・新刊案内
≪看護ワンテーマBOOK≫
快適!ストーマ生活 日常のお手入れから旅行まで
松浦 信子,山田 陽子 著
《評 者》宇野 さつき(新国内科医院・がん看護専門看護師)
ストーマ指導に携わるナース必携 患者さんの療養生活が「見える」本
「かゆいところに手が届く」とは,まさにこの本のことでしょう。
私がまだ病棟勤務をしていたころ,退院指導の際に一生懸命ストーマについて勉強し,みんなで話し合ってパンフレットを作ったものの,なかなかきめ細かな生活指導まではできず,「本当にこれで大丈夫かな……」と不安を感じることが少なくありませんでした。それは在宅療養でどのような指導が必要なのかを具体的にイメージできなかったからだと思います。数年前から地域で活動し,患者さんの療養の場にかかわるようになって目からうろこがポロポロ落ちるような体験を重ね,それまでの自分の看護を深く反省しました。
ストーマを持つ患者さんの初回訪問で「○○さんのストーマについて,いろいろ教えてください!」と尋ねると,患者さんは嬉しそうに生き生きと,自分がこれまでがんばってきたストーマ管理について語ってくださいます。「なるほど,そのように工夫されているんですね」と患者さんから学ぶことも多く,本書の冒頭でも述べられているように,「ストーマとうまく過ごすことで自分らしい人生を送ることができる」ということを,そのような患者さんの様子から実感しています。
本書は,なかなか自宅で生活している患者さんにかかわる機会がなく,病棟勤務時代の私のようなジレンマ(?)を抱えている病棟ナースに,とてもお薦めです。ストーマを持つ患者さんのことがもっとよくわかり,「なるほど,こう説明したらいいんだ!」と,「ツボ」をついた指導やケアができるようになれると思います。
患者さんは「ストーマが必要です」と言われた時点からさまざまな不安や葛藤を体験し,自宅に戻れば,自分自身がストーマのある生活に慣れ,意識の持ち様を再構築していかなければなりません。病気や治療と向き合いながらそのようなプロセスを越えていくことは,とてもパワーのいることだと思います。
本書には,長年ストーマを必要とした患者さんとそのご家族に真正面から向き合い,試行錯誤しながらも一緒に取り組んでこられたWOCナースだからこそのエッセンスがいっぱい詰まっています。日常のちょっとしたことやなかなか聞きにくいこと,体験してみないと気付かないことが,詳しくかつわかりやすく,優しい言葉とイラストで紹介されています。
ストーマを持つ患者さんやご家族の心強いサポーターとして手元に置いていただくことはもちろん,ストーマのことをあまり知らないナースへの教育や患者指導に携わる病棟勤務のナースにもぜひ,読んでいただきたいと思います。
ストーマを持つ患者さんの安心感や「やれる!」「できる!」気持ちを引き出すことは,自己のコントロール感の回復にもつながります。本書がストーマにかかわるいろんな人の手元に渡れば,患者さんの笑顔も増えるだろうな……と想像すると,ちょっとワクワクしてきます。
B5変型・頁128 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01601-8
日本フットケア学会 編
《評 者》佐藤 エキ子(聖路加国際病院副院長・看護部長)
フットケアに必要な情報を網羅
2006年の初版から満を持して,『フットケア 第2版』が出版されました。本書はまさにフットケアに必要な情報(製品)のすべてが網羅(品揃え)されている“フットケアの総合商社”と言ってもよいでしょう。それだけ内容が充実しているのです。例えば,フットケアの基礎知識・診断をはじめ,検査・評価法,専門的ケア,治療技術,ライフステージに合わせたケアや靴の選び方,そして社会的支援の活用方法まで,それぞれの専門家によってわかりやすく解説されています。本書一冊でフットケア初心者の読者も,明日からのフットケアが楽しく実践できること間違いなしです。
さて,私事で恐縮ですが,私がフットケアの重要性を認識したのは今から28年前の1984年でした。当時,私は米国のETスクールでETナース(現在の皮膚・排泄ケア認定看護師の前身)の研修をしていました。そこで初めて“フットケア”の概念とハウツーを学びました。それまではフットケアと言えば,まずは足浴と爪切りを思い浮かべたものですが,フットケアは局所管理だけではなく,慢性疾患の管理を含む全身管理が必要であるということに気付かされました。
近年,日本でも医療関係者のフットケアに対する関心が加速度的に深まってきました。フットケアの研究会が誕生し,やがて研究会から学会へと学術的にも急速な発展を遂げ,医療関係者にフットケアの広い概念が浸透してきました。そして,このようにフットケアが発展してきた背景には,医療関係者のフットケアに対する情熱的な取り組みは言うまでもなく,厚生労働省が推奨している「チーム医療」の理念がしっかりと根付き,各医療機関においてそのチーム医療の実践が結実したことが挙げられます。加えて日本人の疾病構造の変化も大きな要因になっています。生活習慣の欧米化とともに,いわゆる生活習慣病と言われている糖尿病,高血圧症,メタボリック症候群,閉塞性動脈硬化症などの患者が増加したこと,また高齢人口や喫煙者の割合が高いことなど,多岐にわたる要因によって足病変を来す患者が増加しています。足の潰瘍や壊疽などの「足病変」が重篤化し,やがて下肢切断をせざるを得なかった例を当院でも経験しています。
そこでフットケアでは足病変の重篤化をいかに予防するかが最も重要になります。よく,褥瘡ケアの最大の治療は「予防」にあると言われますが,まさしくフットケアも予防に始まり,予防に終わると言っても過言ではありません。予防には,足病変の早期発見に向けた確実なアセスメントと評価,再発防止に向けた足・筋肉のリハビリテーション,日常の爪の観察とケアなどをこまめに実施することが求められます。人間の「足」を車の車輪に例えるならば,車の心臓部であるエンジンの性能がどんなに良くても車輪がなければ車は動きません。それと同じく,人間にとって「足」は生活していく上で不可欠な体の一部であり,QOLの維持・向上においても重要な役割と機能を担っています。
本書は,これらのすべてが体系的にまとめられていますので,さらに洗練したフットケアを提供するためにも,ぜひお薦めしたい一冊です。
B5・頁264 定価3,360円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01480-9
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