医学界新聞

2012.07.16

第46回日本作業療法学会開催


 第46回日本作業療法学会が,6月15-17日,東祐二学会長(藤元早鈴病院)のもとシーガイアコンベンションセンター(宮崎市)にて開催された。1008題の演題が採択された今学会のメインテーマは「健康な生活を創造する作業療法の科学――その技(わざ)と愛(こころ)を次世代へ」。「活発なディスカッションをしてほしい」という東氏の呼びかけに応え,熱気あふれる3日間となった。

◆理論的アプローチのコラボレーション

東祐二学会長
 シンポジウム「健康な生活を創造する作業療法の科学」(座長=藤田保衛大・澤俊二氏,東氏)では6人のシンポジストが登壇し,脳卒中により左片麻痺を負ったA氏の事例について,それぞれが専門とする理論的アプローチの立場から介入方法を提言した。

 笹田哲氏(神奈川県立保健福祉大)は人間作業モデルの立場から,対象者との協業を通して真のニーズを引き出すことで,介入の方法が示唆されるとした。

 促通反復療法によるアプローチを提示したのは野間知一氏(鹿児島大病院霧島リハビリテーションセンター)。同アプローチを用いた過去の事例では,分離運動が可能なレベルの運動麻痺に対して4週間の介入を行った結果,通常治療と比較して,上肢Fugl-Meyer Assessmentの総得点が約10%向上することを示した。

 酒井ひとみ氏(関西福祉大)は作業科学の視点から,対象者のニーズを受け止め,専門知識を活用して評価した上で,対象者とセラピストが共に実践していくことの重要性に言及した。岩永竜一郎氏(長崎大)は感覚統合アプローチの立場から,能動的な環境への関わりは,対象者のボディイメージを改善させると述べた。

 認知神経リハビリテーションの立場から発言した宮口英樹氏(広島大)は,認知過程の変質が,運動にかかわるシステムにどのような影響を与えるかを考えることが重要とした。山本伸一氏(山梨リハビリテーション病院)は活動分析によるアプローチを紹介。対象者が課題に対してどのように活動しているかを分析することが,介入の手がかりになると指摘した。

 その後の質疑応答も活発に行われ,理論的アプローチ別に,事例に対する作業療法の展開を議論するという初めての試みは,盛況のうちに締めくくられた。

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