医学界新聞

2008.09.01



再度慎重に議論する場が必要か
「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」開催


 「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」(総合司会=高久史麿氏・日本医学会,司会=門田守人氏/山口徹氏・同臨床部会運営委員会)が7月28日,日本医師会館(東京都文京区)にて開催された。本制度については各学会より意見が出されているが,学会の垣根を越えた議論は今回が初めて。

 永井良三氏(日本内科学会)は,医療事故調査委員会の役割として,“原因究明と再発予防”“医療の透明性の確保”などを挙げた。また先日,厚労省より出された「大綱案」について,厚労省,法務省,警察庁間の合意の明確化や,警察への届け出の範囲などの課題について,継続して議論すべきと述べた。

 髙本眞一氏(日本外科学会)は,医療者自身が透明性,公正性を確保しながら調査し,再発防止に努めることが重要だと主張。また,9地域で行われている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の成果を紹介し,今後は自律的組織の創設実現のために,医療者が団結すべきと強調した。

 堤晴彦氏(日本救急医学会)は,医療の安全性の向上のために公正性・透明性が確保された仕組みは必要だとしながらも,医療者にとって理解できない刑事訴追・書類送検が存在することを指摘。法曹界と医療界が同じ土俵で議論すべきだと主張した。

 並木昭義氏(日本麻酔科学会)は,「原因究明と再発防止のために中立的な第三者機関を設ける」という趣旨については賛同の意を表明したが,WHOの医療安全に関するガイドラインとの違いなどの問題点を指摘し,不明瞭な部分を残したまま運用が始まれば,萎縮医療につながるとの危惧を示した。

 木下勝之氏(日本医師会)は,近年の警察への医療事故届出件数と立件送致件数の増加を指摘。日常診療行為における死亡事故に業務上過失致死罪が適用されるなどの刑事訴追をなくすために,医師法21条を改正し,医療者を中心とした,中立的な医療安全調査委員会の設立の必要性を訴えた。

 西澤寛俊氏(全日本病院協会)は,「大綱案」において,“説明責任と被害者補償”と“再発防止”が混在していることを指摘。結果的に両方とも達成できないのではないかとの危惧を示し,先進国に学びながら,医療者が主体となって議論をやり直すべきだと主張した。

 休憩をはさんで行われた総合討論では,日本産科婦人科学会,日本脳神経外科学会など6学会から意見が出された。会場からも,「現場で踏みとどまって勤務している医師に,負の遺産を残さないでほしい」「日々氷の上を歩くような気持ちで診療している。早く成立させてほしい」など,賛否両論の意見が噴出したかたちで議論を終えた。

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