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医療福祉総合ガイドブック 2015年度版

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医療・福祉サービスを利用者の生活場面に沿って解説したガイドブックの2015年度版。最新情報をフォローし、医療・福祉制度がより理解しやすくなるように解説を見直し、大幅刷新! 全国共通で利用頻度の高い制度から地域によって異なるサービス例まで、幅広く網羅。利用者からの相談に素早く、より確実に対応するための医療・福祉関係者必携の1冊。
本書は2015年2月末日までに把握できた情報をもとに構成しております。本書の発行後にも法律の改正や制度の変更が行われる場合があるため,あらかじめご了承ください。
編集 NPO法人 日本医療ソーシャルワーク研究会
編集代表 村上 須賀子 / 佐々木 哲二郎 / 奥村 晴彦
発行 2015年04月判型:A4頁:320
ISBN 978-4-260-02122-7
定価 3,630円 (本体3,300円+税)
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はじめに

 本書『医療福祉総合ガイドブック』を発行し続けて15年になります。今日,トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』(みすず書房)が話題になっています。2014年12月に日本語訳が出るや経済学の学術書にもかかわらず書店では平積みされ,国会討論の攻防にも引用されるまで脚光を浴びています。テーマは富の格差です。日本でもこの経済書が大変な注目を集めているのは,人々のなかに格差の実感が広がりつつあるからではないでしょうか。

 その格差を是正する方法の一つに社会保障の充実がありますが,社会保障の具体的なサービス内容を知らない人が少なくないのではないでしょうか。私たちは「社会保障を知り,使うことで自分を守ってほしい」という思いで本書を編集してきました。
 もともと本書の発行以前から,医療機関等に勤めるソーシャルワーカーが集まり,相談業務をより豊かにするため,地域の社会資源(生活を支える諸制度)に関する情報と実践方法について学習していました。介護保険がスタートし,人々がサービスを選択して契約する時代を迎えたのを機に,選択のためにはサービス内容を知っておく必要があると痛感し,また,医療関係者や民生委員たちからの「私たちももっと知っておきたい」という声にも背中を押され,本書の制作を始めたのです。
 執筆者たちは常に,「利用者の立場」で書く,「複雑なものをわかりやすく」伝えることに徹してきました。集積した情報や工夫した紹介方法を持ち寄り,図や表にまとめ,また,相談業務の過程で制度を利用して気づいたこと,利用できなかった利用者の無念さを新たなしくみづくりに活かすための考えを「コラム」で提言しています。その点で,本書は単なる情報提供書ではありません。

 「社会保障のしくみ」の章では,社会保障を構成する制度を体系的に説明しています。また,国の進めようとする社会保障制度の見直しが,制度の根幹を揺るがし,国民負担を増やすことに警鐘を鳴らす章として位置づけてきました。
 「医療サービス」「生活費としごと」「高齢者サービス」「障害児・者サービス」「家庭・児童(子ども)のために」の章では,各種医療福祉サービスを利用者の生活に沿うように構成しています。
 2012年度版より,「自然災害等にあった人のために」という章を追加しています。東日本大震災による未曾有の被害を受けた生活に対する保障が,通常の社会保障制度とは異なる内容であるためです。
 2014年6月に改正された「医療介護総合確保推進法」では,地域包括ケアシステムの構築が直近の課題として提起されており,今回,新たに「『地域包括ケア』構築のために」という章を設けました。地域包括ケアは,医療,保健,介護,福祉など,人々の生活を取り巻く諸サービスを地域において一体的,総合的に利用できるようにするものです。そのためには,本書で紹介している全国に共通する公的なサービスのみならず,住まいや防災など多岐にわたる分野の連携とNPOや民間サービス機関などを含む提供分野の広範化が必要です。今や,社会資源の情報を単に提供するだけに留まらず,社会資源を地域でつくり,つなぎ,つくりかえるという動的な働きが求められる時代を迎えています。地域包括ケアシステム構築のために,各地でさまざまなチャレンジが始まっており,地域によって取り組みの格差が生まれているようです。システムづくりの取り組み方のヒントになればと考え,短い章を設けました。
 何か生活上で困ったときに,わが身と家族を守るための知識として,また,住み慣れた地域で安心して暮らせる制度つくりのための知識として,本書を折にふれ活用していただければと願っています。

 現場で実践しながら,本書の出版を継続させるため長きに渡り情報を収集し続け,わかりやすく伝えるために創意工夫しながら執筆に携わっているソーシャルワーカーのチームに心から感謝を申し上げます。また,医学書院の吉田拓也さん,富岡信貴さんは,伴走ともいえる編集,制作作業を続けてくれました。ありがとうございました。執筆者らの心の底に流れる「利用者のために意を尽くそう」という思いをくみ取っていただければ大きな喜びです。

 なお,本書編集の「NPO法人 日本医療ソーシャルワーク研究会」では,本書の印税を医療福祉の広報,普及活動や医療ソーシャルワーカーの研修に役立てておりますことをご報告しておきます。

 2015年3月
 編集代表 村上須賀子 佐々木哲二郎 奥村晴彦

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I 社会保障のしくみ
 社会保障のしくみ
  (1)社会保障とは
  (2)社会保険とは
  (3)公的扶助(生活保護)とは
  (4)社会保障を利用するときに
 サービス利用の窓口・支援する人

II 医療サービス
 病院選び-よりよい選択をするために
  (1)医療サービスの概要
  (2)医療機関の種類
    A 医療法による区分
    B 診療報酬制度による区分
    C 医療対策・医療関連各法による区分(拠点病院)
    D その他の法による区分
  (3)一般病院における医療サービス
    A 入院
    B 在宅生活を支える地域資源
  (4)精神科における医療サービス
    A 精神科という医療への受診
    B 入院
    C 入院の形態
    D 退院請求・処遇改善請求
    E 在宅へ向けて利用できるサービス
    F 在宅
 医療費を支払う前に
  (1)国民皆保険制度やさまざまな諸制度
  (2)医療費自己負担を軽くするために
    A 高額療養費制度
    B 医療費軽減制度
    C 自治体によって異なる医療費補助
    D 被害者救済医療
    E 税制上の軽減制度

III 生活費としごと
 生活費
  (1)公的扶助
  (2)資金貸付制度
  (3)年金保険制度
    A 「所得」が得られなくなるリスクに備える保険
    B 老齢年金
    C 障害年金
    D 遺族年金
  (4)手当
  (5)公共料金等の減免・割引
 しごと
  (1)雇用保険制度
  (2)就職支援

IV 高齢者サービス
 高齢者サービスのガイド
  (1)介護保険のしくみ
  (2)介護保険の手続き
  (3)相談するところ
 高齢者サービスの実際
  (1)介護保険サービスの費用
  (2)サービス提供事業所
 住まい
 暮らすところで利用するサービス
 出向いて利用するサービス
 税制上の軽減制度
 高齢者の権利擁護

V 障害児・者サービス
 障害児・者サービスの実際
  (1)相談支援
  (2)障害福祉サービスのしくみ
    A サービスのしくみ
    B サービス利用の流れ
    C 障害支援区分の認定
  (3)サービスの実際
  (4)障害児の福祉サービス
    A 利用の手続き
    B 障害児通所・入所支援
  (5)障害児・者の費用負担
    A 障害者の費用負担
    B 障害児の費用負担
    C 補装具の費用負担
    D 日常生活用具の費用負担
    E 費用負担の軽減措置
  (6)障害福祉サービスと介護保険
 障害児・者サービスのガイド
  (1)身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
  (2)手帳で利用できる制度
  (3)発達障害者への支援
  (4)高次脳機能障害者への支援
 難病患者のために
 住まい
  (1)共同生活するところ
  (2)居住サポート
  (3)公営住宅への入居
  (4)住宅の改造
 暮らすところで利用するサービス
  (1)地域移行支援
  (2)介護サービス
  (3)暮らしを豊かにする用具
 出向いて利用するサービス
  (1)日中活動のイメージ
  (2)介護サービス
  (3)活動支援のサービス
 おでかけ
  (1)のりもの
  (2)自動車関係
  (3)移動支援
 しごと
 自助グループ(セルフヘルプグループ)
  (1)自助グループとは
  (2)本人のグループ
  (3)家族のグループ
 障害者虐待防止法と支援のしくみ
    A 障害者虐待とは
    B 支援のしくみ

VI 家庭・児童(子ども)のために
 家庭・児童(子ども)のために
  (1)子どもの手当
  (2)医療費自己負担の軽減
  (3)医療保険からの給付
  (4)乳幼児・児童の保護と育成
    A 相談するところ
    B 入所施設
    C 社会的扶養
    D その他
  (5)子育てサポート
  (6)ひとり親家庭支援
    A 子育て・生活支援
    B 経済支援
    C しごと
  (7)就学のための支援
  (8)児童虐待防止法と支援のしくみ
    A 児童虐待とは
    B 支援のしくみ
  (9)DV防止法と支援のしくみ
    A DVとは
    B DV防止法とは
    C DV被害者への支援のプロセス

VII 自然災害等にあった人のために
 自然災害等にあった人のために
  (1)大規模自然災害等の保障
  (2)医療サービス
  (3)生活と住まい・しごと
    A 生活
    B 住まい
    C しごと
  (4)高齢者サービス
  (5)母子・父子(ひとり親),乳幼児,児童のために
  (6)その他の支援
 原子力災害にあった人のために
  (1)医療サービス
  (2)生活
  (3)その他の支援

VIII 「地域包括ケア」構築のために
 住民主体で構築する地域包括ケア
  (1)医療・介護の連携が必須
  (2)「地域包括ケアシステム」構築のために地域を知る
  (3)「機関同士の組織連携」と人材の確保
  (4)「地域包括ケアシステム」の構築は「住民主体」で

資料編
 1.全国のいのちの電話
 2.都道府県における医療ソーシャルワーカーに関する問い合わせ先
 3.意識障害,基本的生活動作,機能的自立度に関する評価スケール
 4.労働者災害補償保険法障害等級表
 5.自動車損害賠償保障法後遺障害等級表
 6.難病の患者に対する医療等に関する法律第5条第1項に規定する指定難病
 7.重度心身障害者医療費助成制度の例
 8.生活保護における地域の級地区分
 9.全国の生活保護相談窓口
 10.国民年金障害等級表,厚生年金障害等級表,厚生年金障害手当金
 11.特別障害者手当の障害程度認定基準
 12.障害者総合支援法の対象疾病一覧
 13.身体障害者障害程度等級表
 14.精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準
 15.高次脳機能障害診断基準
 16.精神障害のある人たちのグループ
 17.身体に障害や難病のある人たちのグループ
 18.知的障害のある人たちのグループ
 19.特別児童扶養手当の障害程度認定基準
 20.障害児福祉手当の障害程度認定基準
 21.子ども医療費助成制度,乳幼児医療費助成制度の例
 22.ひとり親家庭等医療費助成制度の例
 23.無料低額診療施設

索引

column
 がんと仕事を考える-医療ソーシャルワーカーの存在がカギとなる
 退院支援について-ストレングスモデル
 精神障害の労災請求の現状を知っていますか?
 自動車損害賠償責任保険の減額
 難病治療費の負担は軽減?
 就労による自立の促進は進むのか?
 住宅扶助の引き下げについての議論
 CSW(コミュニティソーシャルワーカー)
 がんになったら仕事をやめなければいけませんか?
 施設の費用が高くて……,年金だけでは無理?
 「何のためのリハビリテーション?」-作業療法士のひとり言
 地域のサービスに住民の声を
 精神障害者の地域移行支援推進について
 障害者差別解消に向けた取り組み
 子ども・子育て支援新制度がスタートします

ミニ知識
 労災保険のメリット制
 悲しみのなかでも必要な各種手続き
 地域連携パスの利用
 往診と訪問診療の違い
 水俣病に関する補償
 不服申立て
 生活保護の相談・開始・適用に関する厚生労働省通知
 生活保護の内容で知っておきたいこと
 生活保護手帳と別冊問答集
 民生委員
 緊急小口資金(緊急援護資金)
 「初診日」の証明に有効なものは?
 年金保険制度の変更一覧
 特別児童扶養手当等の給付(生活保護受給家庭の場合)
 産科医療補償制度
 「直接支払い制度」と「受取代理制度」の違い

ミニ事例
 アルコール依存から回復したAさん-セルフヘルプのもつちから
 脳梗塞治療後に退院したBさん

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療養者への相談支援に活用できる1冊
書評者: 眞崎 直子 (日本赤十字広島看護大教授・地域看護学)
 地域で療養者や家族から相談を受けていたとき,この書籍に出会っていたらもっと納得のいくケアができたのではないか。本書を初めて手にしたときの筆者の偽らざる思いである。

 わが国における保健・医療・福祉サービスは,さまざまな法律や制度から成り立っている。その制度を療養者や家族にわかりやすく説明し伝えることができれば,療養者のセルフケア能力を引き出すことができるだろう。本書は,そのようなときに専門職の力になる。

 表紙を開け,目に入ってくるのは,ライフステージから見た社会保障の図である。横軸は赤ちゃんから高齢者までのライフステージ別,縦軸は保健・医療から福祉やしごとなどカテゴリ別に分類された一覧表になっており,見るべきページが明確に示されている。

 そして,そのページをたどっていくと,難解な制度が図解されており,読む人に優しい。さらに,例えばいわゆる難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)については,2015(平成27)年より110の指定難病が制度の対象となり,今夏をめどにさらに約190疾患が医療費助成の対象となる予定であることも書かれていて,驚くほどリアルタイムの情報が得られるのである。

 高齢者サービスについては,各施設の選び方の例が紹介されており,自立度と経済的負担に関するマトリクスの図を療養者や家族にそのまま示して解説することも可能である。

 加えて,要所でミニ事例が掲載されている。相談支援では,個々の事例を把握し,その人に必要な社会資源を提供することが重要であるため,具体的な事例から得られるヒントは貴重である。豊富な事例の中に,私がかつて出会った相談者の姿を重ね,はっとすることもあった。

 さらに,「2015年度版」には,現在,わが国の医療と介護の課題である超高齢社会に対応した地域包括ケアに関する記述を加えている。事例を交えながら,地域特性に応じた地域包括ケアを住民主体で構築することの重要性が述べられており,私たちが今何をすべきかを示唆している。

 筆者は講義で学生に「困った時はこの本を開いてごらん。そこにヒントが隠れている。そして,この本を使いながら,療養者や家族と話し合うと良い」と伝えている。看護では,答えが一つではない。その人に合った医療やケアを提供するために,その人たちが相談できる伴走者となってほしい。伴走者として,行政の施策や制度をわかりやすく療養者に伝えるのは,専門職の大きな役割である。療養者や家族が治療や生活の選択を迫られたとき,インフォームドチョイスを支援するのである。

 本書は,地域の絆を強化し,医療・保健・福祉制度を見える化(可視化)し,病や障害があっても一人一人ができるかぎりその人らしく住みなれた地域で暮らせることを支援する専門職を応援してくれる心強い伴侶である。
書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 宇野 さつき (医療法人社団新国内科医院看護師長)
◆「困難事例」があたりまえに

 「どうしてウチの医院にはフツー の終末期の人が来ないんですか?」と若手スタッフが聞いてきたことがある。思わず「フツー の終末期の人?」と聞き返してしまった。

 たしかに、当院に訪問診療・訪問看護を依頼してくるのは、疾患以外にもさまざまな課題を抱えている方々が多い。独居や日中独居、がんと認知症の併発、介護者が障害をもっている、年金暮らしで経済的に苦しい人、介護保険を利用できず医療費3割負担の若いがん患者など……。

 しかし、これは当院に限った特徴ではなく、おそらくどこの地域でも増えているのではないだろうか。このようなケースは、これまでのように「困難事例」として扱うのではなく、「ごくあたりまえのよくある事例」として関わらなければならなくなってきているように感じる。

◆「支える人」を支えてくれるガイドブック

 どのような疾患や障害があっても、またヒト・モノ・カネなど生活上の課題を抱えていても、患者・家族1人ひとりを尊重し、住み慣れた地域で、その人らしく過ごしていけるように支えていくためには、さまざまな支援が必要となる。

 国や都道府県、市町村などでは、支えるためのしくみがいろいろとつくられているが、実際のところ、条件や手続きが複雑な制度・サービスも多い。加えて、社会情勢の変化に応じて次々と追加・改定されていくため、現場でも十分に使いこなせていない不安がある。

 特に在宅領域では医療ソーシャルワーカーが少なく(当院も不在)、「こんなときどうしたらよいか?」「ほかに利用できる制度はないか?」と聞きたくても、なかなかすぐに相談できる場所や人がいないことが多い。そんなときにこの『医療福祉総合ガイドブック』が味方になってくれる。

 現場で関わる私たち、医療職・介護職がどれだけきめ細かくニーズに気づき、支援につなげていけるかが、患者・家族のQOLに大きく影響する。もちろん、現状の支援システムにも課題があることは否めず、すべてのニーズに応えるのは難しいが、われわれが「知らなかった」「活用しなかった」ために、患者・家族が、得られるはずの支援につながらず、不利益を被ってはならない。ましてやサポートする側のわれわれが、無理をすることになってもいけないのだ。

 今ある制度を活かし、制度が現状のニーズに追いついていないところを社会に伝えていくことは、現場で働く者の大切な役割でもあると思う。そのような臨床現場を「支える人」を支えてくれるのが本書であり、きっとあなたの心強いパートナーになってくれるだろう。

(『訪問看護と介護』2015年7月号掲載)

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