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組織病理カラーアトラス 第2版

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医学生・研修医にとって必要となる組織病理写真を1冊に凝縮。医学生には国試に向けた知識の整理、初期研修医には研修義務化で必須となったCPCに役立つ。カラーアトラスとして写真を大きくレイアウトし、その解説はポイントを絞った箇条書を主体としている。シェーマも適宜取り入れ、病態の理解はもちろん、組織写真のイメージ(顔つき)が一目でわかるよう工夫。改訂版では最新の組織分類(WHO、各学会など)に対応した。
坂本 穆彦 / 北川 昌伸 / 菅野 純
発行 2015年10月判型:B5頁:416
ISBN 978-4-260-02143-2
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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第2版 序

 本書のねらいは,医学を学ぶ学生が病理学を円滑に学習するうえでの指針を示すことにある.
 今日の医学教育は,基礎・臨床統合カリキュラムを軸に展開されている.その中で病理学として学ぶ事項は病理学講義および実習のほかに,臓器別・疾患別授業の中でも取りあげられている.とりわけ後者では,病理学各論部分がそれぞれのカリキュラムに分かれて教授される.そのため,各論を総体としてまとめて理解する機会を得ることは,必ずしも容易ではないのが現状であろう.
 本書では病理学を総論と各論に分け,双方をたえず行き来しながら個々の病態・疾患の理解を深めていけるように構成されている.
 豊富なカラー写真による組織所見の提示は,疾患の本態を学ぶうえで有用と思われる.また,これらの写真は組織標本実習の指針としても役立てていただきたい.
 本書は2008年に上梓された初版の改訂版である.病理学に関する内容の根幹に大きな変化はないが,いくつかの用語や概念には変更の必要が生じてきた.
 その一例が,腫瘍の良・悪性についての考え方の移り変わりである.腫瘍は従来,良性・境界病変・悪性と3分類されており,初版もその基準にそって記述された.しかし,近年,いくつかの領域で境界病変と早期の癌を一括して扱う動きが具体化した.子宮頸部で始まったこの流れは婦人科領域のみならず食道にも及び,さらに他臓器にも広がろうとしている.
 このような現状のもとに,本書では基本は変えず,新しい動向はこれを採用して再構成した.本書は,医学生の学習のガイド役としてはもとより,医師にとっても生涯教育の伴侶としてもお使いいただきたいと願っている.
 末筆ながら,本書の改訂にあたっては医学書院の大野智志氏,黒田清氏にはひとかたならぬ御尽力をいただいた.心より御礼申しあげる次第である.

 2015年10月
 執筆者を代表して 坂本穆彦

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*(   )内の数字は項目数です。クリックで詳細を表示します。
総論 (72)
病理学と病理診断 (3)
代謝障害 (11)
循環障害 (9)
炎症 (24)
腫瘍 (24)
先天異常 (1)

各論 (241)
循環器 (15)
血液・造血器・リンパ節 (25)
呼吸器 (20)
消化管 (30)
肝・胆・膵 (22)
腎・泌尿器 (18)
男性生殖器 (4)
女性生殖器 (30)
乳腺 (11)
内分泌 (15)
脳・神経 (15)
皮膚 (12)
骨・軟部 (24)
 
索引

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病理学教育への情熱が結集された優れたカラーアトラス
書評者: 伊東 恭子 (京府医大教授・分子病態病理学)
 病理学(pathology)とは,(1)病気の原因を探り,(2)生体内に生じる病態の実情を究明し,(3)そのことを通じて病気の診断,さらに治療・予防に寄与することを目的とする学問分野である(p.2)。病理学の壮大なミッションが三か条にして冒頭に提示されている。

 さて,Rudolf Virchowによって提唱された細胞病理学(Cellular Pathologie)の概念は,近代医学の中で病理学の地歩を築き上げる上で著しい貢献をしたことは言を俟たないが,今や遺伝医学・分子生物学の長足の進歩を反映して,分子の言葉で病気が語られる新しい時代を迎えている。しかしながら,今日にあっても病理学の基本は,光学顕微鏡レベルでの形態学に基づいた病変の理解や診断にある。

 本書においては,病理学の総論を構成する,代謝障害,循環障害,炎症,腫瘍,先天異常という概念をまず,顕微鏡写真や模式図を駆使して解説した上で,循環器から始まり骨・軟部に至る各臓器・系の疾患を取り上げ,個々具体的に詳説するという構成となっている。序において著者が述べられているように,まさに「病理学を総論と各論に分け,双方をたえず行き来しながら個々の病態・疾患の理解を深めていけるように構成されている」。これは医学を学ぶ学生にとって,病理学の理解を円滑にする工夫として必ずや歓迎されるに違いない。従来類書では,ともすれば個々の疾患の組織像を提示することに力点が置かれ,病理学の大きな体系の中での個々の疾患の位置付けについてはさほど配慮されていなかったように思われる。それに比し本書は常に俯瞰的視点を失うことなく,病理学を学べるように気配りがなされていると言ってよい。

 本書を通読すると,随所に読者の理解を助けたり,さらなる関心・興味を高めたりする工夫がなされていることに気付かされる。読者の理解を助ける工夫としては,模式図や簡潔な構成から成る表に加え,小さなサイズの写真中で囲み領域を示したすぐ横に,それと全く同一の視野を大きいサイズの写真で提示するというものを挙げることができる。初学者に限らず読者が形態学を理解する際に遭遇する困難の一つが,説明文中に記載されている変化(病変)が顕微鏡写真中の一体どこに対応するのかが把握できないことにある。その意味でこのような工夫は図中の矢印と同様,読者の理解に資することは間違いない。また,各論の中には「基本構造のチェック」という項目が設けられていて,これは既に生理学や組織学で読者が学習した内容を,しばし立ち止まって復習する上で効果を発揮すると考える。正常構造の理解なくして病理組織学的変化の正確な理解はあり得ないからである。読者の関心・興味を高める工夫としては,「MEMO」や「*」として,最近のトピック(例えば放射線誘発小児甲状腺癌)や英語の語義への言及がなされていることを挙げることができる。また,各論中の各疾患ごとの説明文には「病理診断のポイント」が箇条書きで整理されていて,医学生のみならず,病理医をめざす人々にとってもその知識を整理する上で有用と思われる。

 以上のように本書は,著者の長年にわたる病理学教育への情熱が結集された,優れたカラーアトラスとして,医学生のみならず,ヒトの病理組織学を学びたいという志を持つ方々に強く推薦する。
医学生から初期研修医まで使用できるアトラス
書評者: 三上 哲夫 (東邦大教授・病理学)
 2008年に初版が発行された,『組織病理カラーアトラス』の第2版が刊行された。初版の序に書かれているように,本書は基本的には医学生を対象に編集されたものである。本書の旧版は病理組織実習の携行書として多くの医学生に使われていたが,今回の版もその基本的なところは継承しており,総論・各論に分けて,その両方を行き来しながら病変と疾患の概念の理解を深めていけるように配慮している。扱っている項目は基本的に変わりないが,この7年間で変化した用語や概念に対応しており,いくつかの点で明らかな違いが指摘できる。例えば,子宮頸部の重層扁平上皮の腫瘍性病変は,旧版では「異形成-上皮内癌-微小浸潤癌-浸潤性扁平上皮癌」と項目立てされているが,新版では「子宮頸部上皮内腫瘍-微小浸潤癌-浸潤性扁平上皮癌」となっており,cervical intraepithelial neoplasia(CIN)の用語,概念を前面に出した記載となっている。同様のことは膀胱の尿路上皮性腫瘍や,甲状腺低分化癌などの記載にも窺える。また,医学生にとって理解しにくいと思われる非上皮性腫瘍について,旧版では総論の部分でさまざまな腫瘍を紹介していたが,新版では総論での記載を最小限とし個々の腫瘍の紹介は各論に移している。この新版の配置のほうが医学生には使いやすいと思う。

 実際にページをめくってみると,総論はさらに代謝障害,循環障害,炎症,腫瘍などの章に分けられており,そのうち,例えば循環障害の章では,出血,浮腫,血栓などの項目が基本的に1項目1ページで扱われている(重要な項目は数ページに及ぶところもある)。各項目ごとに冒頭に「概念」として簡潔な説明がまとめられ,その後に項目の説明文が続き,代表的な1~数枚の組織像が簡単な説明文とともに提示される。各論部分も基本構造は同様で,こちらは臓器ごとの章となっているが,各項目では冒頭に「疾患概念」としてその疾患についてまず理解しなければいけないことがまとめてあり,続いて「病理診断のポイント」として診断上の重要所見が説明され,さらに写真,という配置になっている。各論部分で工夫してあるのは,各章の最初に「基本構造のチェック」という項目が置かれ,簡単な模式図とともに臓器の正常構造の説明がなされている点である。医学生は以前に学習したマクロ解剖学と組織学の知識を忘れていることが多いため,このページは自己学習に有効であろう。組織写真は旧版同様見やすく,大きく配置されており理解しやすい。

 各論が病理診断の対象となる病変を主体に構築されていることもあってか,全身病における病変の紹介がやや少ない印象がある。例えばアミロイドーシスは「タンパク変性」のページでアミロイド変性としてわずかに扱われているのみである。また,1型糖尿病が各論「内分泌」の章で1ページ扱われているのに対して,2型糖尿病は扱われていない。糖尿病性腎硬化症を「腎・泌尿器」の章で扱っているので,2型糖尿病におけるランゲルハンス島の変性所見も載せてほしいと思うのだが,総論・各論のどこに入れるかが悩ましい。次の改訂の時にはこれらもお願いしたい。

 全体として見ると,医学生にぜひ病理組織像を含めて理解してもらいたい病変は網羅されており,卒後も初期研修医ぐらいまで使用できるアトラスとなっている。後期研修医以降での専門領域での病理学の勉強にはそれぞれの専門書が必要となるが,本書はそれまでの基本を学ぶためのアトラスと位置付けることができよう。

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