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がん疼痛緩和の薬がわかる本 第2版

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好評を博した初版から、取りあげる薬剤がさらに充実した第2版。がん疼痛緩和の薬の効用や副作用、アセスメント、選択・使用の考え方がわかりやすく解説されている。症例が豊富にあげられているので、より理解が進む。がんの痛みの理解から、非オピオイド、オピオイド、鎮痛補助薬まで取りあげた、臨床のエッセンス満載の1冊。
余宮 きのみ
発行 2016年06月判型:A5頁:280
ISBN 978-4-260-02778-6
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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第2版の序

 このたび、有難くも本書の第2版を執筆する機会を頂きました。この3年間で、がん疼痛緩和についての薬、特にオピオイドに関しては、フェンタニル口腔粘膜吸収剤、タペンタドールやトラマドール製剤など、がん患者さんの疼痛治療の質を向上させる新たな薬剤が使用できるようになりました。これらの新たな道具(薬)を理解して、患者さんのために使いこなせるよう、またその他の項目でもがん疼痛治療の理解が深まるよう、大幅な加筆修正を行いました。
 第2版も、“難しいことを易しく理解できるように”という本書のコンセプトを大切にしながら執筆いたしました。
 本書を手に取ってくださる方を通して、患者さんの満足する疼痛治療が実現することを心より願っております。

 2016年春
 余宮きのみ

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第1章 がんの痛みとがん疼痛治療の基本がわかる
 がんの痛みがわかる
   痛みとは
   3種類の痛み
   がんの進行とともに痛みは変化する
   痛みの心理面への影響
 痛みの評価ができる
   評価のポイントは問診
   問診で確認する情報
   大切なのは継続的なアセスメント
   痛みについての質問が負担な患者への極意
   画像診断にも目を向ける
 がん疼痛緩和の基本は薬物療法
   がん疼痛治療の夜明け
   WHO方式の成功の秘密
   WHO三段階除痛ラダーをのぼる

第2章 非オピオイド鎮痛薬がわかる
 非オピオイド鎮痛薬
   NSAIDsとアセトアミノフェン
 NSAIDs
   NSAIDsの副作用
   NSAIDsの選択にひと工夫
 アセトアミノフェン
   アセトアミノフェンの有用性
   使用にあたっての注意点

第3章 オピオイドがわかる
 オピオイド
   オピオイドとは
   オピオイドの分類
   オピオイドによる依存、耐性
   オピオイドを飲みたがらない場合の対処
   オピオイドの副作用
 オピオイドの使用にあたって
   どんなときにオピオイドを開始するか
   生活支援
   レスキュー薬
   タイトレーション
   医師への伝え方
 弱オピオイド-WHO三段階除痛ラダー第二段階のオピオイド
   共通点は有効限界があること
   弱オピオイドの出番
   強オピオイドへ変更するとき
 コデインリン酸塩
   コデインの概要
   コデインの魅力
   コデインを服用している患者のケア
   強オピオイドへ変更するとき
 トラマドール
   トラマドールの概要
   トラマドールの魅力
   トラマドールを服用している患者のケア
   相互作用
 強オピオイド-WHO三段階除痛ラダー第三段階のオピオイド
   強オピオイドの強み
   強オピオイド製剤の種類と選択
 モルヒネ
   モルヒネの概要
   豊富な剤形が魅力
   モルヒネ製剤の種類
   モルヒネを服用している患者のケア
 オキシコドン
   オキシコドンの概要
   オキシコドンの魅力
   オキシコドン製剤の種類
   相互作用
 フェンタニル
   フェンタニルの概要
   フェンタニルの魅力
   フェンタニル製剤の種類
   フェンタニル注射剤
   フェンタニル貼付剤
   フェンタニル口腔粘膜吸収剤-突出痛治療薬
   相互作用
 タペンタドール
   タペンタドールの概要
   タペンタドールの魅力
   タペンタドールを使用している患者のケア
   副作用対策
   開始後のケア
   相互作用は少ない
 メサドン
   使用のポイント
 腎障害の影響
   腎障害下でオピオイドを使用するとき
   オピオイド使用中に腎機能が悪化したとき
   腎障害下でモルヒネを使用するときのケア
   クレアチニン値の落とし穴
 肝障害の影響
   肝血流をチェックする
   投与量と増量間隔
 オピオイドスイッチング
   換算の方法
   オピオイドスイッチングをしてもうまくいかない場合
 投与経路の変更
   投与経路の選択
   非経口投与は副作用が少ない
   先行オピオイドの減量・中止のタイミング
   持続注射のポンプ
   PCAシステム

第4章 鎮痛補助薬がわかる
 鎮痛補助薬
   鎮痛補助薬とは
   鎮痛補助薬の出番は
   どの鎮痛補助薬を選択するか
   使用のコツはアセスメント
   鎮痛補助薬使用にあたってのケア
   効果判定-どれくらいで効いてくるのか?
   鎮痛補助薬はなぜ効くのか
 抗けいれん薬
   抗けいれん薬の使用方法
   プレガバリン(リリカ®)、ガバペンチン(ガバペン®
   クロナゼパム(ランドセン®、リボトリール®
   バルプロ酸ナトリウム(デパケン®、バレリン®
   カルバマゼピン(テグレトール®
   ミダゾラム(ドルミカム®
 筋弛緩薬
   バクロフェン(ギャバロン®、リオレサール®
 抗うつ薬
   鎮痛補助薬としての抗うつ薬
   三環系抗うつ薬
    -ノルトリプチリン、イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン
   デュロキセチン(サインバルタ®
 NMDA受容体拮抗薬
   ケタミン〔ケタラール®静注用(1%)、ケタラール®筋注用(5%)〕
   イフェンプロジル(セロクラール®
 抗不整脈薬
   リドカイン(2% キシロカイン®注射)
   メキシレチン(メキシチール®
 コルチコステロイド
   ステロイドの種類
   ステロイドの使用方法
   早期から出現する副作用
   長期投与による副作用

索引

NOTE
心因性疼痛
「痛い」の本当の意味を探る
痛む部位の変化を見極める
NSAIDsの作用を理解しよう
COX-2阻害薬について
食事中の苦痛にアセトアミノフェンで対応する
アセトアミノフェンによる肝障害
作動薬と拮抗薬
オピオイドの鎮痛作用
「麻薬」という言葉がもつ力
実は誰もがオピオイドにお世話になっている
予防的な制吐薬への考え方
制吐薬の副作用を知っておこう
ペンタゾシンとブプレノルフィン
注意転換で痛みが変わる
レスキュー薬は空腹でも服薬してよい
胸水・腹水の影響をどうとらえるか
コデイン、トラマドール特有の事情
トラムセット®配合錠
作用時間の違いによる選択
フェンタニル貼付剤をいきなり使用する場合のケア
鎮痛効果の実感に合わせて調整する
衰弱による嚥下障害の場合はどうする?
フェンタニル口腔粘膜吸収剤の薬物依存
きちんと有効用量までタイトレーションする
効果不十分だった場合に、すぐタイトレーションするかどうか?
フェンタニル口腔粘膜吸収剤と速放性製剤の使い分けの説明方法
舌下錠の使用では唾液の多い患者は要注意
溶けにくい可能性を念頭において説明しておく
フェンタニル口腔粘膜吸収剤が毎日4回以上必要になる場合
バッカル錠と舌下錠は1:1での交換はしない
タペンタドールの最高用量
タペンタドールの神経障害性疼痛に対する効果
便利な換算表
持続皮下注
持続静注
鎮痛補助薬をメカニズムから整理すると……
ステロイドはなぜ痛みに効くのか

CASE
痛みのきっかけから、突出痛の予見可能性を把握してケアにつなげる
NSAIDsによるせん妄
痛みの評価によって鎮痛薬をやめられた
剤形の選択により服薬を促すことができた
痛みが強くなる時間帯で薬剤を選択した症例
嚥下障害や腸閉塞がある患者では例外的な使用もありうる
眠気を回避し、高いQOLを保てた
薬価-即効性が重要な場合には、安価になることも
腎障害下の患者にとって望ましい選択とは
肝血流が低下する要因を把握する重要性を感じた症例
痛みやレスキュー薬使用の状況によって投与量を決める
症状の原因検索の重要性を痛感した症例
経口剤から注射剤へと変更した症例
12時間徐放性経口剤から貼付剤へと変更した症例
24時間徐放性経口剤から貼付剤へと変更した症例
注射剤から徐放性の経口剤へと変更した症例
注射剤から貼付剤へと変更した症例
貼付剤から注射剤へと変更した症例
鎮痛補助薬でアロディニアが軽減した症例
プレガバリンの副作用がでたが、減量し有効だった症例
クロナゼパムが有効だった症例
バルプロ酸ナトリウムが有効だった症例
突出痛に対してバクロフェンが有効だった症例
デュロキセチンによる食欲不振が持続した症例
ケタミン注で迅速な鎮痛を得た難治性疼痛
漸減法と漸増法の症例

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“やさしさ”と看護師へのメッセージが込められた一冊
書評者: 鈴木 知美 (静岡がんセンター副看護師長/緩和ケア認定看護師)
 本書では,がんの痛みの原因,特徴,そして薬剤の特徴を理解した上で行う薬剤選択に加え,余宮先生が実践しているマネジメントのポイントと思考のプロセス,診察の場で実際に使用しているツールや具体的な方法も紹介されている。

 初版では,がん疼痛・薬剤について学ぶことが患者さんのアセスメントにつながることを強く実感した私は,待ち望んだ第2版を手にし,「看護師にやさしい本」という思いを抱いた。ここでいう“やさしい”には,三つの意味合いがある。

 一つ目は“難しいことを易しく理解できるように”(「第2版の序」より)という本書のコンセプトの通り,「がん疼痛緩和」や「薬の本」に苦手意識を持つ看護師も理解できるように一つひとつ丁寧に説明されていること。二つ目は,生活支援者である看護師を信頼し,看護師へのエールとともに,観察やケアの視点がたくさん盛り込まれていること。三つ目は,表紙の「けしの花」のイラストも変わり,オピオイドの原料とは思えないほどの美しさと温かさが表されている点。本書の内容にピッタリのやさしさが感じられる仕上がりになっている。

 本書は,「第1章 がんの痛みとがん疼痛治療の基本がわかる」「第2章 非オピオイド鎮痛薬がわかる」「第3章 オピオイドがわかる」「第4章 鎮痛補助薬がわかる」という流れで構成されている。2013年の初版から3年が経ち,その間にがん疼痛を緩和する新たな薬剤が増え,「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」が改訂されているが,本書でもフェンタニル口腔粘膜吸収剤,タペンタドール,トラマドール徐放性製剤など新たな薬剤に関する詳細な説明が加えられている。また,新たな用語であるオピオイドスイッチング,即効性製剤の説明に加え,簡易であるフェンタニル貼付剤の半面貼付の方法も紹介されている。

 さらに,トピックスや詳細な説明である「NOTE」が38項目挙げられ,「CASE」として26の症例が散りばめられている。NOTEでは,「これはどうなっているの」「どう対応すればよいの」「このメカニズムが難しくて理解ができない」という疑問や思いをキャッチしてくれたかのように応えてくれている。読み終わると,大事なことを理解し“なるほど”と感じ,知識の深まりと広がりも認識できる。CASEには,難渋した症例の薬剤調整の場面や投与経路の変更の具体的な場面など,私自身が緩和ケア病棟で出会った患者さんと同じ境遇も紹介されており,その対応や大切にしたいポイントが非常にわかりやすく解説されており,実践をイメージすることができる。

 あらためて,痛みを抱える患者さん・ご家族の的確で多角的なアセスメントと,それぞれの患者さんの生活に合わせた評価が重要であると学ぶことができる。そして,明日からの実践に活かしたい! 患者さんが満足する疼痛治療のために,患者さん・ご家族・医療スタッフが協働して取り組んでいきたい! と心から思える,たくさんのメッセージが込められた一冊である。

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