医学界新聞

2009.09.21

第13回日本看護管理学会開催


 第13回日本看護管理学会が8月21-22日,勝原裕美子会長(聖隷浜松病院)のもと,アクトシティ浜松(静岡県浜松市)にて開催された。今回のテーマは「可視化」。いかにして看護師の専門性を表現するかということが,看護への信頼性向上や看護の魅力を次世代に伝えていく上での重要なポイントだ。本紙では,時宜を得たテーマのもと白熱した議論が行われた本学会の一部を紹介する。


勝原裕美子会長
 会長講演「看護の価値を,社会の価値に」では,今回のメインテーマを「可視化」と定めた意図が明かされた。氏はまず,現代社会における看護師のイメージは,メディアの影響によって実態とは異なっていると指摘。その上で,社会や次世代の看護師に向けて,看護師一人ひとりが自分たちの仕事の内容や価値を表現できる仕組みをつくることを看護管理の課題として掲げた。

 講演の後半では,看護が患者さんの予後の改善に寄与していることをデータとして示す聖隷浜松病院の試みを紹介。同院では,HbA1c値の改善など患者の容態改善を示すアウトカムを看護指標に定め,それぞれの指標の達成につながる看護介入を明示している。その上で,看護指標とそれをめざした看護介入の関係性を継続的に観察・記録して,医療における看護の意義を示していく方針だ。

保助看法改正で教育も変化

 緊急特別講演「保健師助産師看護師法等の改正――看護管理の視座」では,野村陽子氏(厚労省)より,さる7月15日公布の改正保健師助産師看護師法が看護師教育および新人看護師研修に及ぼす影響等が説明された。改正により,保健師および助産師教育の修業年限は「1年以上」に延長され,看護師の国試受験資格にも「大学卒業」が明記される。さらに,卒後臨床研修も努力義務化された。問題となるのは新人研修開始時の看護師の能力に個人差が見られる点だ。これについて氏は,養成校における看護能力の習得状況等を記録したポートフォリオを看護師ごとにつくり,きめ細かな能力別新人研修を行うという有識者検討会の案を紹介。また,小規模病院や診療所における新人研修の実施およびその水準の保証について,地域のほかの病院や研修施設を活用する方法を提案。職場単位ではなく,近隣の医療施設が共同で地域の新人看護師を育成する考え方への看護管理者の理解を求めた。

看護の可視化めぐり討論

 市民公開徹底討論「看護はどう見える どう見せる」(座長=神戸市看護大・林千冬氏,さいたま市立病院・渡邊千登世氏)では,患者代表と看護師代表がそれぞれ5人登壇。看護をとりまくメディアや医師,専門家が,患者が持っている看護師のイメージを語る一方,看護師らから本当の看護師の姿を伝えていくための方策が語られた。患者側からは,「看護師さんは思いやりを持って患者をいたわってくれる人」というイメージにとどまってしまっていると指摘が出た。これに対し,看護師側からは「看護の臨床成果はたくさん上がっているが,診療報酬の問題などから臨床に結び付けられていない」として,看護のこれまでの蓄積を臨床につなげ,患者の人生に貢献することで看護師の職務を認知してもらうことをめざす考えなどが出された。また,新型インフルエンザへの対策に戸惑う市民への予防法の発信など,情報発信していくことが看護師の存在感の認知につながるとの指摘もあった。

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