健康支援と社会保障制度[4]
看護関係法令 第48版

もっと見る

看護基礎教育で学ぶべき各領域の法令について解説し、学習のポイントを記述しています。 看護の中心となる「保健師助産師看護師法」から周辺の法令まで、系統だてて解説しているため、法令間の関係も理解しながら学習を進めることができます。 本書は、毎年改訂し、発行直前までに制定・改正された最新の法令を加え、充実しています。また、学習の便を考え、内容も適宜見直し、わかりやすく記述しています。 2015年の改訂では「保健師助産師看護師法」や「医療法」の改正部分の施行に関する事項や、「国民健康保険法」などの医療保険法および「社会福祉法」の改正などを織り込んでいます。 巻末には、「保健師助産師看護師法」の全文をはじめ、必要な諸法令の関係条文を掲載し、本書1冊で用が足りるようにしています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座
発行 2016年02月判型:B5頁:376
ISBN 978-4-260-02421-1
定価 2,640円 (本体2,400円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

はしがき

看護の発展は国民のために
 看護とは,人間の自然治癒力を引き出し,生きる希望と力をつくり,生涯にわたり尊厳をもって輝く人生を送れるよう支援することである。保健師助産師看護師法第5条では,傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助という行為の外見を書いているが,それは看護師にしかできない業務独占行為を書いているのであり,看護の定義を書いているわけではない。保健師助産師看護師法では看護とはなにかを定義していない。同法は行為規制法だからである。この法律だけで看護が決まるのではない。看護学を積み,多くの法を理解してはじめて国民が求める看護がわかる。
 保健師助産師看護師法はここ数年で何度も改正されている。大学における看護教育の明文化,保健師助産師教育の1年制化,臨床研修の努力義務化,行政処分にあたっての都道府県知事の意見書の任意化,養成施設監督権限の都道府県知事への委譲,審査請求用語の改正,特定行為研修の開始などである。法といえども時代の要請で変化をとげている。
 看護はじめ医療は,経済的側面では最大で55兆円近くの産業規模であり,健康保険の対象となる国民医療費ベースだけでも40兆円にもなるわが国最大の産業である。医療で働く250万人の中でも最大の集団である165万人の働く看護職の活躍が,医療の質を決め,国民に評価されることになる。
 看護職が質の高い看護を提供するには,まず社会人として充実した豊かな人生を送り,職業人として任務を十分に果たさなければならない。そのためには高い教養を持ち,深い専門的知識とすぐれた技術技能を身につけるとともに,わが国の保健医療福祉に関する諸制度の概要とそれを規定する諸法令を理解しなければならない。社会において看護が大きな位置を占め,保健師・助産師・看護師がどういう役割を受け持っているかを正しく認識する必要がある。看護はじめ医療という仕事は,人間の生命に直接関係するだけに,医療に携わる人々の資格や業務内容が法律で厳格に規定されている。看護に携わる者が,国民の健康を守り,与えられた職責を正しく遂行するためには,看護関係法令への理解が必要である。
 本書は,看護に携わる者にとって最も重要な法である保健師助産師看護師法から説き,順次周辺に広げ,医事や保健衛生,社会福祉などの関係法令を重点的に解説したものである。
 学習にあたっては,これら法令を単に知識として学ぶだけではなく,なぜこのような内容になっているのか,看護との関係はどうなのかについて,他の科目で学んだこと,あるいは日常生活や実習での経験,さらに書籍・テレビ・新聞・インターネットなどからの情報とも関連づけて理解するように希望する。なお,附録に,保健師助産師看護師法および関係政省令・通知と保健医療関係法のうち看護業務に密接に関係する部分の条文を掲載しているので,勉学の参考にされたい。
 法律というと,日常生活とはかけ離れたもの,難解なものという印象があり,敬遠されがちであるが,実際には,法律は私たちの日常生活そのものであり,知らず知らずのうちに,法から守られ,法を守っているのである。法とは,基本的には誰もが守ることができる,ごく当たり前のこと,自然な内容であり,そうむずかしいことではない。読者の研鑽に期待したい。

少子高齢人口減少社会で看護の役割は増大
 いま,わが国では,利用者の視点を中心にして,ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもとに,医療など社会保障の施策が展開されている。2015年は出生数が101万人である。近年は合計特殊出生率は1.42となったが,厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所による人口推計でも,基調は年間出生数が100万人程度にまで下がり,合計特殊出生率は1.26で推移するなど少子化が進むことが予測されるのが,わが国の現実である。
 相対的に高齢化も進展し,現在は65歳以上の高齢者は3400万人で,高齢化率は全人口の27%に,75歳以上の後期高齢者は13%にまで達し,2014年は女性の平均余命86.83歳とともに世界最高水準であるだけでなく,2015年は年間死亡数が130万人と増加して,わが国は少子高齢化とともに人口減少社会に突入している。
 また,2025年には戦後の1947年から1949年にかけて生まれた640万人のベビーブーム世代が後期高齢者になり終え,この人口構成の劇的な変化が日本の社会保障に多大の影響を及ぼす。
 このため,国中でわが国の将来を考え,国会や厚生労働省社会保障審議会などにおいては,社会保障から社会のあり方まで社会保障と税の一体改革として幅広く議論した結果をまとめ,新しいわが国の姿に向かって進もうとしている。
 医療の分野では,医療制度改革が推進中で,給付と負担の適正化により安定的な医療保険制度の構築を目ざし,医療提供体制については,利用者の視点を中心においた改革が進んでおり,利用者主役と医療安全が基本となっている。
 福祉の分野では,少子高齢化時代の介護を社会全体で支えるために介護保険が始まって久しく,関係者の尽力によって順調に進んでいる。ただし介護人材の確保が課題である。さらに利用者主役を進めるために,障害を持つ方々へのサービスが障害の種別をこえて提供されようとするなど,社会福祉の基礎構造改革を進めている。基本的には社会を根本から見すえて,子育て支援を充実し,働き方を見直し,男女共同参画のために,国をあげて体制整備の最中である。

看護は文化
 このような動きの中で,社会保障制度を守り,誰もが普遍的にサービスを受けられる現行制度を安定的に維持していくことに,いささかの揺るぎもない。医療でも,利用者主役・地域主義・地方分権については最優先の課題として取り組まれているところである。利用者が施設や在宅の区別なく,本人の個性に応じた多様なサービスを受けるために地域包括ケアという概念が普及している。関連施策と連携をとり,医療は総合的に推進されなければならない。医療安全や地域連携で看護職に国民が期待しているいまは看護の発展のチャンスである。
 医療をはじめ,わが国の社会保障は,基本的に誰もが最高水準のサービスを受けられるという,諸外国に比べて遜色のない制度であり,内容・人員・設備水準も向上してきている。これを利用者が実感できるようにしたい。
 これからは利用者本位のサービスを展開し,そのために自己評価,利用者評価および第三者評価をふまえ,とくにサービス向上の中核は安全であることを認識して利用者に接しなければならない。国中で安全やリスクマネジメントが大きく叫ばれ,将来の様相はかわっていくであろう。日常の勤務の中で,仕事を効率化し,楽にすることは利用者のためでもある。評価の導入で,努力が報われ,利用者満足度の高いシステムができる。社会の変革と制度の改革は自分自身と看護が飛躍する機会である。
 看護は文化である。看護を見れば一国の文化水準がわかる。いままさに国民が看護への期待を高め,その役割が増大している。期待が高いから不満も大きいのである。現在おこっている改革の流れは看護職のための機会拡大でもある。いままでできなかったことが,できるようになるかもしれない。

改訂にあたって
 看護を中心とする関係法令の中でも資格関係と医療改革関連法について,読者の利便を考え,最新の動きも入れて大きく充実し,法律の見出しについてもメリハリをつけて,なにが重要かがわかるように改善を続けている。また附録の掲載条文も必要な法令と条文を見直している。
 看護の質の向上のための一連の保健師助産師看護師法の改正に係る法律・政令・省令を網羅しているほか,地域包括ケアなどを内容とする医療と介護を一体とした改革の内容や関係する法律の改正なども加え内容を充実した。諸改正については,読者が卒業したときに照準を合わせた長期的な記述としている。これからも新たな視点で引きつづき内容の充実に努めていきたい。読者のご鞭撻をお願いするものである。
 なお,以上の観点から原則として法令の内容は2016年1月1日現在をもとにし,2016年4月1日に施行されている内容で記した。記述方法,用字・用例については医学書院の内規によっている。
 2016年1月
 森山幹夫


おもな改訂内容
(1)社会保障と税の一体改革の流れから,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律が2014年6月に成立し,保健師助産師看護師法や医療法などが改正された。看護師の特定行為研修の開始や,介護と連携をとった医療提供体制の整備,臨床研究中核病院,医療事故調査制度などを規定している。また,歯科衛生士の女子規定の廃止,臨床放射線技師と臨床検査技師の業務内容の拡大も盛り込んでいる。
(2)同様に介護においても,医療と一体となった介護体制の整備を進め,介護福祉施設への入所要件の中重度者への重点化,所得の多い者の自己負担割合の2割への引上げ,地域支援事業の市町村事業への位置づけなどの介護保険法の改正も行われている。
(3)社会保障制度改革の流れの中で,国民健康保険において,都道府県が財政運営の責任主体となるなどの制度改正法が成立したので関係法律を改正した。
(4)保健師助産師看護師法については,これら以外にも行政改革の一環で,看護師等養成所の指定監督権限を厚生労働大臣から都道府県知事へ移譲することや,行政不服審査法の改正に伴い,全省庁一括制度改正が行われたことなどを修正している。
(5)このほかにも看護や医療に関する新しい法律が多く制定され,制度が改正されたので,公認心理師法,いわゆるマイナンバー法,女性活躍推進法など必要なものを要約してもれなく掲載している。さらに全分野にわたり看護師という用語が出てくる法令を見直し新しく収載したほか内容をわかりやすく見直した。
(6)また,教育にあたり必要とされる患者などの個人情報保護や守秘義務,学生が気をつけるべきインターネットに関係する部分を充実した。
(7)これらにより附属法令の収載も関係部分は2016年1月現在のもので修正している。

形式に関して
(1)保健師助産師看護師法など看護をおもなテーマとする法律を看護法という範疇〈はんちゅう〉で章だてしているが,あくまで授業の便を考慮した本書独自の分類である。
(2)全体的に法律の見出しにメリハリをつけ優先度が高いものがどの法律かわかるようにしている。

開く

第1章 法の概念
  A 法の概念
  B 法の分類
  C 衛生法
  D 厚生行政のしくみ
第2章 看護法
  A 保健師助産師看護師法
  B 看護師等の人材確保の促進に関する法律
第3章 医事法
  A 医師法・医療法
  B 医療関係資格法
  C 保健医療福祉資格法
  D 医療を支える法
  E 人の死に関する法
  F 緊急時の看護・医療に関する法
第4章 保健衛生法
  A 共通保健法
  B 分野別保健法
  C 感染症に関する法
  D 食品に関する法
第5章 薬務法
  A 薬事一般に関する法律
  B 人等の組織を用いた医療関連法
  C 薬害被害者の救済等
  D 麻薬・毒物等
第6章 環境衛生法
  A 営業
  B 環境整備
第7章 社会保険法
  A 費用保障
  B 年金
  C 手当
第8章 福祉法
  A 福祉の基盤
  B 児童分野
  C 高齢分野
  D 障害分野
第9章 労働法と社会基盤整備
  A 労働法
  B 社会基盤整備等
第10章 環境法
  A 環境保全の基本法
  B 公害の防止法
  C 自然保護法
附録 看護関係法令
  保健師助産師看護師法
  保健師助産師看護師法施行令
  保健師助産師看護師法施行規則
  保健師助産師看護師学校養成所指定規則
  看護師等の人材確保の促進に関する法律(抄)
  医療法(抄)
  医療法施行令(抄)
  医療法施行規則(抄)
  厚生労働省設置法(抄)
  医師法(抄)
  歯科医師法(抄)
  薬剤師法(抄)
  診療放射線技師法(抄)
  臨床検査技師等に関する法律(抄)
  理学療法士及び作業療法士法(抄)
  視能訓練士法(抄)
  言語聴覚士法(抄)
  臨床工学技士法(抄)
  義肢装具士法(抄)
  救急救命士法(抄)
  公認心理師法(抄)
  歯科衛生士法(抄)
  歯科技工士法(抄)
  あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律(抄)
  柔道整復師法(抄)
  健康保険法(抄)
  日本国憲法(抄)
  民法(抄)
  戸籍法(抄)
  刑法(抄)
  心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(抄)

資料 日本の看護・医療に関する基礎データ
索引

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。