医学界新聞

2010.08.23

第20回日本看護学教育学会開催


 第20回日本看護学教育学会が7月31日-8月1日,大阪国際会議場(大阪市)にて青山ヒフミ会長(阪府大)のもと開催された。20周年の節目を迎えた今回は,テーマを「キャリア発達の節目を支える看護学教育」とし,看護学教育が変革期にあるなかで,看護職の成長をどうサポートするか議論された。


「いのちの教育」の位置付けとは

 20周年記念事業シンポジウム「『いのちの教育』の在り方と看護学教育が果たす役割」(座長=福岡県立大・安酸史子氏)では,看護学で「いのち」をどう教えていくか,三氏が口演した(写真)。

 まず川口孝泰氏(筑波大)が,「いのち」にかかわる哲学の体系化であるケアリング教育の充実が今後の看護学教育に必要とし,少子高齢化社会で「看護の芽」を育てるには,初等・中等教育での「いのちの教育」の実施とコアとなるコンピテンシーの開発が求められていると,自身の経験を交えて話した。

 藤井美和氏(関西学院大)は死生学の立場から「いのちの教育」の本質を問うた。氏は,主観性・関係性・アプローチの視点,の三点を「いのちの教育」の課題として提示。死生観が相対的になりつつある今,教育者が自身の価値観を問い直すことが求められていると提言した。

 最後に小中学校で「いのちの教育」を実践する上野恭子氏(浜の町病院)が,講演のスライドや生徒たちの感想を紹介。いのちのリレー継続のために,「生と死」にかかわる看護職が,正しい知識と行動を伝える必要性を訴えた。

教育の視点から考える特定看護師(仮称)

 緊急特別企画パネルディスカッション「特定看護師(仮称)創建への動きと看護学教育」(座長=慶大・小松浩子氏,千葉大・手島恵氏)では,特定看護師(仮称)育成の鍵を握る「教育」を軸に議論が展開された。

 まず岩澤和子氏(厚労省)が,特定看護師(仮称)検討の経緯を詳説。氏は看護師を,チーム医療のキーバーソンであり患者の治療・療養生活を総合的に支援する存在と規定。その役割を拡大する特定看護師(仮称)制度のポイントを,(1)高水準の看護の中での「特定の医行為」,(2)必要なのは判断・予測・新たな事態への対処,(3)患者のニーズに基づきQOLを高める看護,(4)患者・家族が「安心できる医療」のための枠組み,の4点とした。

 坂本すが氏は日本看護協会の立場から発言した。氏は,特定看護師(仮称)が看護学を基礎に特定の医行為を担いうる幅広いレベルの医学,薬理学等の修得が求められることから,「キーワードは教育」と強調。また,侵襲性の高い行為を安全に行うために法制化は不可欠とし,他職種との業務の重なりについては,縄張り争いするのではなく,患者から託された医療という視点で解決したいと語った。

 井上智子氏(東京医歯大)は教育者の立場で登壇した。氏は,特定看護師(仮称)の動きに伴い専門看護師や検討中の高度実践看護師のあり方も見直すとして試案を提示。また,特定看護師(仮称)による医行為拡大で看護師全般が行える医行為も広がること,「診療の補助」領域の拡大後には,「療養上の世話」の範囲拡大も想定されることを私見として述べた。さらに氏は,特定看護師(仮称)の教育は看護学教員が行うべきと提言した上で,最後に「まずは看護師全体の底上げを図るべきとの声もあるが,天井を打ち破らなければ,底上げもない」とし,看護師自身による看護のさらなる発展を追求する意欲を新たにした。

 質疑応答では会場から「大学院教育の充実」や「医行為の拡大と専門分野への特化とのすり合わせ」等多数の論点が提示され,活発な討論が続いた。

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