第47回日本呼吸器学会の話題から
リスクの評価と伝達を
2007.06.04
リスクの評価と伝達を
第47回日本呼吸器学会の話題から
第47回日本呼吸器学会が5月10-12日の3日間,貫和敏博会長(東北大加齢研)のもと,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。本紙では,シンポジウム「呼吸器領域におけるリスク・アセスメントとリスク・コミュニケーション」(座長=日医大・工藤翔二氏,東女医大・永井厚志氏)のもようを報告する。
最初に座長の工藤氏が,シンポジウムの企画趣旨を説明した。冲中重雄氏はかつて東大の最終講義の中で,臨床診断と剖検診断を比較した結果,在任中の非正診率(誤診率)は14.2%であったと報告し,社会に大きな反響を与えた。一方,川喜田愛郎氏は著書『医学への招待』の中で,「いつも『欠陥商品』を売らねばならぬ医学の宿命」を説いた。工藤氏はこうした先人たちの言葉を紹介したうえで,「この“宿命”を患者と社会はどのように受け止めるべきなのであろうか」と問題提起。医療側が医療の進歩や安全性の確保に最善をつくすと同時に,リスクの評価と伝達を通して,社会の理解と協力を得る努力が不可欠との見解を述べた。
続いて,大前和幸氏(慶大)が大気環境基準と三宅島帰島,斉藤玲子氏(新潟大)がインフルエンザワクチン,弦間昭彦氏(日医大)が抗癌剤に関して,それぞれのリスク・アセスメントの現状と考え方を概説した。
さらに,インフォームド・コンセントに関しては前田正一氏(東大)が,説明同意文書の重要性を強調。各医療機関の負担を軽減するためにも,「学会等が雛形を作成してはどうか」と提案した。行政の立場からは佐原康之氏(厚労省)が医療安全対策の現状を紹介したうえで,今後の課題として,診療関連死の死因究明制度や,産科医療補償制度の創設を今後の課題にあげた。メディアの立場からは南砂氏(読売新聞)が,医療者と患者の解離による「医療崩壊」の現状に懸念を示した。社会の「安全・安心」要求は高まっているが,医療にはリスクがつきまとう。適切なリスク評価と,対話による伝達が,ますます重要となってきそうだ。
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