医学界新聞


医師として働き続けていくために

2008.02.11



女性のためのキャリアデザインセミナー開催
――医師として働き続けていくために


 「仕事も,結婚も」と考えても,明確なキャリアパスを描けずにいる女性は少なくない。出産や夫の留学などを機に,医師としてのキャリアを中断,そのまま医療現場に復帰しない女性医師も多く,本人にとっても,社会的な意味においても損失は大きい。

 このようななか,2007年12月9日,「医学を志す女性のためのキャリアデザインセミナー」が女性と仕事の未来館(東京都港区)において開催された。女性医師にライフプランを考えてもらう機会を提供しようと,日本女医会が主催。医師をめざす中学生から医学生,現役の女性医師まで約100名の参加者が,医師そして家庭人として,キャリアを両立させてきた先輩女性医師らの話に熱心に耳を傾けた。

 先輩たちはどのようにキャリアを築いてきたのだろうか。対馬ルリ子氏(ウィミンズウェルネス銀座クリニック)は,東大産婦人科医局員から都立病院の周産期センター医長を経て,女性の予防医療を志して開業に至るまでの自身のライフマップを振り返り,「夢は必ずかなう。女性の人生の始まりは40代からと思って,医師をめざした初志を貫いてほしい」と参加者にエールを送った。また50代から熱帯医学を志し,その後,女性初の検疫所長となった岩崎惠美子氏(仙台市副市長)は「臨床と子育てを経験した女性医師は,住民ニーズを捉えた公衆衛生を実践する行政職に適任であり,復職の際,選択肢に加えてほしい」と述べた。

 この日は,働きやすい職場環境や制度の整備についても提言が行われた。

 大谷智子氏(東女医大東医療センター小児科)は医局長の立場から「主治医制からグループ診療制へ」「出産育児期の医師は感染症患者が少ない慢性期病棟を担当する」など,ママさん医師が働きやすい職場をつくるための具体策を提言。加えて,子どもの急病などに伴う突然の勤務変更に,勤務を調整する医局長らの時間がとられている現状から,常勤-パート医師間の勤務調整を行う専任コーディネータ職の配置を提案した。

 子育てのため現場を離れた医師の復職に向けた再教育が課題となるなか,慶大の福島裕之氏は小児科医局が創設した「コーディネータ医師」制度を紹介。育児中の女性医師がフレックス勤務で,主治医と連携しながら,周産期や小児慢性疾患の患者・家族に対しこころのケアなどを行うというもの。臨床的な効果も生まれており,臨床現場を有効に活用したフルタイム復職に向けた再教育の試みといえるだろう。

 セミナーは司会の荒木葉子氏(荒木労働衛生コンサルタント事務所)が「法や制度は眠らせず,よい意味で“わがままに”活用し,医師としてのキャリアを続けてほしい」と参加者に呼びかけ,終演した。このセミナーは,今夏,再び開催予定。詳細が決定次第,日本女医会のウェブサイトに公開される。

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