医学界新聞

2008.09.22

第18回日本看護学教育学会開催


 第18回日本看護学教育学会が8月2-3日の2日間,川口孝泰会長(筑波大大学院)のもと,つくば国際会議場(茨城県つくば市)で開催された。「看護学教育の基礎となるキー・コンピテンシー」をメインテーマに,それはどのような能力なのか,またどうすれば芽生え,育てていけるのかについて,白熱した議論が展開された。


 シンポジウム「看護学教育の基礎となるキー・コンピテンシー」(座長=大阪府立大・青山ヒフミ氏,川崎市立看護短大・吉村恵美子氏)では,4名の指導者が看護師らに必要な能力を分析し,育成法について議論した。

 最初に登壇した朴在鎬氏(韓国・嶺南大)は,海外における看護師に必要なコンピテンシーの探り方や教育法,評価法について発表。さらに,チームにおけるリーダーシップやその開発法として,R. F Bales氏(ハーバード大)らが開発したSYMLOG診断(自己評価を行い,その後で自分に対する他者の評価と比べることで,自己をより正確に把握する評価方法)とコーチングによるコンピテンシーの育成法を紹介。それは,(1)看護学生を診断する目的(チームの性格の診断と,個人のリーダーシップ能力の測定)の確認,(2)学生に対する診断結果のフィードバック,(3)個人評価結果の報告,(4)SYMLOGリーダーシップ研修の実施,(5)SYMLOG診断の再実施(学生の行動変化の測定),(6)(2)-(5)の繰り返し,からなるとした。

 金城祥教氏(名桜大)は,臨床現場の指導者からの新人看護師に対する「対人関係が苦手でチーム行動ができない」などの声に注目し,対話・参画する力(コミットメント能力)の育成を目指している。その上で,カードメソッドと呼ばれる参画型看護教育教材を採用。グループで定めた「看護とは」「教育とは」などのテーマに対する答えを1人ひとりがカードやポストイットなどに書き,グループ内で発表し,意見をまとめる作業を行うというのがその内容だ。これにより,自分の意見を話す機会が増え,コミットメント能力が養われてきているという。

自ら考え,行動することが鍵か

 一方,現場で勤務する看護師が自身に欠けていると感じる能力を調べ,それを大学・現場での教育に活かしていこうという取り組みも行われている。立石和子氏(久留米大)は,知識・技術・能力に分類される37項目のコンピテンシーが「自分にどれだけ身に付いているか(獲得能力)」「身に付けたいと思っているのか(職務上必要能力)」を,勤務歴1-3年の大卒看護師を対象に調査。その結果,リーダーシップ能力,問題解決能力,予測能力などが大学で養成すべき能力であるとした。今後は,評価方法に第三者からの評価を加えること,必要とされる能力を育てていくための教育システムの構築などに取り組んでいく方針だ。

 新人保健師の中には,日常生活において必要なケア能力や専門職として成長するための能力の不足から,免許を取得しても保健師としてのキャリア発達に結びつかないことがみられる。そのような考えのもと,芝山江美子氏(高崎健康福祉大)は,同大の地域看護学実習後に,実習生にインタビューを実施し,学生がどのような能力に重要性を感じていたかを調査した。同調査の結果から,氏は,地域社会の個別的保健ニーズに対する問題解決の力,課題達成の力,そしてニーズに合わせて変革していく力を身に付けるべく,学生1人ひとりが自ら考え,意思決定していく姿勢が必要であると結論した。

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