高齢期作業療法学 第3版

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主な目次構成は前版を踏襲しつつ、近年重要視されてきている認知症や介護予防、初期集中支援などの内容が重点的に記載された改訂となっている。また実践事例の章では、実際の高齢者への作業療法を具体的にイメージできるよう、ストーリーに沿って様々なケースが紹介されている。今版より健康高齢者や要支援者のケースなどが新たに加わり、豊富な事例を学習することができる。
*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。

●読者の皆様へ 本書内のシリーズ共通要素〔一般教育目標(GIO)、行動目標(SBO)、修得チェックリスト〕を更新いたしました。本書とあわせてご利用ください。
PDFPDF [B5・6頁 652KB]

シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 松房 利憲 / 新井 健五
編集協力 勝山 しおり
発行 2016年01月判型:B5頁:264
ISBN 978-4-260-02440-2
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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第3版 序

 2004年6月に初版を発刊してから,11年余が経った.この間,高齢者をめぐる環境は大きく変わった.初版当時のわが国の高齢化率は約20%程度であったものが,今や25%以上というとてつもない超高齢社会になった.高齢化率は今後も上昇を続け,2060年には39.9%(約2.5人に1人が高齢者)にも達すると見込まれていることから,高齢者および高齢者をかかえる人々に対する支援はますます重要になる.

 長い人生を歩んできた高齢者が,これからも人生を豊かに過ごすために作業療法が援助できることは多い.健康な人は,できるだけ健康状態を保ち,はからずも障害をかかえた人は,障害の影響を最小限に抑えて,意義ある人生を送れることが高齢期のあるべき姿と考える.その意味からも,本書では障害をもった高齢者のみでなく,健康高齢者にも焦点を当ててある.
 人生は“死”で完結する.個人の人生を肯定できることが,その人にとって最高の人生であろう.人が自分の人生を肯定できるように,言い換えれば,人の「よき生き方」を援助することができるのが作業療法である.厚生労働省は「人が住み慣れた地域で自立した生活を送れる」ことを目指して「地域包括ケアシステム」という概念を打ち出した.日本作業療法士協会も,そのシステムに貢献できる作業療法に重点的に取り組んでいる.これからの高齢期作業療法は,疾患や障害へのアプローチはもちろんのこと,障害予防を重要視しなければならない.
 人が長生きするようになった現在,認知症は避けては通れない領域である.認知症に関する情報は以前に比べて飛躍的に多くなり,社会的認知も進んできたが,同時に,増加する認知症高齢者およびその家族を,社会でどう支えるかという問題もクローズアップされている.ここに認知症を大きな節として取り上げている理由がある.
 初版の序で述べたように,この巻の編集にあたっては,「高齢者は若中年者をそのまま延長したものではなく,また,高齢者という1つのグループにまとめられるものではない」ところに重点をおいてある.また,巻末には短期間で変化すると予想される制度および高齢者が歩んできた時代の出来事,その頃の流行歌など,参考となる事柄をまとめてあるので参考にしていただければ幸いである.
 「標準」というこのシリーズ全体のコンセプトから,できるだけ標準的な内容にふれたつもりであるが,高齢者に対する作業療法はまだ確立されたものではない.社会制度が大きく変化するなか,高齢者に対する作業療法も,今後形を変えていくものと思われる.

 本書の対象が,主として作業療法士を目指す学生であるという観点から,初版からできるだけわかりやすく編集するという姿勢を貫いてきたつもりである.誰もが未体験の超高齢社会を迎えて,制度の改革も著しい.たえず新しい情報を収集するよう努力してほしい.
 本書が,作業療法に携わる人の勉学に役立ち,さらにわが国の高齢期作業療法の発展に役立つことを願って止まない.

 2015年10月 執筆者を代表して
 松房 利憲
 新井 健五
 勝山 しおり

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第1章 高齢期作業療法学の基礎
 I.高齢期作業療法学を学ぶ皆さんへ
   A.高齢者と作業療法
   B.高齢期作業療法学で学ぶ事柄とその学び方
 II.高齢社会
   A.高齢化の進展
   B.社会施策の変遷
 III.高齢期の課題
   A.高齢期への適応
   B.高齢期のQOL
   C.高齢期の社会活動
   D.高齢期の家族関係
   E.現代社会と高齢者
 IV.社会制度
   A.わが国の高齢者福祉対策
   B.高齢者を守る法律
   C.制度の変化
 V.高齢期の作業療法
   A.高齢期障害と障害受容
   B.一般高齢者の状況
   C.高齢期作業療法の役割と機能
   D.高齢期作業療法の目的
 VI.高齢期の一般的特徴
   A.老化とは
   B.高齢期の生理的・身体的特徴
   C.老年症候群
   D.高齢期の精神的・心理的特徴
 VII.高齢期に多い疾患
   A.循環器疾患
   B.呼吸器疾患
   C.神経疾患
   D.運動器(骨・骨格筋)疾患
   E.内分泌代謝疾患
   F.精神疾患
   G.皮膚疾患
   H.眼疾患
 VIII.認知症
   A.認知症とは
   B.認知症の分類と原因
   C.認知症の症状
   D.認知症をきたす代表疾患

第2章 高齢期作業療法の実践
 I.高齢期作業療法の実践過程
   A.作業療法士が理解しておくべき人権と尊厳
   B.高齢者の生活の見方
   C.高齢期作業療法の実践過程
   D.おわりに
 II.病期に応じた治療・援助内容の違い
   A.高齢期の対象者がたどる病期の流れ
   B.急性期
   C.回復期
   D.生活期
   E.終末期
 III.実施場所に応じた治療・援助内容の違い
   A.一般病院
   B.療養病床
   C.認知症病棟
   D.介護老人保健施設
   E.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
   F.在宅
 IV.一般高齢者の作業療法
   A.健康高齢者
   B.虚弱高齢者
   C.身体障害をもった高齢者
   D.寝たきり高齢者
   E.精神障害をもった高齢者
 V.介護予防の作業療法
   A.介護予防とは
   B.超高齢社会と地域包括ケアシステム
   C.介護予防における作業療法士の役割
   D.介護保険制度における介護予防の位置づけとその変遷
   E.今までの介護予防に学ぶ
   F.これからの介護予防事業について
 VI.認知症高齢者の作業療法
   A.認知症に対する作業療法の位置づけ
   B.作業療法における評価の目的とアセスメントツール
   C.疾患別の作業療法の視点
   D.支援場所による作業療法の実践
   E.介護家族への支援
   F.地域資源の活用

第3章 高齢期作業療法の実践事例
 I.健康高齢者のケース
   A.不活発な生活から活動的な生活へ
   B.作業療法初期評価
   C.作業療法士としてのかかわり,支援
   D.考察・まとめ
 II.要支援者のケース-介護支援専門員の立場から
   A.緊張と胸躍る初回面接
   B.作業療法評価
   C.治療・指導・援助
   D.考察・まとめ
 III.要介護者のケース-医療から在宅まで
  1.回復期リハビリテーション病棟
   A.介護老人保健施設へ送り出し
   B.作業療法評価・実施計画
   C.治療・指導・援助
   D.考察
  2.介護老人保健施設
   A.医療との連携
   B.作業療法評価と計画の立案
   C.治療・指導・援助
   D.考察
  3.通所リハビリテーション
   A.集団での活動から役割獲得へ
   B.作業療法評価と計画の立案
   C.治療・指導・援助
   D.考察
  4.訪問リハビリテーション
   A.在宅から地域へ
   B.作業療法評価と計画の立案
   C.治療・指導・援助
   D.考察
  5.まとめ
 IV.軽度の認知症高齢者のケース
   A.作業療法の視点の強み
   B.作業療法評価
   C.治療・指導・援助
   D.考察・まとめ
 V.中等度の認知症高齢者のケース
   A.「その人らしさ」を引き出すアプローチ
   B.作業療法評価・実施計画
   C.治療・指導・援助
   D.考察・まとめ
 VI.重度の認知症から寝たきりに移行したケース
   A.作業療法士(作業療法)の力の見せどころ
   B.作業療法評価・実施計画
   C.治療・指導・援助
   D.考察・まとめ
 VII.終末期においてアクティビティが影響を与えたケース
   A.はじめに
   B.作業療法評価
   C.治療・指導・援助
   D.考察・まとめ
 高齢期作業療法学の発展に向けて
   A.高齢期作業療法をとりまく現状から
   B.介護予防
   C.在宅復帰・在宅生活支援
   D.認知症高齢者に対するリハビリテーション
   E.看取り・終末期への取り組み
   F.マネジャーとしての作業療法士
   G.おわりに
 さらに深く学ぶために

巻末資料
   資料1 法制度関連資料
   資料2 年表

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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