医学界新聞

連載

2007.06.11

 

臨床研修の歩き方
Think Globally, Act Locally

〔連載 第7回〕
近畿編

結城暢一
全国7か所の厚労省地方厚生局で働く臨床研修審査専門官が,全国各地の臨床研修の様子を交代でレポートします。


前回2731号

 医学生の皆さんにとって,研修病院選びは臨床医としての基礎能力レベルに大きな影響を与える問題であり,また将来の方向性を考えるうえできわめて重要な就職活動です。近畿における臨床研修病院の需給関係は,募集定員3980名に対し在籍研修医2868名(2006年4月現在)と,圧倒的に医学生側の売り手市場であり,今後研修病院の自然淘汰が予想されます。

健闘目立つ中小規模の病院

 このような状況下で健闘が目立つのは,旧制度下では研修医を受け入れていなかったような中小規模の病院です。近畿管内における病床規模別にみた研修病院数と定員充足率(在籍数/募集定員)は次のとおりです。

200床未満12施設=53%(33/62)
200-300床未満32施設=68%(124/180)
300-400床未満64施設=69%(436/626)
400-500床未満34施設=89%(347/388)
500床以上49施設=70%(1928/2724)

 中小規模研修病院の定員充足率は大病院と比して大きな遜色はなく,病院規模は研修医の志向性に大きな影響を与えていないことが示されております。近畿厚生局では現在管内の在籍研修医に対してヒアリングを進めておりますが,中小規模病院研修に対する満足度は高く,在籍研修医に対する全国アンケート調査(2005年度「臨床研修に関する調査」)の結果が実際に裏付けされております。

今後の課題は研修の質的評価

 このような動向の背景には,「豊富な一次救急症例とcommon disease症例を提供できる病院が魅力的な初期臨床研修病院である」とする研修医の声が挙げられます。マッチング制度が始まり,さまざまな志向性を持った医学部卒業生の方々が自分自身のキャリアデザインにあう病院を自由意志で選択できる時代になりました。新制度のインパクトについては今後時間をかけてさまざまな角度から評価されるべき問題ですが,プライマリケア,全人的医療修得を基本理念とする制度改革が機能していることが感じられます。

 臨床研修病院は現在までにほぼ出揃い,今後はその質的評価を受ける時期に入ります。残念ながら,中には指導体制を含めた研修内容に問題を有する病院が存在することも事実です。近畿では各病院の研修制度運用の適正化を図るため,実地調査と指導を行い,研修環境のより一層の整備に努めております。また医学生を対象とした管内の研修病院説明会を,制度やマッチングに関する説明会も兼ねて定期開催しております。病院スタッフによる生の情報提供もありますので,ぜひ研修病院選びにご利用ください。

つづく


結城暢一
1984年阪大医学部卒。阪大病院,国立病院大阪医療センター勤務を経て,2006年4月より近畿厚生局臨床研修審査専門官(併任)。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook