医学界新聞

 

OSCEなんてこわくない

-医学生・研修医のための診察教室
 監修:松岡 健〔東京医科大学(霞ヶ浦病院)第5内科教授〕


第13回 手洗い・ガウンテクニック

渡邊 克益(東京医科大学教授・形成外科学)


2490号よりつづく

《手技のポイント》
 手指は手洗い用消毒剤で洗浄する。手洗い操作は皮膚表面の細菌には効果的だが,皮膚付属器内の常在菌は残存するので,清潔操作には滅菌手袋の着用が必要となる。滅菌ガウンも併用する場合は,ガウンを着用してから手袋をはめる。
 手袋やガウンは,着用後に外側になる部分に直接手や体を触れないよう,手順にしたがって着用する。

■手順

(1)準備
*あらかじめ爪を切っておく。
*マスク・帽子を着用する。
*時計は外しておく。

(2)手洗い

*滅菌水で素洗い。
*消毒洗浄剤の擦り込み。
*以下の順で泡立てる。
 (1)手掌⇒(2)手の甲⇒(3)爪の周り⇒(4)指の間⇒(5)親指の背側⇒(6)手首,前腕,肘
*滅菌水で洗い流す。
*拭き取り。

(3)ガウン着用

*介助者と連携して着用する。
*滅菌ガウンの外側部分には,手や身体が触れてはいけない。

(4)手袋装用

*手袋の外側には素手で触れないようにして装用する。

■解説

(1)手洗いを始める前の準備

・あらかじめ爪を短く切っておく。
・マスク・帽子が必要なら装用する。
・帽子は髪の毛がはみ出ないこと。マスクは顔にフィットさせる。針金入りのマスクは鼻の形に合わせて,フィットさせてから上ひもを後頭部で結ぶ。
・帽子を被ってから,マスクをつける。
・マスク下端は下顎まで覆い,後頚部で下ひもを結ぶ(下ひもを頭部で結ぶと頬部にすき間ができるので避ける)。
・白衣の袖は半袖とするか,捲り上げる。ガウン着用予定ならガウン型白衣は脱ぐ。
・手洗い前に腕時計を外すのを忘れずに。

(2)手洗い

・肘上10cmまで流水で洗う。
・掌に5mlの手洗い用消毒液をとり,指先から肘上5cmまでまんべんなく擦り込む。
・少量の滅菌水を加えて消毒液を擦りながら次の手順で泡立てる。
(1)手掌:手掌を合わせて擦る(写真1)。
(2)手の甲:手の甲に延ばすように擦る(写真2)。
(3)爪の周り:指先と爪部分を反対側の手掌に擦りつけて各方向から洗う(写真3)。
(4)指の間:指を組み合わせるような形で擦って洗う(写真4)。
(5)親指の背側:洗い残されるので,反対の手で捻り洗いを行なう(写真5)。
(6)手首,前腕,肘:手首,前腕から肘までを丁寧に摩擦する(特に洗いにくい前腕尺側を意識して擦らないといけない,写真6)。
・滅菌水の使用:指先から肘までを滅菌水で洗い流す(上腕部の消毒薬まで流すと,未消毒部分にかかった水が手に逆流して不潔になる)。
・必要に応じて,上記(1)~(6)を繰り返す。さらに清潔度を要求される場合は,ブラシを用いた洗浄を追加する。
・肘が体に触れないように前方に保持し,ふき取りタオルで肘まで拭く。


写真1 手掌を合わせて擦る
  
写真2 手の甲:手の甲に延ばすように擦る
 

写真3 爪の周り:指先と爪部分を反対側の手掌に擦りつけて各方向から洗う
  
写真4 指の間:指を組み合わせるような形で擦って洗う
 

写真5 親指の背側:洗い残されるので,反対の手で捻り洗いを行なう
  
写真6 手首,前腕,肘:手首,前腕から肘までを丁寧に摩擦する(特に洗いにくい前腕尺側を意識して擦らないといけない)

◆OSCEでは

 手に蛍光クリームを塗っておいて,手洗い後の蛍光の有無を紫外線をあててチェックする「手洗い試験」が実施されることがあります。消毒剤で泡立てる際には,爪と指先,指間,母指の背側,前腕尺側を特に注意して洗います。

(3)ガウン着用

 ガウン着用はゆっくり行ない,紐の受渡しに際しては介助しやすい位置で動作を止めて待つ。
(1)畳んだガウンを体から離して保持し,前面に触れないように注意して広げる。
(2)右手で右肩ひもを持ち上げ,介助者が下外方からひもを受けとり保持する。
(3)右手を右袖に通す。
(4)右手で左肩ひもを持ち上げ,介助者が下外方から受けとり保持する。
(5)左手を左袖に通す。
(6)マスク付きガウンの場合はマスクのひもの端を持ってマスク位置を調整し,そのまま介助者に結んでもらう。

(4)手袋の着用(オープンメソッド)

 手指で清潔な手袋表面に触れないようにする。
(1)手指は手袋の内側のみに触れる。逆に,手袋をはめた指は手袋の内側には触れてはいけない。
(2)はめている途中では,手袋先端まできちんと指を入れなくてかまわない。
(3)折り返しを持って手袋の包装を開く。
(4)右手で左手袋の外側に触れないように把持して左手を挿入する(手袋の折り返し部分はそのままにする,写真7)。
(5)途中まで手袋をはめた左手指を右手袋の折り返し部分に差し込んで持つ。
(6)右手指をすぼめて右手袋に入れる。
(7)手背部で手袋がまくれ込まないように注意しながら,両手を協調させつつ徐々に手首まで引き上げる((5)(6)(7)の手の動き→写真89)。
(8)手袋をはめた右手で左手袋の折り返し部分で持ち同様に手首まで引き上げる。
(9)指先まで手袋をフィットさせて着用終了。
 (7)の操作の際,不用意に引き上げると背側の端が捲くれ込んでしまう(写真10)。


写真7
  
写真8
 

写真9
  
写真10

●OSCE-落とし穴はここだ

 手袋の装用では,手袋の外側と内側を意識して扱います。手背部に手袋をかぶせる時には,手袋の端がまくれ込みやすいので,両手を協調させながら注意深く引き上げます。



●本連載について

 本連載は,2000年1月-2001年1月の間に掲載された連載「OSCEなんてこわくない」の続編です。しばらく休載しておりましたが,読者の皆様からのご要望により,本年5月の医学生・研修版(2487号)より再開いたしました。今後ともご愛読くださいますようお願い申し上げます。なお,過去の掲載記事は弊社ホームページ内のバックナンバーからご覧になれます。
(連載「第1回:OSCEなんてなぜこわくない?」

「週刊医学界新聞」編集室