『今日の治療指針』は1959(昭和34)年6月20日に創刊されました。『今日の治療指針』の歴史や創刊当時の医療を振り返ります。
『今日の治療指針』第1巻の序文には刊行の精神が述べられています。 この刊行の精神はまさに「プライマリ・ケア」そのものであり,日野原重明先生をはじめ創刊に携わられた先生方の先見性の現れといえます。 当時のわが国において指針としうる治療書は本書のみで,創刊翌年には早くも1万部の発行を達成しています。
診療の第一線にある我々が,診察室で,いつも困却するのは専門外の疾患に対して適切な治療方針を要請されることです。 殊に,内科学の分野では,新しい薬物や治療法が次から次へと現われ,どのものをどの病のどの時期に用いてよいか戸惑うことがあります。
最近のように,各研究の領域が細かく分派して来ると,一般医家が適切な加療を行うことが,益々困難になって来ますので, ついつい従来の姑息的な治療法に依存することになります。これでは患者にとっても,診療医自身にとっても少しも進歩発展がなく, 学会での貴重な研究とその成果である治療法が分離し,しかも知らず知らずの中に大切な治療法が等閑視されてしまいます。
そこで,編者らは,このような弊害を少しでも除きたいと思い,全国の権威ある諸専門家にお願いして,平常,患者に対して行っている最も 信頼できる治療法を記述して頂きました。これこそ,現在のわが国の治療学の集大成とみて差支えないもので, 臨床医家各位が座右に具えて開巻直ちに役立つ治療法であるものと自負しております。
このような書物は多年,多数の方々から要望されながらも,色々の困難のため実行に移し得なかったものであります。 日進月歩の医学に対し,治療法も亦,改訂し,補充していかなければなりません。真摯なる読者諸賢の忌憚なき御意見と御教示により, 本書がわが国のCurrent therapyとなるよう念願して止みません。
時代の変化に応じ,社会における疾病構造も変化してきました。『今日の治療指針』で取り上げてきた疾患項目の推移にも時代相が反映しています。 また診療報酬の改定,編集委員の交代などに伴い,章立て・付録の内容の改訂,充実が重ねられてきました。
各先生方のご尽力により,60年もの長きにわたり,年鑑としての発行を続けている。
1959-1972年版 | 石山俊次先生・日野原重明先生・渡辺良孝先生 |
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1973-1988年版 | 石山俊次先生・日野原重明先生・阿部正和先生 |
1989-2000年版 | 稲垣義明先生・多賀須幸男先生・尾形悦郎先生 |
2001年版 | 多賀須幸男先生・尾形悦郎先生・山口徹先生・北原光夫先生 |
2002-2005年版 | 山口徹先生・北原光夫先生 |
2006-2013年版 | 山口徹先生・北原光夫先生・福井次矢先生 |
2014-2016年版 | 山口徹先生・北原光夫先生・福井次矢先生・高木誠先生・小室一成先生 |
2017年版- | 福井次矢先生・高木誠先生・小室一成先生 |
各巻の執筆者数,章・疾患項目数,総頁数,定価一覧
第1巻(1959年版) | 250執筆者,15章・285項目,496頁,定価:2,000円 |
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第10巻(1968年版) | 464執筆者,21章・529項目,840頁,定価:4,000円 |
第20巻(1978年版) | 603執筆者,29章・688項目,914頁,定価:10,000円 |
第30巻(1988年版) | 891執筆者,27章・932項目,1360頁,定価:14,000円 |
第40巻(1998年版) | 935執筆者,28章・972項目,1616頁,定価:18,000円(デスク判),14,500円(ポケット判) |
第50巻(2008年版) | 1075執筆者,27章・1099項目,1896頁,定価:19,000円(デスク判),15,000円(ポケット判) |
第55巻(2013年版) | 1101執筆者,27章・1119項目,2064頁,定価:19,000円(デスク判),15,000円(ポケット判) |
*1990年より,ポケット判の発行を開始。*定価は消費税別
第2次世界大戦の軍事統制下,医薬品は配給物資となっていましたが,60年前の1948年に「薬事法」(旧薬事法)が制定され,医薬品業は戦時中の経済統制を脱却し, 日本の医学・医療の戦後が始まりました。その後,国民皆保険の実現をめざし『今日の治療指針』創刊年の59年には, 「新国民健康法」が,翌60年には現行の「薬事法」が施行されました。