医学界新聞

2008.05.19



第60回日本産科婦人科学会開催


 1949年に日本婦人科学会と日本産科学会が合同で発足した日本産科婦人科学会。この記念すべき第60回学術集会が,4月12-15日,パシフィコ横浜で開催された(集会長=東北大・岡村州博氏)。生殖,周産期,婦人科腫瘍の領域を支える同学会は,産婦人科診療崩壊の危機が指摘されるなか,厳しい局面を迎えている。分娩を取り扱う現場から次々と医師が去り,そして20代の産婦人科医局員の7割を女性が占める現在,産婦人科診療体制を再構築するために求められるビジョンとはどのようなものだろうか。本紙では白熱した議論が展開されたシンポジウム「産婦人科医不足の解消を目指して」(座長=北大・水上尚典氏,山形大・倉智博久氏)のもようを報告する。

医師不足の解消に向けて

 このシンポジウムには,卒前・卒後教育を担う大学病院,そして地域の産婦人科診療を支えながら臨床研修病院として初期研修医教育を行う市中病院からシンポジストが招かれ,それぞれの立場から論考を行った。

 まず基調講演として海野信也氏(北里大)がわが国の産婦人科医師不足の原因を分析。新規の産婦人科入局医の総数が減少する一方で女性医師が占める割合は上昇していることを背景に,「病院から診療所へ」「分娩取り扱いから分娩非取り扱いへ」「常勤から非常勤・パートタイムへ」と働き方が変化している現状を憂慮。毎年200人単位で純減している産婦人科医の総数をこれ以上減らさないため,いま現場にいる医師が仕事を続けられる環境整備の必要性を強調した。

 続いて女性医師の立場から関典子氏(岡山大)が「家族を持つ女性医師だけが優遇される勤務システムは立ち行かない」と指摘。男性医師,独身医師にも働きやすい環境整備を求めた。

 福利厚生の整備に対する積極的な取り組みで知られる大阪厚生年金病院産婦人科の小川晴幾氏は,他科志望であった3名の初期研修医の取り込みに成功したことに触れ,「初期研修医は働く雰囲気を敏感に観察している。女性医師が生き生きと診療する姿を見せられたことが,職場への好印象につながったのではないか」と述べた。関連して松林秀彦氏(東海大)は「若い世代は経験(教育)した分野に対する興味が高まりやすい」と指摘。卒前教育において,産婦人科に関心を持ってもらえる授業内容を段階的,戦略的に構成することが肝心であると述べた。

 この後,フロアからは「初期研修医が産婦人科に回ってくるのは2年目で,その時点では既に専門とする診療科を他科に決めていることが多い」「同意が得られず分娩見学が厳しくなっている男子学生をどう産婦人科に誘導すればよいのか」など,現実に直面している緊急の課題に関する発言が相次いだ。医師不足やその偏在は産婦人科だけが抱える問題ではない。国を挙げて,教育-臨床施設間,地域の病院-行政間などの連携体制を構築し,きめこまやかな対策を講じる必要がある。

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