臨床外科看護総論 第11版

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・本書は、外科看護の理論と実践について総論的に学ぶための書籍です。また、そのために必要となる医学的な基礎知識についても総論的に記述されています。
・外科的治療(手術)という侵襲の大きな治療に対して患者がどのような反応を示し、そこからどのように回復していくのか、看護師はその過程をどのように支えられるのかについて、体系的に学ぶことができます。また、手術前から手術後までの全過程を通して近年の在院期間短縮への要請にこたえられるように記述されています。
・​​​​​​​第1、2章では、手術がどのような患者に対して行われ、手術侵襲が患者にどのような影響を与え、その結果として患者がどのような反応を示すのかについて学びます。
・​​​​​​​さらに第3章で手術に関連して必要となる麻酔法・酸素療法などについて学んだのち、第4章で手術の実際について学びます。
・​​​​​​​第5章では救急看護、第6~9章では周術期(手術前・手術中・手術後)の看護について学びます。また、第10章では集中治療を受ける患者の看護について学びます。
・​​​​​​​高齢者や小児は手術侵襲に対する反応が成人とは異なることから、それぞれが手術を受ける際の看護について第11、12章にまとめました。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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  • 目次

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はしがき

本書のなりたち
 看護学生向けの教科書はかつて「内科」と「外科」の区分で構成されていたが,器官系統別の構成による教科書シリーズ「系統看護学講座」が,1968年に医学書院からはじめて刊行された。これに伴って内科系,外科系を問わず各器官系統に属する疾患患者の看護は,それぞれの巻におさめられた。しかし,この構成では,各器官系統の疾患・看護のうち外科一般の事項や学習項目が欠落することになった。たとえば,麻酔法,手術(外科的治療)手技などのほか,疼痛管理(鎮痛),あるいは手術体位などである。そこでこの面を補うべく,外科的治療・看護を横断的に「総論」としてまとめた1巻が,1970年に「別巻」としてこのシリーズに加えられた。これが本書のなりたちである。

本書のねらい
 外科的治療(手術)を受ける患者は,共通の特徴をもっている。最終的には患者自身の意思で選択されるものであるとはいえ,手術は生体への侵襲を伴う治療法である。また治療後も,手術前に期待した結果が得られない場合や,手術によって身体の変容がもたらされる場合もある。手術後の経過によっては,入院期間がのびて社会復帰が遅れたり,予後が左右されたりする事例も少なくない。患者の不安や恐怖は,疾患や治療内容によってははかり知れないほど大きい。また,患者を支える家族も患者と同様に不安をもち,さまざまな心配をする。
 このような外科患者を前にして,看護師の果たす役割はきわめて大きい。同一の疾患・術式であっても,患者は個別である。看護師は,1人ひとりの「心と体と社会関係」のつながりを視点にもった全人的な患者理解に努め,患者の意思を尊重し,納得のいく意思決定を支援することが重要である。また看護師は,手術を安全に行い,患者の手術後の回復過程を促すために,手術前・中・後の全過程(周術期)において患者の心身の状態を的確に把握・調整し,チーム医療が効果的に行われるようコーディネーターの役割も担わなければならない。
 近年,技術・装置の開発・進歩によって手術手技も高度化し,適応範囲が拡大している。このような状況下では,従来の手術に加え,内視鏡下手術,血管内手術,ロボットを活用した手術,脳死あるいは生体移植手術など,多様な手術を受ける患者の看護に対応できるような教育・訓練が必要となる。
 また高齢化の進展などによる医療費の増大,医療経済の圧迫の影響もあり,入院期間の短縮化,在宅療養への移行も進んでいる。それに伴って,外来看護の重要度が増すとともに,病院と地域の看護職との密な連携の必要性が高まっている。
 本書では,このように変貌をとげつつある「外科看護」を,周術期の全過程を通して,またそれぞれの時期ごとに,要点を押さえながら懇切に解説している。外科看護には,周術期全体にわたる理解ならびに展望,さらには患者・家族の心身の状態の変化に関する広範な知識と洞察力,臨床実践力が不可欠である。本書を通して,外科看護の臨床で必要とされる事項・内容を十分に習得してほしい。

今改訂のねらい
 本書は「別巻」とはいえ,本シリーズの主要な巻と同様,初版からほぼ4年間隔で定期的に改訂を重ね,時代の要請にこたえながら今日にいたっている。
 今回の改訂の特徴点は,第1に,本書発刊の基本理念である「看護学生のための教科書」という側面から,「わかりやすさ」を考慮した章だておよび内容にしたことである。たとえば,「創傷治癒」を「手術侵襲と生体反応」に近い位置に項目だてし,前回では最終章にあった「集中治療を受ける患者の看護」を患者の周術期の流れにそって「手術後の看護」に続けた。
 麻酔に関する内容,手術室・集中治療室における看護については,看護学生に必要な内容という視点から,簡潔な記述に努めた。また,前版においてそれぞれ付録・第5章として独立して扱っていた「外科看護で用いる基本技術」「看護を取り巻く法的環境」は,外科看護に必要な知識を再検討したうえで,本文の関連する部分と統合するかたちで再構成した。
 第2の特徴は,看護に関するすべての章に「患者のアセスメント」を意図的に盛り込んだことである。これらを学んだ読者らが,周術期において根拠に基づいた看護を実践できるようになることを期待している。
 第3の特徴は,時代の要請・医療ニーズの変化に対応した新たな取り組みについて解説していることである。高齢化や地域包括ケアシステムの構築が進む今日において求められている,患者個々の事情を考慮した意思決定支援,切れ目ない医療・看護に必要な患者フローにそったマネジメントシステム,周術期の医療安全を高めるチームワーク向上スキルなどについて,わかりやすく解説している。
 最後に第4の特徴は,執筆者のうちとくに看護師の若返りをはかったことである。臨床で活躍する専門看護師・認定看護師が中心となってそれぞれの領域や分野で専門性の高い情報や知見を盛り込んで解説しており,理解をたすけている。
 患者の安全・安楽を保証し,よりよい人生の創出に寄与できる看護を実践するためには,高い専門性と倫理観をもち,患者・家族のもつ力を信じ発揮させるかかわりが重要である。本書から,このような看護の基本姿勢をくみ取って学んでいただければ幸いである。
 2016年10月
 編者ら

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序章 今日の外科看護の特徴と課題 (高橋則子)
 A 外科看護とは
 B 外科看護の役割と課題
 C 外科看護の流れと看護の要点
第1章 外科医療の基礎 (矢永勝彦・西川勝則・石田祐一・岡本友好・二宮友子)
 A 外科的治療の特徴と変遷
 B 手術侵襲と生体の反応
 C 炎症
 D 感染症
 E 創傷治癒
第2章 外科的治療を要する疾患・症状 (衛藤謙・小川武希)
 A 外科的治療の適応
 B 腫瘍
 C 外傷・熱傷とショック
第3章 外科的治療を支える分野 (瀧浪將典・三森教雄・西川勝則・田崎哲典・藤本麗子)
 A 麻酔法
 B 呼吸管理(酸素療法と機械的人工換気)
 C 体液管理
 D 栄養管理
 E 輸血療法
 F 緩和医療
第4章 外科的治療の実際 (岡本友好・衛藤謙・矢永勝彦)
 A 外科的基本手技
 B 低侵襲手術
 C 臓器移植
第5章 救急看護の基礎 (小川武希・挾間しのぶ)
 A 救急処置法の実際
 B 救急看護の実際
第6章 周術期看護の概論 (奈良京子・菅野みゆき)
 A 手術を受ける患者の状況
 B チーム医療と看護師の役割
 C インフォームドコンセント
 D 周術期における安全管理
 E 院内(病院)感染予防
第7章 手術前患者の看護 (丸山弘美・五味美春・関久美子)
 A 外来診療の変化に対応した外来看護師の役割
 B 外来における手術前の患者の看護
 C 手術前の具体的援助
 D 日帰り手術を受ける患者の看護
第8章 手術中患者の看護 (小林友恵・山元直樹)
 A 手術中の看護の要点
 B 手術室における看護の展開
 C 手術室の環境管理
第9章 手術後患者の看護 (笹木織絵・三森教雄・二宮友子・田村宏美)
 A 手術後の回復を促進するための看護
 B 術後合併症の発生機序
 C おこりやすい術後合併症の予防と発症時の対応
 D 自己管理に向けた援助
 E 在宅療養者への支援
第10章 集中治療を受ける患者の看護 (山口庸子・小俣美紀)
 A 集中治療・看護の概念と役割
 B 集中治療室(ICU)
 C 集中治療における看護の実際
第11章 手術を受ける高齢者の看護 (矢永勝彦・渡部雅代)
 A 高齢者の外科的治療
 B 高齢者の周術期の看護
 C 手術前の看護
 D 手術後の看護
 E 退院に向けての援助
第12章 手術を受ける小児の看護 (芦塚修一・小島真由美・名執有紀)
 A 小児の外科的治療
 B 小児の周術期の看護
 C 手術前の看護
 D 手術後の看護
 E 家族に対する援助・指導

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