医学界新聞

2010.01.18

自信を持って子どもの病気に向き合える絵本


コーワン氏
 子どもの急な発熱やけがに対する親の不安が医療機関の“コンビニ受診”を生んでいるといわれる。そのようななか,小児科医を疲弊させないように,親が病気についての基本的な知識を身に付け,医療者と上手に付き合っていくための活動が注目を集めている。小児医療の現状を改善しようと活動を続ける「『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会」もその一つだ。

 昨年11月には,米国の小児科医であり,「ヒッポ先生シリーズ」という絵本の著者でもあるシャーロット・コーワン氏が来日。「『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会」の会員らとの懇親会の機会が設けられた。

 「ヒッポ先生シリーズ」とは,病気の子どもとその親のための絵本で,全5冊からなる。熱,中耳炎,のどの痛み,風邪,吐き気と下痢,という子どもに比較的よく起こりやすい症状を取り上げている。昨年9月には,医療教育活動への貢献に対してオバマ大統領から“社会を改革するリーダー”として表彰を受けたという。

 「ヒッポ先生シリーズ」は,日本では『おねつをだしたピーパー』『かぜをひいたケイティ』の2冊が邦訳され,出版されている。訳者である西村秀一氏(国立病院機構仙台医療センター)は,米国の学会誌の書評欄で『おねつをだしたピーパー』が紹介されているのを見て,本シリーズの重要性を感じ,翻訳刊行を企画したという。

 同書の特長は,子どもが絵本として楽しむだけでなく,「子どもの発熱について(Q&A)」というページを設け,親へのアドバイスを掲載している点にある。「どうすれば,子どもが熱を出していることを見つけられるか」「医師に連絡する必要があるのはどのようなときか」など,親の不安に応えるための項目が並ぶ。米国と日本における治療法,医療制度などの違いについては,日本の実情にあった形に改められている。

 懇談会のなかでコーワン氏は,患者が自分の症状について,医療者に正確に伝えるための知識が必要だと指摘。例えば医療者に対し,「抗菌薬をください」と依頼することと,「この症状には抗菌薬が必要ですか」と質問できることでは大きな差があると述べた。そのためには,なぜこの薬を使うのか,あるいは使わないのかという知識を,医療者が受診の機会に丁寧に説明し,親が処置の仕方を知って自信を持って子どもの病気に向き合える素地をつくることが必要だと強調した。

『おねつをだしたピーパー』
シャーロット・コーワン文
スーザン・バンタ絵
西村秀一訳
定価:2,100円(税込)
サイエンティスト社
TEL.03-3470-9979

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