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精神科の薬がわかる本 第3版

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好評の定番書、3年ぶりの改訂。精神科の薬を取り巻く環境の変化や新薬を、著者の臨床実践を基に追加。今改訂の目玉は、(1)処方薬依存として社会問題にもなっているベンゾジアゼピン系薬剤の依存への具体的対応策、(2)10年ぶりに出た新しい認知症治療薬、(3)アルコール依存症に対するまったく新しい作用機序の薬。それぞれの薬の特徴や、患者さんの生活を踏まえた副作用への効果的な対処法をわかりやすく紹介する。
姫井 昭男
発行 2014年12月判型:A5頁:236
ISBN 978-4-260-02108-1
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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第3版によせて
情報氾濫の時代だからこそ、正しい情報を伝えたい


 脳科学研究の発展は、「精神活動」という捉えどころのない存在を、機能面では捉えられるものへと変化させました。その恩恵を受けて、精神科治療薬の開発は急激に進んでいます。
 『精神科の薬がわかる本』の基礎となった雑誌『精神看護』での連載を始めた頃から数えると、この第3版で10年となり、この間に多くの新しい精神科治療薬が登場し、精神科医療の事情も大きく変わりました。

 医学においては分野を問わず、新薬への期待は大きいものです。ただ、情報氾濫の時代には、新薬の情報は誇張され、本来の機能以上の期待をもたれてしまいがちです。そして人間は期待し過ぎると、その効果が科学的には100%発揮された状態であったとしても「期待外れだ」と感じます。メンタル障害の症状の改善には、そのような「期待外れ」の心理が出現すると、治療全体に大きく影響するのです。
 とくに、長期にわたって治療を継続している方にとっては、発症前の本来の自分がどのような状態であったかを測る物差しを失ってしまっていることが多いため、治療者からすれば改善の兆しを認めていても、治療を受ける当事者自身が満足を感じられないというケースが近年増えてきています。

 長期間の治療でも症状を改善させることのできないケースでは、治療者側の責任がやはり一番大きいと考えます。ただし、「治療を受ける側の人も、氾濫する薬剤の情報のなかから正しいものを習得し、効果のイメージを正しく把握している」ということを期待したいのです。
 精神科の薬物療法では、正しい知識と効果のイメージを持つことが治療者・患者ともに重要なのです。
 そのため、今回の改訂においても、可能な限り新しい薬剤の正しい情報を記載することに努めました。

 本書は、これまでほんとうにたくさんの読者の方々に支えられて改訂してきました。ご意見を寄せていただいたなかには、最新の薬理学的知見や処方の応用実践を記載してほしいという内容が多数ありました。改良点のご指摘をいただくほど読み込んでいただき、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。ただ、そのリクエストのすべてにお応えすることはできません。最新の医学研究論文の知見で、今後標準的な知識となるかもしれないと予測が付く内容であっても、筆者が臨床経験で確かめられなかったものについては、あえて記載していません。後々の改訂で取り下げになるような内容があることで、混乱や誤解を招くのを避けるためです。

 現時点での本書の存在目的は、治療を受けられている当事者、支援者、コメディカル、精神科を専門としない医師、精神医療に関わる勉強をされている方々、つまり「精神科の薬」に対して情報を求めている方々へ、基本的な正しい情報を伝えることだと思っています。

 本書が、これまで以上に、読んでよかったと言われることを願っています。

 2014年11月
 姫井昭男

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 第3版によせて

1 「抗うつ薬」がわかる。
 ◎抗うつ薬へのQ&A

2 「睡眠薬」と「抗不安薬」がわかる。
 1 マイナートランキライザーとは
 2 「睡眠薬」がわかる
 3 「抗不安薬」がわかる
 ◎睡眠薬へのQ&A
 Lecture ベンゾジアゼピン系薬剤の安全なやめ方

3 「抗精神病薬」がわかる。
 1 統合失調症とは
 2 定型抗精神病薬の特徴
 3 非定型抗精神病薬の特徴
 4 重大な副作用
 5 剤形による特徴
 ◎抗精神病薬へのQ&A
 Lecture 単剤化の方法

4 「抗てんかん薬」がわかる。
 ◎抗てんかん薬へのQ&A

5 「老年期に使う薬」がわかる。
 1 薬を処方する前に気をつけておきたいこと
 2 認知症(アルツハイマー型認知症)の治療薬
 3 パーキンソン病の治療薬
 4 うつ病・抑うつ状態の治療薬
 5 頭部外傷の後遺症の治療薬
 6 夜間せん妄の治療薬
 7 代謝性意識障害への対処
 ◎老年期に使う薬へのQ&A

6 「その他の精神科の薬」がわかる。
 1 気分安定薬
 2 抗躁薬
 3 アルコール依存症の薬物療法
 4 悪性症候群の治療薬
 5 発達障害をもつ人への薬物療法
 ◎その他の精神科の薬へのQ&A

 索引
 あとがき

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こんなことをズバリと教えてくれる精神科医はいなかった
書評者: 宮崎 仁 (宮崎医院院長)
 世の中には,「精神科の薬は,うさんくさい」と思っている人が多い。その中には,患者だけではなく,精神科を専門としない医師や対人援助職もたくさん含まれている。

 一方,精神科を専門としない医師や対人援助職が,精神科の薬のことを無視して,自分の仕事を進めることはできない。プライマリケアの外来を受診する患者の3~4割は,何らかの精神疾患や精神科的問題を持っている。また,統合失調症のために精神科で薬物治療を受けている患者が,風邪をひいて来ることもあるし,介護を要する状態になることだってある。「精神科の薬は,うさんくさい」と敬遠してはいられないのが,リアルな現場の状況なのである。

 そこで,一念発起して,精神科の薬についてまじめに勉強しようと,精神薬理学のテキストと格闘してみても,次々と登場するレセプターやら神経回路やらに翻弄され,頭の中は,ますますモヤモヤして,途方に暮れることになる。

 そんなときこそ,本書『精神科の薬がわかる本』の出番だ。

 冒頭に置かれた「『抗うつ薬』がわかる」という章のページを開くと,いきなり「原因は未解明。実は対症療法なのです」という見出しの文字が目に飛びこんで来る。そうか,うつ病の薬物療法は「対症療法」だったのか。こんなことを,ズバリと教えてくれる精神科医はいなかった。これだけで,ずいぶんとスッキリする。

 「ざっと知りたい」という初学者からのわがままな要望に応えるのが,初版以来の本書の優れたコンセプトであるが,精神科診療に必要不可欠な薬剤が,新薬も含めて厳選されており,そのエッセンスを過不足なく伝授してくれる。今回の改訂では,「処方薬依存への具体的対応策」といった,いわば「精神科医療の暗闇」の部分に対する果敢なアプローチが加えられているところも見逃せない。

 本書の解説は,単なるエビデンスの羅列ではなく,現場での苦労や困り事を熟知していなければ書くことのできない「血の通った」文章である。例えば,SSRIとSNRIの使い分けを論ずるところで,「取り乱しやすさや余裕のなさがみられるときにはSSRIを,やる気のなさや億劫感が認められるときにはSNRIを,といった具合に選択していきます」と書かれているが,これが臨床家の「実感」というものだ。そして,このような「実感」の中にこそ,私たち初学者が本当に知りたい処方のこつや心得が光り輝いている。

 「精神科の薬物療法では,正しい知識と効果のイメージを持つことが治療者・患者ともに重要なのです」という著者からのメッセージを念頭に置きながら本書を通読すれば,「精神科の薬は,うさんくさい」というスティグマ(偏見)から解放され,処方する側と処方される側の双方が幸せになることができる。

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