医学界新聞

2009.11.23

慢性疾患看護の課題と魅力を探る


 平成21年度千葉大学看護学部公開講座が10月17日,千葉大(千葉市中央区)において開催された。高齢社会を迎え,急性期病院に入院する患者の多くが慢性疾患を抱えているものの,在院日数の短縮化などにより,継続的な患者支援が困難になっているという。そのようななか,本講座では“慢性疾患をより身近に考えて看護を継続する必要性を理解すること,看護の面白さや奥深さを感じ取ること”を目的として,「慢性疾患看護の魅力――継続看護と退院支援の観点から」をテーマに3題の講義が行われた。

 講義では,まず谷本真理子氏(老人看護学教育研究分野)が慢性疾患の定義や近年の動向,高齢者を中心とした慢性病者の特徴について解説した。さらに,慢性疾患を持つ患者にとって,入院は一つの局面でしかないため,身体面のみに着目すると患者とのずれが生じると指摘。患者を包括的に理解し,患者が本来持つ自立,統合に向かう力を発揮するための環境・資源の整備が必要だと述べた。

 近藤浩子氏(精神看護学教育研究分野)は,わが国の慢性精神障害者の地域医療が遅れている理由について,受け入れ先の不足だけでなく,1965年以来の隔離収容政策の間に社会の仕組みが変わってしまったことが患者の社会生活を妨げていると指摘。精神障害を持つ人の退院支援を促進するための3つの退院支援プログラムを紹介した。その上で,退院支援においては当事者のこだわりや考えを尊重しながら“どう生きていくか”を支援することが重要だと述べた。

 石橋みゆき氏(訪問看護学教育研究分野)は,急性期病院における退院支援では,退院支援の必要性の見極めが重要だと指摘し,アセスメントを行うポイントとして,入院時,看護計画立案時,状態が変化したとき,退院支援の過程,を挙げた。また,院外関係機関との連携,院内における連携と意思統一なども効果的な退院支援には不可欠だとし,専任担当者の役割の重要性を指摘した。

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