第3回日本看護倫理学会開催
2010.07.19
第3回日本看護倫理学会開催
長谷川美栄子氏 |
冒頭で座長の濱口恵子氏(癌研有明病院)は,「患者さんの価値観を大事にするためには,看護師としての自分の価値観が問われる」と指摘。倫理的感受性を個人の力量の問題にするのではなく,教育支援によって育むことが望まれるとして,今大会のテーマ「倫理的な組織文化の創造」に沿って本シンポジウムのねらいを語った。
基礎教育の立場からは長尾式子氏(神戸大大学院)が,倫理的な看護実践をケアの質向上につなげるためには基礎教育から臨床に至るまでの継続的な働きかけが必要であると強調。特に臨地実習は重要であり,学生はもちろんのこと,多忙な看護師が実践を内省する際にも役立っていると報告した。
「困難に出合ったとき,立ち止まり,話し合っていますか?」。大串祐美子氏(東札幌病院)はこう呼びかけ,“皆で考え,倫理的感性を育む”組織づくりを訴えた。氏はさらに,看護師だけで患者の言葉を意味付けし満足するのではなく,患者も含めたチームで共有し,具体的なケアに結び付けることが重要であると強調。臨床倫理検討シートや患者参加型看護計画を用いた自施設の取り組みを紹介した。
専門看護師の役割のひとつに倫理調整があり,個人・家族および集団の権利を守るために倫理的な問題や葛藤の解決を図ることが求められている。急性・重症患者看護専門看護師の北村愛子氏(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)は,患者・家族,医療者との対話によって臨床判断を実践につないだエピソードを紹介。“家族への遺言”や“苦痛からの解放”などの場面における患者・家族の語りに,会場のあちこちですすり泣く声が上がった。
北里大病院は1997年に看護倫理委員会を設置,2003年には「医療現場における看護倫理」研修を開始するなど,先駆的に取り組んできた施設だ。同院の青柳明子氏は看護倫理研修のポイントとして,(1)わかりやすく身近な事例から学ぶ,(2)そのときの気持ちを大切に,(3)学んだ方法が現場で使える,の3点を提示。また,病棟によって倫理的問題への取り組みに温度差が見受けられることから,看護倫理委員会による看護師長のサポートが重要との見方を示した。
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