第9回CRCと臨床試験のあり方を考える会議開催
2009.10.05
第9回CRCと臨床試験のあり方を考える会議開催
第9回CRCと臨床試験のあり方を考える会議が9月12-13日,パシフィコ横浜(横浜市)にて米坂知昭会長(桐蔭横浜大)のもと開催された。国際共同治験や臨床研究を効率的に実施するための体制が整備されるなか,これからのCRC(Clinical Research Coordinator:臨床研究コーディネーター)は果たして“何が求められ,何をすべきなのか”,熱い議論が交わされた。
米坂知昭会長 |
まず,「CRF(Case Report Form:症例報告書)の信頼性向上」をテーマに3氏が登壇。長谷川裕美氏(国立がんセンター東病院)は,医療機関と治験データベースをつなぐCRFの設計法について紹介した。CRFはデータを収集し処理するための“ツール”であることから,複数解釈ができるようなフォームは避け,記入しやすいレイアウトを作るといった工夫が信頼性の向上につながるとの見解を示した。
新美三由紀氏(京大)は,治験の品質管理におけるQuality Management(QM)の考え方を提示した。従来,品質管理はQuality Controlを中心に行われ,治験プロセスの向上のみに目が向けられてきたが,それでは施設間で生じるような「系統誤差」の問題を解決できないと指摘。その解決のためには,データの発生源に目を向けるようなQMの発想を持ち,組織や試験全体のマクロな視点を持って質の確保を行っていくことが重要と強調した。
依頼者側(製薬メーカー)の立場からは,山本健一氏(製薬協)が登壇した。治験データの品質を確保するSDV(Source Data Verification:原資料との照合)のより効率的な手法として,データの一部をあらかじめ決まった方法で抽出する「サンプリングSDV」を紹介。サンプリングSDVの導入には不安の声も上がるが,実施の条件として原資料のクオリティが高いことを挙げ,医師・CRC・モニターのそれぞれが治験の品質向上に目を向けることが重要と主張した。
引き続き「IRB(Institutional Review Board:治験審査委員会)事前ヒアリングの活用法」として3氏が登壇した。まず,依頼者側が考える事前ヒアリングについてのアンケート結果を近藤充弘氏(製薬協)が報告。ヒアリング事項の多くの部分は必要ないという依頼者側の見解が示されたが,実施にあたっては依頼者側・医療施設側ともに事前ヒアリングの定義を明確にすることが重要とまとめた。
一方,医療施設側からは井草千鶴氏(町田市民病院)が,事前ヒアリングの有用性としてIRB審査の効率化や治験を順調に進められる点に言及。同院での実例を挙げ,ヒアリングによって治験が実施可能かの判断が可能になり,治験登録症例の逸脱の回避に貢献していると強調した。
また,寺元剛氏(信州大)は同大で行われた事前ヒアリングの手順変更を報告。事前ヒアリング前に,治験プロトコル上のポイントや治験費用についての同大独自の「治験概要事前情報提供書」の提出を求めることで,ヒアリングからIRBまでの時間短縮や院内啓発に効果を発揮していると,「事前ヒアリング」の有効性を訴えた。
会場は多くの立ち見が出る大変盛況なものとなった。聴衆へのアンケートも同時に行われ,医療施設のおよそ9割で事前ヒアリングが実施されているという回答が得られた。医療施設側,依頼者側それぞれに見解の相違はあるが,治験効率化のためにも適切な実施が望まれるところである。
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