医学界新聞

2009.03.30

第24回日本環境感染学会開催


辻明良会長

 第24回日本環境感染学会が2月27-28日,辻明良会長(東邦大)のもと,横浜市のパシフィコ横浜にて開催された。近年異常気象や温暖化など,地球規模での環境の変化が注目されるなか,環境問題への一般市民の関心も高まりを見せている。本学会では「地球環境の変化と環境感染」をテーマとし,海外にも目を向けた多彩なプログラムが組まれた。

 地球規模での感染症対策の強化が叫ばれる一方で,インフェクションコントロールドクター(ICD),感染症看護専門看護師,感染管理認定看護師の認定制度の発足などにより,医療機関における施設内感染の制御も進んできた。しかしながら,確実な制御はできておらず,現在も喫緊の課題となっている。シンポジウム「菌種別にみた耐性菌対策」(司会=国立感染研・荒川宜親氏,国立国際医療センター研究所・切替照雄氏)では,多剤耐性緑膿菌(MDRP),バンコマイシン耐性腸球菌(VRE),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など,医療現場を悩ます耐性菌を取り上げ,日常的な対策とアウトブレーク時の対応について,活発な議論が交わされた。

 MDRPは,国内で認可/承認されているほぼすべての抗菌薬に耐性を示す傾向があるとされる。満田年宏氏(横浜市大病院)は,わが国におけるMDRPのリスク因子として尿路留置カテーテルを挙げ,体内挿入器具の早期離脱や医療機器・器具の衛生管理の徹底を呼びかけた。また,アウトブレークが起きた際には,当面の対策だけではなく,実地疫学調査を実施し,実際に行った対策への評価を行うなど,将来的な再発防止策を提言することも重要だと述べた。

 佐賀大病院では,ICD2名,感染対策専任看護師長1名,微生物検査技師3名からなる感染制御部が,感染症診療コンサルテーションを介して早期からの症例認識,動向の把握に努めているという。同院の福岡麻美氏は,感染関連の情報を感染制御部に集中・一元化することで,過去の感染率の推移などもわかり,事前介入による未然防止が可能になったと成果を述べた。また,奥直子氏(北大病院)は,北大病院における耐性菌別の現場への介入のタイミングの基準を紹介。さらに,感染の要因分析で明らかになった,院内における意外な感染の伝播経路を提示し,職員への定期的な教育の必要性を説いた。

 本シンポジウムでは,院内で感染者が1例見つかった場合には,すでに他にも保菌者がいると仮定し,厳しいスクリーニングを実施すべきという考え方が繰り返し強調された。中でも飯沼由嗣氏(京大病院)は,京都におけるVRE感染対策指針を紹介し,患者の転入院が頻繁に繰り返される現在,地域医療圏のなかでの他施設との情報共有が重要であると訴えた。

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