医学界新聞

2008.10.13

第56回日本心臓病学会開催


 第56回日本心臓病学会が9月8-10日の3日間,髙本眞一会長(東大;写真)のもと,東京国際フォーラム(東京都)にて開催された。

 会長講演では,狭心症,急性心筋梗塞などに対する経皮的冠動脈形成術(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の治療効果の違いを解説。PCIは優れた低侵襲性の一方,複数回の施術が必要な場合があり,医療費の面で患者の大きな負担になるとして,さまざまな因子を視野に入れて適切な治療法を選択していくことの必要性を示した。

 さらに,心臓外科手術の実施施設の集約化について言及。CABGなどでは,術者の年間症例数や技術のほかに,内科,放射線科,コメディカルなど多くの他分野における専門家による協力の有無が,手術の成績に大きく影響しているというデータを示した。氏によると,年間症例数の少ない若手医師でも協力体制の整った大規模施設で執刀した場合には成績の安定化,向上がみられるという。その上で,良好な成績で安定した手術を実施するために手術施設の集約化が必要であるとした。さらに,技術発達の目覚ましい循環器医療においては,大規模データベースに基づいた迅速な治療効果分析が必要であるとして,現在進められている日本心臓血管外科手術データベース(JACVSD)によるCABGのデータ集約・分析の近況を紹介。将来的には,循環器内科・心臓外科共同のデータベースを構築していく方針だ。

 シンポジウム「医療安全管理体制の現状と将来」(座長=虎の門病院・山口徹氏,東大・髙本眞一氏)では,佐原康之氏(厚労省医療安全推進室),永井裕之氏(医療の良心を守る市民の会),前村聡氏(日本経済新聞社),鈴木寛氏(参議院議員),古川俊治氏(参議院議員)が,医療安全について議論した。現在,医師法21条の改正と医療関連死の第三者機関への届出制の創設などの是非が議論されており,本シンポジウムではそれを支持する方向性が確認された。

 一方,「治療法の選択肢をすべて示し,その危険性・成功率などを説明した上での避けられぬ障害・死ならば,患者・遺族は責任追及しない」などの声が挙がり,患者に対する情報提供の姿勢といった制度外の課題の存在も指摘された。

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