医学界新聞

2011.02.28

阪大の岸本氏,平野氏が日本国際賞を受賞


左から,平野俊夫氏,岸本忠三氏
 国際科学技術財団は1月25日,第27回日本国際賞の受賞者を発表した。同賞は「日本のノーベル賞」と呼ばれる科学界のビッグタイトルで,「生命,農学,医学」「物理・化学・工学」の2領域から毎年1件ずつ選出される。今回は,インターロイキン6(IL-6)を発見し臨床へ応用した岸本忠三氏,平野俊夫氏(ともに阪大)と,コンピュータのオペレーティングシステム「UNIX」を開発したデニス・リッチー氏(米国ベル研究所),ケン・トンプソン氏(米国グーグル社)がそれぞれ受賞。授賞式は4月20日に国立劇場で行われる。

 1975年,岸本氏は,B細胞による抗体産生を促進するT細胞由来の物質を発見。新種のサイトカインではないかという予想を立てた。その予想を検証すべく,氏はこの物質をコードした遺伝子を探索。83年には,自身が教授を務めていた阪大細胞工学センターに,大学の後輩に当たる平野氏を呼び寄せ,共同で研究を進めた。両氏が遺伝子の同定に成功したのはその約3年後のことで,新たに見つかった物質はIL-6と名付けられた。

 両氏らはその後も研究を継続し,IL-6が幅広い機能を持つことを明らかにした。中でも,関節リウマチの発症に対する関連性が判明したことは重要だ。この知見をもとに開発されたトシリズマブ(2008年に薬事承認)は,約70か国で関節リウマチやキャスルマン病などの治療に役立てられているほか,前立腺癌,骨髄腫,膵臓癌などへの有効性も検討されている。今回の授賞では,基礎研究から臨床応用に至るまでの道のりを一貫して築き上げた業績が大きく評価された。

 記者会見で岸本氏は,「真髄をついた医学の研究は診断や治療に必ず役に立つと信じてやってきた」と述べ,基礎医学研究に向かう際の心構えを説いた。平野氏は,「現在は医師不足で治療現場を維持することにばかり目が行きがちだが,医療の進歩のためには基礎医学研究こそが重要」とし,基礎医学研究の活性化に向けて後進の研究者を激励した。

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