医学界新聞

2007.05.28

 

「今の私の人生は野球で言うと9回。
ここから,私のいちばん大切な時が始まる」

日野原重明氏 ユニセフ協会大使に


 (財)日本ユニセフ協会は4月9日,日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)を同協会大使に任命。東京都品川区のユニセフハウスにて就任記者発表会を行った。ユニセフ協会大使は1998年に就任した歌手のアグネス・チャン氏に続いて2人目。

 はじめに,東郷良尚氏(同協会副会長)が「日野原先生がライフ・プランニング・センターの活動を通して行っている,ボランティアや,子どもたちに命の大切さを伝えるといったことは,ユニセフの基本的な考えに共通する。先生の今後のご活躍はユニセフにとっても世界の子どもたちにとっても大変貴重な財産になる」と挨拶。続いて,同協会専務理事の早水研氏が任命の経緯について「医師としての活動の範囲を超えて,子どもたちに命の大切さ,平和の尊さを非常に精力的に伝えている。このことが強い支持を得て,関係者の中でもぜひ大使に,という声が高まった」と述べた。

 そのあと日野原氏に任命証を授与。東郷氏が,「ユニセフは『子ども最優先』を基本理念に,『子どもの権利条約』の実現に向け,世界各地で活動しています。貴殿はこのユニセフの理念を実現するアドボケートとして適任者と認められますので,ここに日本ユニセフ協会大使に任命いたします」と任命証を読み上げ,日野原氏に手渡した。

 任命式の後,アグネス・チャン氏が挨拶。まず「ここで告白しますが,私は先生が大好きです。これから同じ立場で仕事ができるということは,私にとって片想いが実ったようなもの。とても嬉しい」と述べて会場を沸かせた。続いて,9年前自らの任命式で東郷氏が述べた「子どもたちがかわいそうだから助けてあげるのではない。今守られていない,子どもたちが生まれながらに等しく持っている権利を取り戻す責任が私たちにはある」という言葉を紹介。「日野原先生は計り知れないほど豊富な体験と知識を持っている。でも,先生から一番学ばなければならないものは,あふれんばかりの愛情。自分も学んでいきたい」と締めくくった。

 最後に日野原氏より就任挨拶が行われた。大使任命への謝辞を述べたあと,医師になった70年前を振り返り,「最初に看取ったのは16歳の結核患者で,彼女は化学療法のない時代に,治療を受けることなく亡くなった。自分もその後結核を患ったが,そのことで,病気を持つ人の気持ちを体験し,医師として成長できた」と述べた。

 日野原氏は,2000年に「新老人の会」を設立。「新老人が子どものよきモデルとなるためにも,子どもに命とは何かを教えることが必要。しかし教えるだけでなく,その命が失われないようにするためにはどうするかを考えなくてはならない」と述べ,新老人運動の究極的なゴールを子どもたちに向けるとした。氏は「今,私は95歳と6か月で,野球で言えば9回。しかし9回から私のいちばん大切な人生が始まる。子どものためにも,もっともっと長生きしないと」と力強く述べて降壇した。

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