医学界新聞

2010.07.05

第13回日本臨床救急医学会開催


大橋教良会長
 第13回日本臨床救急医学会が5月31日-6月1日,大橋教良会長(帝京平成大)のもと,「救急の目で医療を考える」をテーマに,幕張メッセ(千葉市)にて開催された。本紙では,パネルディスカッション「救急医療におけるグリーフケア」(座長=兵庫医大・吉永和正氏,神戸赤十字病院・村上典子氏)のもようをお伝えする。

 パネルディスカッションではまず,2003年より外来死亡となった患者家族を対象にグリーフケアを実施している山梨県立中央病院救命救急センターの菊池広子氏が,グリーフケアの意義と重要性について語った。続いて曽我部久美氏(日医大病院)が,救命救急センターにおけるDNAR(心肺蘇生を行わないこと)を選択した患者家族の思いを看護師がどのようにとらえているかを調査。看護師は個別性のある看取りのためのケアの必要性を感じており,遺族が正常な悲嘆のプロセスを歩めるように支えようとしていることが明らかになった。病理学者でもある牧師の保科正和氏(アガペ協立キリスト教会)は,氏が実践するグリーフケアを紹介するとともに,心的負担が大きい救急医療の現場にある医療者に向けて,患者との向き合い方を説いた。黒川雅代子氏(龍谷大)は,心肺停止状態で搬送され,初療室で亡くなった患者家族・遺族のニーズに関する調査結果を報告。早い段階から状況説明を行い,お別れの時間を十分確保するなど,きめ細かな配慮が必要だと述べた。

 座長の村上氏は,自身が担当しているグリーフケア外来について紹介。来院患者の約8割が予期せぬ死別を体験した遺族であることから,遺族が少しでも納得できるように,医療者の丁寧な説明や死因の解明が重要であるとした。最後に登壇した座長の吉永氏は,災害医療の現場で遺族の支援にあたるDMORT(Disaster Mortuary Operational Response Team)について報告。氏らが結成した日本DMORT研究会を紹介し,DMATなど既存組織との連携やチームメンバーの育成に意欲を示した。

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