医療事故・紛争対応研究会第6回年次カンファレンス開催
2012.01.16
医療事故・紛争対応研究会第6回年次カンファレンス開催
医療事故・紛争対応研究会第6回年次カンファレンスが12月10日,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。「こころの交流――科学の理論と精神の理論」をメインテーマとした今回は,「医療事故の患者への情報開示と謝罪」(司会=慶大大学院・前田正一氏),「病気についてのつらい知らせ――がん告知」(座長=東大大学院・清水哲郎氏)の2つの演題が設けられ,「安心で安全な医療の提供」に向けた今後の展望が語られた。
研究会のもよう |
治療の過程で不幸にして有害事象が起きてしまったとき,患者あるいは家族に対し,誰がどのようなタイミングでどんな言葉をかけているだろうか。そして,適切な声かけとはどのようなものだろうか。演題「医療事故の患者への情報開示と謝罪」では,病院長,患者家族,研究者など,立場の異なる演者が登壇し,医療者,患者・家族双方にとって非常に困難な状況にいかに対峙するか,海外も含めた最新の動向と日本における課題が語られた。
医療過誤訴訟の増加,損害賠償請求の増大は病院経営の逼迫にもつながりかねず,海外でも大きな問題となっている。そのようななかで近年注目されているのが,「医療事故後の徹底した原因究明と情報開示,必要な場合の謝罪と補償」という一連の流れである。ハーバード大の「医療事故:真実説明・謝罪マニュアル」,イリノイ大の全組織的な患者安全・情報完全開示プログラムなど,米国における先進的な取り組みはすでに日本にも紹介され,話題となった。同じ流れを汲むものとしては,英国の「Being Open Program」やオーストラリアの「Open Disclosure Program」などが挙げられる。さらに2011年にWHOが作成した「WHO Patient Safety Curriculum Guide for Medical Schools」でも,医療系学生が医療事故における情報開示の在り方などについて学ぶことの重要性が指摘されている。
本研究会において新たに紹介されたのは,米国における「Sorry Works! 運動」。ここでの「Sorry」とは必ずしも"謝る"ことや"責任をとる"ことを指すのではなく,「共感を表明する」という意味で用いられている。訴訟はあくまでも最終手段であり,まずは何が起きたのか,その原因は何なのか,この事故を通じて病院はどのような改善策を講じたのかなどについて,患者・家族に情報を提供し,継続的にフォローする。病院に過失があるときには謝罪・補償を行う。事故後のこのような対応が医療者,患者・家族双方にとって望ましく,ひいては医療の質向上にもつながることが示唆された。
研究会では,患者・家族に誠意を尽くしても,患者の要求が,医療者が妥当と思える範囲を超えている場合があるなど,厳しい現状も報告された。一方で,医療過誤に遭った患者家族からは,患者が医療に対し不信感を持つのは医療側の説明・コミュニケーション不足である場合や,当事者の誠実な対応が見られない場合であるとの指摘もあり,継続して両者の溝を埋める努力が必要であることが再確認された。
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