医学界新聞

2009.07.13

開閉創にも整容のこだわりを

第2回日本整容脳神経外科研究会開催


佐伯直勝会長
 第2回日本整容脳神経外科研究会が,佐伯直勝会長(千葉大)のもと,6月6日,東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区)にて開催された。本研究会は昨年,脳神経外科手術時に整容により配慮した切開,縫合や術後管理を行い,患者の満足度を向上させたいという趣旨で発足。第2回である今回,全国から脳神経外科医・形成外科医が集まり討論が行われた。

 シンポジウム「開閉頭時の整容的工夫」(座長=阪市大・大畑建治氏,東北大・冨永悌二氏)では,創痕を残さず,整容に気を配った切開・縫合を行うための工夫が多数示された。

 早坂典洋氏(千葉大)は,自家骨や人工骨での頭蓋形成の際,頭皮が拘縮してうまく閉創できない場合などに有用な局所皮弁術の1つであるScorningについて解説。これは帽状腱膜に筋状か格子状に切りこみを入れることで頭皮を伸展して縫合を容易にする方法で,切開1つあたり,約2mmの伸展が可能とのこと。脳神経外科医単独でも簡単にできるテクニックなので,ぜひ活用してほしいと推奨した。

 閉頭に使用するチタンプレートの固定はセルフタップスクリューが主流だが,スクリューやプレート自体が浮いてしまう例が見受けられた。そこで名取良弘氏(飯塚病院)は,下穴を作製し溝を刻む一手間をかけることで,スクリュー,プレートともに浮き上がりが少なく,骨表面との距離を設計値に近づけられたことを報告した。下穴はプレートに付属の器具により数秒で作製できるので,術後のより整容的な仕上がりのために取り入れるべきだと語った。

 太組一朗氏(日医大武蔵小杉病院)は,頭蓋形成手術後に起こったトラブルと,その解決の方式を示した。術後8年の経過で前頭部に自家骨とレジンで凹凸ができ,一部骨の露出もみられた症例を,自家骨を支持組織としてリン酸カルシウム骨ペーストで再形成した経験などを報告。治療によって患者がうつ様状態から回復したことから,“見た目”を整える重要性や,10年後の整容を考えた手術の必要性などを訴えた。上顔面の整容は脳神経外科の責任領域でもあることから,形成外科とも協力しつつ,整容に関する患者の精神的苦痛も解決していきたいと述べた。

 続いて形成外科から二氏が登壇。佐藤兼重氏(千葉大)は,頭皮冠状切開における切開線の工夫を語った。切開の原則は切開線が目立たないよう,毛流に垂直に切り,かつ毛根を傷つけないことだという。耳の上の切開線はしわ取り術を参考に生え際に沿って設けること,ただし,前額部は生え際の切開は容易だが,前頭禿髪の原因となるため禁忌であり,数cmは後ろを切開することなど,具体的な方法を示した。

 菅原康志氏(自治医大)は,傷の整容的な治療は,生体の本来持つ治癒能力を最大限発揮させることと同義という観点から,主に開頭時の傷の治癒能力に重点を置いて発表した。頭皮の場合は髪の生え方を考慮し斜めに切開し帽状腱膜を縫い合わせるが,タイトに縫いすぎ血流を阻害しないよう注意すること。また,皮弁は血流不全を起こしやすいため,皮弁内に栄養血管を含むよう作製するか,もしくは茎部を広くとることが重要だという。骨切りにおいては,遊離骨の再移植時に生きた骨上に切開線が乗るよう大きめに皮弁をとり,術後の治癒能力を高める方法を紹介した。

 通常の外科手術では,とかく皮膚切開を最小限にすることが低侵襲であり,優れた方法とされがちだが,整容を考えると必ずしもそれがベストではなく,なるべく術創を残さないよう配慮し,時には切開を大きくとることも必要だという形成外科からの提言に対し,会場では活発な意見交換がなされていた。

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