がん看護学 第2版

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・わが国では「生涯のうちに約2人に1人ががんにかかる」とされており、がんは国民の生命と健康にとって重大な問題です。また、基礎教育の現場において、臨床実習で学生が接する患者の多くもがん患者であり、がんの治療と看護について学ぶ「がん看護学」はますます重要となっています。
・本書は、看護師国家試験出題基準で示された項目を基盤としながら、がん患者とその病態の特徴、がんの臨床経過、治療と看護の実際、症状マネジメント、患者サポートといった、がんの治療と看護において共通する重要なテーマで構成されています。
・​​​​​​​今回の改訂では、がんをかかえる患者像をより具体的にイメージできるよう、事例をもとに臨床経過ごとの患者の特徴をみる「序章:がん看護学の対象となる患者のすがた」を新設しました。また、がんサバイバーシップ、地域包括ケア、家族ケア、遺伝カウンセリング、臨床試験、がんリハビリテーションといった新しいテーマについても充実させました。
・​​​​​​​治療と看護の実際においては、緩和ケアとペインコントロール、薬物による副作用と曝露対策、造血幹細胞移植における具体的なケアのポイントなどについて、大幅に内容を充実させました。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-別巻
小松 浩子 / 中根 実 / 神田 清子 / 嘉和知 靖之 / 星 章彦 / 雄西 智恵美 / 田墨 惠子 / 飯野 京子 / 森 文子 / 矢ヶ崎 香 / 渡邉 眞理 / 清水 奈緒美
発行 2017年01月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-02763-2
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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    2021.12.08

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はしがき

 本書は,看護の基礎教育において学んでほしい「がん看護学」のエッセンスを集めた教科書です。学生のみなさんが臨地実習で受け持つ患者には,がん患者が少なくないでしょう。受け持ち患者の健康問題を把握し,それに基づいて系統的なケアを行うには,がんの病態や診断・治療,がん患者の身体的・精神的・社会的苦痛を総合的に理解し,根拠に基づくケアアプローチを展開していくことが必要となります。本書では,実践の基盤となる知識や技術について,がん医療の実践現場で活躍するがん看護専門看護師やがん専門医がわかりやすく解説しました。

がん医療の進歩と看護の役割
 がん医療は日々進歩しています。高度先進医療技術の発展やがん遺伝子の検出,分子標的薬の開発などにより,患者1人ひとりの経過予測や治療の効果予測が可能になり,これに基づいた最適な個別化医療も進んでいます。こうした患者を中心とした個別化医療においては,患者とその家族が病態や治療について最新の知識を学び,治療過程や予後について十分に理解したうえで,治療やケアに取り組まなければなりません。患者とその家族が長期にわたる治療過程を安全に,また安心して歩んでいくためには,患者の可能性を育み,セルフケアを促進させる実践力が看護師に求められます。
 初版の発行後も,がん医療にはさまざまな変化があり,ますます看護師の役割は広くなっています。高齢化が加速するなか,高齢のがん患者に対する包括的ケアの必要性が高まっています。また,若年がん患者に対しては,がんへの対応だけでなく,進学や就職,妊孕性といった生涯発達上の課題について支援が必要です。

各章の構成と改訂の趣旨
 本書では,こうしたがん医療の進歩に対応し,新しいがん看護の実践とその根拠について学ぶことができるよう,各章を見直して刷新しました。
 冒頭には序章を新設し,がん患者の臨床経過を概観できる事例を提示しました。患者中心のがん看護を実践していくためには,がん患者の視点から臨床経過や直面する課題を思い描くことができなければなりません。がん看護学を学びはじめるにあたり,事例を通して診断・検査,初期治療,経過観察,再発・転移,終末期といった一連の経過を概観し,各過程における課題と看護のポイントをイメージできるように工夫しています。
 第1章では,がん医療の現在について理解するため,がん医療における課題やそれに対する施策,治療選択に関する説明や治療効果の判断において必要となるがん疫学,エビデンスに基づいた看護実践について学びます。改訂においては,がんを取り巻く状況の変化として,がんサバイバーシップケアや地域包括ケアなどについて内容を加えました。
 第2章では,がんの病態と臨床経過について,がんという病気がほかの病気とどのように異なるのか,がんの診断や治療がどのように進められるのかといった,がん治療の基本について学びます。改訂においては,がん疼痛の評価や対応などを中心に,緩和ケアに関する内容を大幅に充実させました。
 第3章では,がん患者の看護に必須となるケアアプローチについて,苦痛に対するマネジメントや心理的サポートといった視点から学びます。改訂においては,がん疼痛マネジメントの実際について事例を展開しました。また,近年のがん医療の進歩により重要となっている,家族ケアと遺伝カウンセリング,臨床試験を受ける患者のケアについてもわかりやすく解説しました。
 第4章では,がん治療の3本柱である手術療法・薬物療法・放射線療法に関する基本的な知識,また,これらを組み合わせた集学的治療の考え方について学びます。改訂においては,新しい治療法や薬剤に対応するよう内容を刷新しました。
 第5章では,がん治療の効果を促進し,合併症や副作用対策を効果的に実施するための看護について学びます。そのためには,第4章の内容をしっかりと理解しておく必要があります。また,効果的な看護実践を行うためには,第3章の理解が必須です。改訂では,がんリハビリテーションや,薬物療法における副作用と曝露対策,造血幹細胞移植の看護など,がん医療の発展に伴って重要性を増してきた看護を中心に内容を拡充しています。
 第6章では,がんの療養過程を入院や外来,在宅といったさまざまな場で継続していくための支援について学びます。改訂では,近年,診療報酬改定となった外来化学療法や,外来における看護相談について追記するとともに,地域包括ケアや相談支援センター・ピアサポートについても刷新しました。
 本書で学ぶエビデンスに基づく看護やケアアプローチは,医療の発展に欠かせない考え方であり,ほかの科目にも応用されるものです。がん看護学だけでなく,幅広い学習において活用していただけると幸いです。
 本書の内容は,がん医療の発展に合わせてつねに新しくしていく必要があります。忌憚のないご意見をくださいますようお願いいたします。
 2016年12月
 著者を代表して
 小松浩子

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序章 この本で学ぶこと (小松浩子)
 がん看護学の対象となる患者のすがた

第1章 がん医療の現在と看護 (小松浩子)
 A がんを取り巻く状況
  1 がん対策推進基本計画
  2 がん登録の必要性
  3 がんサバイバーシップケア
  4 がん医療における地域包括ケア
 B がんについて知る
  1 がんについて知るための方法(がん疫学)
  2 おもな疫学データの動向
  3 がんのリスク要因
 C エビデンスに基づく看護実践
  1 エビデンスを活用する
  2 ケアガイドラインの活用
  3 エビデンスに基づくケアの普及
  4 エビデンスを臨床に適用する手引き

第2章 がんの病態と臨床経過 (中根実)
 A がんの病態
  1 がんの発生
  2 がんにみられる増殖と分化の異常
  3 がんにみられる局所浸潤と転移
 B がん患者の臨床経過
  1 がん診療で行われる診察・検査
  2 がんの診断
  3 がん病変に対する治療の選択
  4 がん病変に対する治療と経過観察
  5 がん緊急症
  6 がんに伴うカヘキシアと倦怠感
  7 緩和ケア

第3章 がん患者の看護 (神田清子・小松浩子・田墨惠子)
 A がん患者の苦痛に対するマネジメント
  1 身体的苦痛
  2 心理的苦痛
  3 がん疼痛をかかえる患者の疼痛マネジメントの実際
 B がん患者の心理的サポート
  1 がん患者とのコミュニケーション
  2 セルフヘルプグループ
  3 家族への支援
 C がんの予防と早期発見
  1 マクロな視点からのがん予防・早期発見
  2 ミクロな視点からのがん予防・早期発見
  3 家族性腫瘍・遺伝性腫瘍の予防
 D 臨床試験を受ける患者のケア
  1 臨床試験に関するルール
  2 臨床試験にかかわる専門家
  3 臨床試験の流れ
  4 事例でみる治験の実際

第4章 がんの治療 (嘉和知靖之・中根実・星章彦)
 A 手術療法
  1 手術療法と集学的治療
  2 手術前に行われる診療
  3 治療方針の決定とインフォームドコンセント
  4 手術の種類
  5 手術後に行われる診療
 B 薬物療法
  1 薬物療法の流れ
  2 抗悪性腫瘍薬の種類と特徴
  3 薬物療法の治療計画(レジメン)
  4 薬物療法の実際
 C 放射線療法
  1 放射線療法の特徴
  2 放射線療法の流れ
  3 放射線療法の実際
  4 有害事象への対策

第5章 がん治療に対する看護 (雄西智恵美・田墨惠子・飯野京子・森文子)
 A がん治療における看護の重要性
  1 治療完遂の重要性
  2 患者の主体的な治療参加
  3 治療継続のための管理
  4 がんリハビリテーションの支援
  5 チームアプローチの調整
 B がん手術療法における看護
  1 アセスメント
  2 手術療法に対する準備教育
  3 ケアプランと意思決定支援
  4 術後の症状管理と合併症予防
  5 術後の機能障害・後遺症とセルフケア
  6 術後の機能喪失に対するセルフケア支援
  7 がんに特徴的な手術とケア
  8 術後の継続支援
 C 薬物療法における看護
  1 治療計画の理解と意思決定支援
  2 アセスメント
  3 薬物療法に対する準備教育
  4 副作用と合併症
  5 曝露対策
  6 治療継続と生活調整に向けたセルフケア
  7 薬物療法におけるケアの実際
  8 治療の移行・終了に対するケア
 D 放射線療法における看護
  1 アセスメント
  2 放射線療法に対する準備教育
  3 効果的な治療を行うためのケア
  4 治療継続と生活調整に向けたケア
  5 放射線療法における看護の実際
  6 放射線防護
 E 造血幹細胞移植と看護
  1 造血幹細胞移植とは
  2 患者・家族の理解を促す援助
  3 患者・家族の心身状態のアセスメント

第6章 がん治療の場と看護 (矢ヶ崎香・渡邉眞理・清水奈緒美)
 A 外来がん看護
  1 外来がん看護を取り巻く状況
  2 外来におけるがん看護
  3 外来がん看護の役割と看護師の能力
 B がん患者の療養支援
  1 療養の場の選択肢とその特徴
  2 医療連携の実際
  3 療養調整の実際
  4 治療費や療養費の支援について
  5 相談支援センターとピアサポート
  6 地域で生活する患者・家族を支えるシステム

巻末資料 抗がん薬一覧
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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