• HOME
  • 書籍
  • がん薬物療法副作用管理マニュアル


がん薬物療法副作用管理マニュアル

もっと見る

重症度の適切な評価、原因薬剤の中止や減量、支持療法の検討に役立つ情報をコンパクトに凝縮! 発熱、手足症候群、高血圧など、がん薬物療法時に頻度の高い副作用を対象に、1)原因となりうる抗がん薬、2)評価のポイント(症状・検査値、問診、重症度)、3)抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患・病態、4)対策、5)症例2例(抗がん薬の副作用が疑われた症例、それ以外の原因が疑われた症例)のパターンで解説。
監修 吉村 知哲 / 田村 和夫
編集 川上 和宜 / 松尾 宏一 / 林 稔展 / 大橋 養賢 / 小笠原 信敬
発行 2018年03月判型:B6変頁:314
ISBN 978-4-260-03532-3
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

監修の序

 がんの薬物療法による副作用は,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場に伴い,従来の殺細胞性抗がん薬が原因のものより複雑化し,適切に評価・管理することが難しくなっている.また,がん患者はがん以外の併存疾患を有している場合が多く,基礎疾患や突発的に発症する症状にも注意を払わなければならない.
 がん薬物療法を実践するためには,(1)医薬品の適正使用の観点から個々の患者に合った投与量と投与法を見極め,適切な患者指導を行ってアドヒアランス向上につなげること,(2)治療後の患者状態や服薬状況を確認し,効果および副作用を適切にモニタリングして患者の薬物治療を評価すること,(3)治療効果を向上させるために,副作用を適切に評価して的確な管理(マネジメント)を行うこと――が求められる.チーム医療が推進される現在,医師以外の薬剤師や看護師にも「がん患者を総合的に診る力」が必要とされている.
 がん薬物療法中の患者に,ある症状が発現した場合,以下の3つのスキルが大切である.すなわち,(1)その症状が抗がん薬による副作用か,それ以外が原因であるかを見極めるスキル,(2)患者の訴えや症状から原因となりうるものをピックアップし,多角的に評価するスキル,(3)がん患者には複数の抗がん薬が同時に使用されることが多いため,原因となる抗がん薬を推測・確定するスキル――である.例えば,がん薬物療法中に高血圧が発現した場合,この症状を正しく評価するには,患者の基礎疾患はどうか,高血圧の副作用が報告されている抗がん薬を使用しているか,血圧が上昇した時期は抗がん薬の投与後いつからか,併用薬はどうか,随伴症状はあるか,時間経過や日内変動はあるかなど,網羅的に情報収集をして判断する必要がある.
 本書は,がん薬物療法による主な副作用を取り上げ,その原因となる抗がん薬および副作用の発現割合・好発時期・リスク因子・特徴をまとめた.また,評価のポイントとして,症状・検査値,問診,重症度について記載し,問診では補助ツールとして利用されているOPQRSTを参考に,具体例を提示した.さらに,抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患や病態,対策(解決への道標),症例について解説した.症例は基本的に,「抗がん薬の副作用が疑われた症例」と「抗がん薬以外の原因が疑われた症例」を提示している.
 安全・安心ながん薬物療法を行う上で,副作用の予防および早期発見は不可欠である.副作用は除外診断であるといわれ,そのためにも前述した「総合的に患者を診る力」の涵養がわれわれ医療職にはますます求められる.本書ががん薬物療法に携わるみなさんにとって,臨床における積極的な患者支援の一助になれば幸いである.

 2018年1月
 監修者を代表して
 大垣市民病院 薬剤部長
 吉村 知哲

開く

1 抗がん薬の副作用
2 外来における副作用管理のコツ(副作用を聴く工夫,ケアのポイント)
3 アドヒアランス向上の必要性と方策
4 悪心・嘔吐・食欲不振
5 下痢
6 口内炎(口腔粘膜炎)
7 発熱
8 疲労・倦怠感
9 発疹
10 浮腫
11 関節痛・筋肉痛
12 過敏症
13 手足症候群
14 末梢神経障害
15 視覚異常・流涙
16 心機能障害
17 高血圧
18 間質性肺疾患
19 肝障害
20 腎障害
21 蛋白尿
22 出血性膀胱炎
23 甲状腺機能障害
24 電解質異常
25 高血糖
26 血小板減少

索引

資料
 1 副作用と参考になるガイドライン(主なもの)
 2 抗がん薬と代表的な副作用(主なもの)
 3 「間質性肺疾患に禁忌・慎重投与」の抗がん薬(主なもの)
 4 血小板数による投与中止,投与開始(再開)基準

ひとことメモ
 1 大腸がん手術と排便
 2 グレリン
 3 下痢のマネジメント
 4 下痢の定義
 5 口内炎(口腔粘膜炎)
 6 疲労・倦怠感の定義と特徴
 7 発疹の定義
 8 疼痛評価法
 9 過敏症に関する用語
 10 外用薬の使用量の目安
 11 外用薬の口径は製品によって異なる
 12 抗がん薬による眼障害の治療
 13 高血圧の定義
 14 降圧目標
 15 呼吸困難
 16 薬物性肝障害(DILI)
 17 AKI発症時にはScrの評価に注意!
 18 ネフローゼ症候群
 19 血尿
 20 アレムツズマブ
 21 甲状腺クリーゼの診断基準
 22 甲状腺機能亢進症と甲状腺中毒症
 23 劇症1型糖尿病
 24 ペットボトル飲料の糖質含有量
 25 血小板濃厚液の適正使用

開く

がん薬物療法にかかわる医療スタッフに広く勧めたい完成度の高いマニュアル
書評者: 奥田 真弘 (三重大病院教授・薬剤部長)
 がん治療の柱の一つであるがん薬物療法は日進月歩であり,毎年新規薬剤が投入され,治療の質が向上している。一方で,がん薬物療法は年々高度化,複雑化し,適正に実施する上で薬剤師の関与が必須となっている。がん薬物療法は副作用マネジメントが重要であり,抗がん薬の種類や患者状態に合わせて適切な支持療法を選択したり,副作用情報を患者と共有して早期に対応することが不可欠である。本書は,がん薬物療法に対する高い専門性を有し,豊富な知識と臨床経験を有する薬剤師が分担で執筆したものであり,がん薬物療法にかかわる医療スタッフに求められる副作用管理のポイントがわかりやすくまとめられている。

 本書は26章から構成され,第1章では抗がん薬の代表的副作用の種類,発現時期やモニタリングのポイントが要約されており,第2章と第3章ではがん薬物療法を受ける通院患者を念頭に,患者面談における副作用管理のコツや経口抗がん薬のアドヒアランス確保のためのポイントが記載されている。

 第4章以降では,23種類の代表的な副作用が章別に取り上げられており,各章において,副作用を引き起こす抗がん薬の種類とその発現率,副作用を評価するためのポイントなどが箇条書きで読みやすくまとめられている。がん薬物療法を受ける患者は,しばしば副作用と類似の症状を引き起こす他の疾患や併用薬を伴うため,鑑別が必要になる。本書では,抗がん薬に起因する副作用と他の要因による症状を鑑別するため,問診で確認すべきポイントが一覧表に示されており実践的である。個々の副作用に対する対策のポイントが解説され,引用文献リストも充実しているので,薬剤師が医師に副作用対策を提案する上でも有用である。

 本書ならではの工夫として,副作用別に典型的な症例が提示されており,副作用の鑑別方法や副作用対策が例示されている。本書は副作用管理の観点からまとめられたマニュアルであるが,読者が薬物名や副作用の症状から対策を調べたい場合は,巻末に充実した欧文・和文別の索引が掲載されているので,容易に目的とする項目に到達できるであろう。

 最後に本書では随所に「ひとことメモ」やイラストが挿入され,紙面も見やすく丁寧に構成されており編集者の細やかな配慮が感じられる。評者の施設でも早速本書を複数導入し,がん薬物療法にかかわる薬剤師を中心に活用し重宝している。本書は薬剤師だけでなく,がん薬物療法にかかわる医療スタッフに広くお薦めできる完成度の高いマニュアルである。
「抗がん薬以外の原因を考慮すべき」疾患・病態,症例も記載
書評者: 中島 貴子 (聖マリアンナ医大教授・臨床腫瘍学)
 がんに対する薬物療法は急速に進歩している。

 従来の殺細胞性抗がん薬に加え,分子標的治療薬,さらに近年では免疫チェックポイント阻害薬も数多くのがん腫で使用可能となっている。それぞれの単剤での使用だけでなく,併用療法ではカテゴリーを超えた薬剤同士の組み合わせが治療成績のさらなる向上を可能としている。しかしそれは同時に多様な副作用に対応しなければならないことを意味する。

 副作用管理に関する著書は多く存在する。がん薬物療法に従事し始めたばかりのころは,その類をたくさん購入し,外来・病棟での診療中に大変お世話になった。しかし実際の医療現場には著書だけでなく先輩の医師がいて,問診,病態のアセスメント,原因の特定と対策など,豊富な経験に基づいたアドバイスに多く助けられたものである。今ではがん薬物療法の領域ではチーム医療が急速に進み,そのような役割はむしろ薬剤師や看護師などのメディカルスタッフがこなしている場合も多いのではないだろうか?

 本書の最大の特徴は,「抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患・病態」にまで目が向けられていることであろう。症例提示においても,「抗がん薬の副作用が疑われた症例」と,「抗がん薬以外の原因が疑われた症例」の両者が示されているのは大変珍しい。「がん」を診察するのではなく,「がんを有する患者」を診察することの重要性が,本書においては一貫して伝わってくる。副作用に関する「辞書」を超え,チーム内で症例カンファランスをしているような感覚を与えてくれる。

 もう一つの本書の特徴は,「執筆者が全て薬剤師である」ということではなかろうか? 原因薬剤の特徴だけでなく,詳細な病状聴取のコツや,前述した副作用以外の可能性についての考察など,経験を積んだ腫瘍内科医が読んでもあらためて自身の診療の不足を再確認させられる内容を薬剤師が執筆している。日本のがん薬物療法におけるチーム医療がいかに進歩したか,強い感動を覚えるとともに,彼らのポテンシャルの高さにがん薬物療法の頼もしい未来を感じる。

 目の前の多彩な病態を持つ個々のがん患者に対するとき,職種を超えて役に立つ,自信を持ってお薦めする良著である。
「こういう本が欲しかった!」思わず叫んでしまいそうになる書籍
書評者: 濱口 恵子 (がん研有明病院副看護部長・がん看護専門看護師)
 「こういう本が欲しかった!」

 思わず叫んでしまいそうになる書籍がこのたび出版されました。

 本書は薬剤師による薬剤師のためのマニュアルかもしれませんが,がん患者にかかわる病棟,外来,外来化学療法センター,緩和ケアチーム,相談支援センターの看護師や他専門職にとっても有用であることは間違いありません。

 本書はがん薬物療法の副作用症状別に,その症状の原因となる抗がん薬のリスト,抗がん薬ごとの発現割合(全Grade,≧Grade3),好発時期が記載されているだけでなく,その症状が出現する可能性のある抗がん薬以外の原因(考慮すべき疾患・病態,患者側リスク因子),およびその対策がエビデンスに基づいてコンパクトにまとめられています。しかも事例とその解説,総論として「抗がん薬の副作用」「外来における副作用管理のコツ」「アドヒアランス向上の必要性と方策」が記述されており,初心者に対して理解を後押しする工夫がなされています。

 がん薬物療法は外来で行われることが主流になりました。予定された治療を安全かつ少ない苦痛で継続・完遂するためには,意思決定の支援はもとより,医師・看護師・薬剤師らが協働して患者のアドヒアランスを高め,患者・家族がセルフケア能力を獲得するための支援が不可欠です。薬物療法を受けている患者からの電話相談は増加傾向にあり,最初に対応するのは主に看護師です。

 患者は気になる症状から語り始めます。電話対応する看護師は患者の様子が見えない分,「その原因・要因は何なのか」「救急対応が必要なのか,経過観察でよいのか」について,アセスメントをしながら情報収集し,医師らと連携していきます。本書は,問診のポイントとその意図,重症度(NCI- CTCAEなど)を含め,原因・要因リストがパッと見てわかるように工夫されているので,本書がそばにあれば,どんなに心強いことでしょう。

 近年,次々と新薬が標準治療になり,薬物療法に関する最新の知識を得ることが看護師にとって難しい状況にあります。その点,殺細胞性抗がん薬,分子標的薬,内分泌療法薬,がん免疫療法薬を網羅しており,コンパクトなサイズにもかかわらず充実した内容が盛り込まれている本書には感嘆せざるを得ません。

 外来患者の対面・電話相談にも対応する外来副看護師長たちに本書を見せると,「わぁ~~すご~い,絶対欲しい!」と言っておりました。

タグキーワード

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。