医学界新聞

連載

2011.11.21

小テストで学ぶ "フィジカルアセスメント" for Nurses

【第14回】いろいろなチューブ(1)

川島篤志(市立福知山市民病院総合内科医長)


前回よりつづく

 患者さんの身体は,情報の宝庫。“身体を診る能力=フィジカルアセスメント”を身に付けることで,日常の看護はさらに楽しく,充実したものになるはずです。
 そこで本連載では,福知山市民病院でナース向けに実施されている“フィジカルアセスメントの小テスト”を紙上再録しました。テストと言っても,決まった答えはありません。一人で,友達と,同僚と,ぜひ繰り返し小テストに挑戦し,自分なりのフィジカルアセスメントのコツ,見つけてみてください。


■問題

酸素

(1)酸素投与の方法の違いとFiO2との関連は?
 ・経鼻 Max  L/分:理由は    
 ・マスク     ・リザーバー付マスク    

(2)通常,CO2濃度が上昇すると呼吸が 【促進 ・ 抑制】 される。慢性的にCO2が貯留している人(代表的な疾患は    )では,CO2の上昇では呼吸は刺激されず,O2濃度の 【低下 ・ 上昇】 で呼吸が促進される。COPD患者が急性肺炎など何らかの理由で低O2に陥った際,高濃度のO2投与を行うとO2濃度が高まり,呼吸が 【促進 ・ 抑制】 され結果的にCO2が貯留してしまう。これを(    )という。
 ※SpO2 93%は悪いですか?(再掲)

経鼻エアウェイ

(3)経鼻エアウェイの挿入は    の場合に気道を一時的に確保するためである。サイズの違いは        である。侵襲の高い処置のため,医師の到着まで    で対応してもよい。

(4)去痰困難例では吸痰チューブで処置をするが,【経鼻 ・ 経口】のほうが取りやすい。また気管に小さな孔を空ける方法があり,当院では        を使う。緊急性と安全性(と医師の好み)により選択される。

気管挿管

(5)どんな手順で行うか理解した上で補助できるとよい。医師のスキルのほか    (手技前)と   (手技中)も重要。        を意識して固定する。

★あなたの理解度は? RIMEモデルでチェック!

 R   +I   +M   +E   =100
 Reporter(報告できる)/Interpreter(解釈できる)/Manager(対応できる)/Educator(教育できる)

※最も習熟度が高いEの割合が増えるよう,繰り返し挑戦してみましょう。

■解説

今回から,臨床で使われるさまざまなチューブについて学んでいきます。

酸素

(1)酸素の投与にはいろいろな手段がありますが,その原則は理解していますか?

 少量の場合は経鼻からの投与になります。後述するCO2ナルコーシスが懸念される際には,0.5L/分刻みでの指示が出るかもしれません。施設によっては,院内配管から出た後はダイヤル式に流量が決められているかもしれませんし,投与量の大小で流量計を使い分けているところもあると思います(2Lと15Lが一般的でしょうか)。流量計ではどこの目盛りを読むのか? というのもちょっとしたポイントです。流量により投与できる酸素濃度が変わってきますが,経鼻の場合は鼻粘膜の乾燥が障害となり,通常は最大4L/分程度になります。一度自分自身で経験してみるとわかると思いますよ。それ以上の酸素投与を必要とする場合は,マスク投与となります。

 マスクの使い方も難しいですよね。理論的には経鼻投与より,高い酸素濃度で投与したいときにマスクを使うのですが,実際には,マスクを嫌がって外す(ので経鼻で高流量にする),口呼吸している(ので口から経鼻用ルートで低流量を流す)場合もあるでしょう。ただ,マスクで低流量の投与(例えばマスクで1L/分)をしていると,マスク内で呼気による二酸化炭素の貯留が起こり,実は酸素濃度が高くならない可能性があります。

 FiO2(吸気中酸素濃度)は空気中(カルテ記載ではRA:Room Airも同義)でFiO2 0.21と考えられていて,酸素投与量が上がるたびに“理論的”な目安の数値が決まっています(経鼻1L/分なら0.24,マスク6L/分なら0.40など)。ただあくまで目安であって,必ずしも看護師さんが覚えておくべき数字ではないとは思います。FiO2の数字を意識しているのは,ICUやオペ室に勤務されている看護師さんが多いのではないでしょうか。人工呼吸器管理をすると,“理論的”数値ではなく実際の数値を記録に残す必要が出てきますよね。

 リザーバー付のマスクの使い方については「高流量が必要」「リザーバーの膨らみを確認すること」といったポイントが,BLSの普及などで浸透しているのではないかと思います。

(2)CO2ナルコーシスについては,「肺が悪い人には酸素を投与しすぎるとよくない」という認識を何となく持っている方も多いのではないでしょうか? 筆者自身はあまり病態生理のことを細かく言うのは得意ではありませんが,このCO2ナルコーシスに関しては,できれば理解してもらいたいと思っています。

 初めは難しく感じるかもしれませんが,問題文のような文章を繰り返し眺めていると,次第に覚えられるのではないかと思います。答えはあえて書きませんが,などを参考に考えてみてください。CO2濃度が測定しにくく,推測するものだという認識も思い出してくださいね()。肺が慢性的に悪い方の目標SpO2が比較的低くても大丈夫ということも,併せて認識してもらいたいです(詳しい理論は成書参照)。

 CO2ナルコーシスの機序

 「SpO2 93%は悪いですか?」という問いにはもう答えられますよね()。SpO2を測る際,重要なのは,(1)患者背景(ベースの呼吸状態),(2)呼吸数,(3)酸素条件,でしたね。だんだん知識がつながってきましたか?

経鼻エアウェイ

(3)意識状態の低下により舌根沈下などが起こり,気道が確保できない状態もあります。「いびき」もある意味,気道の閉塞です()。

 「経鼻エアウェイを持ってきて!」と言われたら,何を持っていけばよいか想像できますか? ぜひ,自施設にある経鼻エアウェイを一度手に取ってみてください(当院ではレクチャー中に実物を見てもらっています)。サイズは覚えられないかもしれませんが,細く短いものから,太く長いものまであります。径が相当太い場合,挿入の際には滑りをよくするものは必須でしょう(キシロカインゼリー®など)。それくらい,侵襲の高い処置であると思ってください。気道を確保することが目的なので,応援が来るまで下顎挙上法でもよいと思いますが(),皆さんはどう考えますか?

(4)嚥下障害を認める脳血管障害の患者さんなどをあまり診ていない方は,痰を取るのは口から,と思っているかもしれません。気管内にチューブが入ると咳嗽反射も誘発され,苦しそうになりますが,痰はよく取れます。ベテランナースにコツを教えてもらってもよいでしょう。

 去痰ができない患者さんには根本的な問題があり,その評価が重要です(連載第8回参照)。気管挿管下に人工呼吸器管理を行う,早期に気管切開を行うといった判断ではなく,一時的に去痰を行いやすくするために,侵襲的に器具を挿入することもあります。細かい手技には触れませんが,甲状輪状軟骨靭帯穿刺により気管に孔を空けるもので,当院で採用されているのはミニトラックII®とトラヘルパー®です。緊急性が高い場合は直接穿刺するトラヘルパー®を使うこともありますが,去痰目的のような場合は,使用できるチューブ径や蓋など構造的な利点があり,ガイドワイヤーを用いて比較的安全に施行できるミニトラックII®を用いることが多いです。

気管挿管

(5)Off the job trainingで気管挿管のトレーニングを受けたことのある方も増えているのではないでしょうか? 手技を理解すると補助もスムーズにできると思うので,機会があれはぜひ積極的に受講してみてください。

 気管挿管も含め,こうした手技で大切なのは医師のスキルだけでなく,事前準備や手技施行の際の体勢(体位)です。特に気管挿管の場合,適切なポジションをとれるよう,周りのサポートが重要です。適度な緊張は必要ですが,過度なプレッシャーはあまり嬉しくありません。「余裕があるから笑顔が生まれる」のではなく「笑顔があるので余裕が生まれる」と思うので,温かな雰囲気で(?),緊急時を乗り切れるといいなと思っています。

 気管挿管後の固定は,一般的には「口角 ○cm固定」とされます。バイトブロックを含めた固定法は院内で統一したほうがよいと思いますが,当院ではまだ統一しきれていません。上顎は動かないことから,基本は上顎から上顎という形でのテープ固定が望ましいと思っていますが,正式な方法ではないかもしれません。皆さんの施設では,決まりごとはありますか?

つづく

連載第3回を参照。

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