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Dr.宮城×Dr.藤田
エキスパートに学ぶ 呼吸器診療のアートとサイエンス

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収載の20ケースは、呼吸器内科医がよく日常遭遇し頭を悩ませる症例。各ケースとも鑑別診断から治療までが網羅されている。読者は、カリスマ呼吸器内科医Dr.宮城とDr.藤田の、臨床のアートとサイエンスの神髄にふれられるとともに、クリニカルパールあふれる珠玉のメッセージを直に得られるだろう。日常の診断能力がさらに磨かれる1冊。
宮城 征四郎 / 藤田 次郎
発行 2015年04月判型:B5頁:288
ISBN 978-4-260-02099-2
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
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  • 序文
  • 目次
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 沖縄県臨床呼吸器同好会の症例検討会の内容を収録した呼吸器専門医向けの単行本がこのたび完成した.
 昨年発行の『Dr.宮城×Dr.藤田 ジェネラリストのための呼吸器診療勘どころ』が研修医ならびに一般医(ジェネラリスト)を対象とした書物であったのに対し,本書は主に呼吸器疾患を取り扱う専門医を対象として刊行されたものである.
 毎年8~9回程行われる沖縄県臨床呼吸器同好会での症例検討会の内容を,琉球大学医学部第一内科の藤田次郎教授が自ら録音機を持ち込んで収録し,その後,発表者に直接接触し色々な角度からこれを補い論文化して,総合診療誌『JIM』(現在は『総合診療』)に掲載してきた.このたび,医学書院の編集部の方々のご厚意の下に症例を呼吸器専門医向けに再選択し,加筆,修正して単行本として上梓したものである.
 沖縄県臨床呼吸器同好会は,その前半が症例検討会であり,参加者全員の討議による臨床診断を目的としており,長幼の序や社会的身分などは全く無関係の,自由,闊達な討論の場である.
 症例を紹介する担当者は参加者全員にわかりやすく,かつ,詳細に提示することが義務づけられており,そこには一定のルールがあって,その順序と参加者の心得は重要であり,遵守すべきものである.
 その内容の詳細については,冒頭に置かれた「症例検討会におけるプレゼンテーションの順序と参加者の心得」を筆者が加筆した.また,胸部疾患の診断上,胸部単純X線ならびに胸部CT所見の提示は必須であり,総合診断の中でもその解釈は討論の核となるパートである.「呼吸器疾患における画像所見の解釈の仕方」を藤田次郎教授が詳細に書き加えた.
 藤田次郎教授の独特の胸部画像の読み方,解釈の仕方は圧巻であり,常にこの検討会のレベルを押し上げる原動力となっている.提示される症例の臨床所見と画像との関係,呼吸器の解剖学的な基礎知識と画像との密接な関連などを踏まえた診断学上のノウハウが,ここには克明に記されている.
 願わくば,この本が呼吸器専門医たちにとってもいくばくかなりとも役立つものであり,読者諸賢のアドバイスによって,よりよい形に修正され,より読みやすい刊行物になって欲しいものである.
 この本の出版に当たって多大なご協力とご労苦を賜りました医学書院の野中良美さんと佐藤博さんに深甚なる謝意を表したいと思う.

 2015年2月

 群星沖縄臨床研修センター
 宮城 征四郎

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症例検討会におけるプレゼンテーションの順序と参加者の心得
呼吸器疾患における画像所見の解釈の仕方

CASE 01 The sound of silence
 慢性骨髄性白血病治療後に胸部異常影が出現した63歳男性

CASE 02 若年者の気胸のエピソードから考えられる疾患は?
 気胸の発症から胸部異常影が発見された18歳男性

CASE 03 空洞陰影から疾患を絞り込む
 空洞を伴う腫瘤陰影を呈した56歳女性

CASE 04 「血痰」および「呼吸状態の悪化」で何を考えるか?
 血痰を主訴に受診した21歳女性

CASE 05 多彩な全身症状を呈し,空洞を伴う胸部異常陰影で何を考えるか?
 下腿浮腫,両膝関節痛,食欲低下,体重減少など多彩な症状と
 胸部異常影を指摘された52歳男性

CASE 06 短時間でSpO2が大きく変動したのはなぜか?
 9日前からの発熱,低酸素血症にて救急外来を紹介受診した89歳女性

CASE 07 頭部の腫瘤影と肺の結節性陰影をどう関連付けるか?
 頭部に皮膚疾患を有し,呼吸困難を主訴に来院した85歳女性

CASE 08 呼吸性に変化する胸痛から,どのような疾患を考えるか?
 胸痛にて救急搬送され多発結節性陰影を指摘された62歳男性

CASE 09 肺癌の経過中に認められた呼吸不全の病態は?
 肺腺癌治療中にびまん性陰影を呈した74歳女性

CASE 10 免疫抑制患者の気道病変病態を見極める
 悪性リンパ腫の治療中に膿性痰の増加を繰り返す55歳男性

CASE 11 胸部画像所見の広範な陰影と聴診所見の乏しさから,何が導き出されるか?
 亜急性の発症を示し,乾性咳嗽を伴う労作時呼吸困難を呈した39歳女性

CASE 12 高齢者の「突然の呼吸困難」にどうアプローチするか?
 慢性閉塞性肺疾患を基礎疾患に有し,突然の呼吸困難により来院した83歳男性

CASE 13 慢性閉塞性肺疾患に合併する呼吸器感染症の起炎菌は?
 左前胸部痛により来院した76歳男性

CASE 14 全身性疾患の一部としての呼吸器症状から,病態を紐解く
 発熱,咳嗽,膿性痰,および労作時息切れを主訴に来院した78歳女性

CASE 15 空洞性病変が急速に悪化した要因は何か?
 肺非結核性抗酸菌症の経過中に急速に増大した空洞性病変を呈した60歳男性

CASE 16 画像所見にてリンパ管を病変の主座とする疾患の鑑別診断は?
 発熱,および胸部異常陰影を呈した29歳女性

CASE 17 咳の持続期間と問診から疾患名を見極める
 長引く咳と労作時呼吸困難を呈した61歳女性

CASE 18 空洞を伴う結節性病変の鑑別診断は?
 検診で胸部異常陰影を指摘された自覚症状のない55歳女性

CASE 19 「白と黒」のコントラストを意識した画像所見の解釈
 1週間前からの発熱,および呼吸困難を主訴とした82歳女性

CASE 20 強皮症に合併した肺高血圧の病態を紐解く
 咳嗽,および労作時呼吸困難にて来院した69歳女性

あとがき
索引

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アートとサイエンスあふれる沖縄呼吸器内科ケースカンファレンス
書評者: 石田 直 (倉敷中央病院呼吸器内科主任部長)
 臨床医学は,知識や文献的考察に基づくサイエンスの部分と,経験によるひらめき等のアートの部分を有しているが,両者をバランスよく融合した成書を見つけることは,なかなか困難である。そうした中で,本書に巡り合ったことは大変喜ばしいことであった。本書は,本邦における呼吸器病学の泰斗でおられる宮城征四郎先生と,現在の呼吸器内科のリーダーのお一人である琉球大学の藤田次郎教授が中心となって開催されている,沖縄県臨床呼吸器同好会での症例検討会の内容をまとめたものである。ここでは,個々の症例が詳細に検討され,目の前で見ているような臨場感が醸し出されている。問診および身体所見を十分に吟味して鑑別を行っていくという宮城先生のスタイルが広く浸透してレベルの高いカンファレンスとなっており,ややもすれば検査所見と画像所見に引っ張られがちな自らの臨床姿勢を反省させられる。

 症例検討における,宮城先生の的確なご発言はまさしく「天の声」であり,それぞれの症例に,藤田教授の卓越した解説と考察が付記されている。また,巻頭にある,宮城先生の「症例検討会におけるプレゼンテーションの順序と参加者の心得」(p. 1)および藤田教授の「呼吸器疾患における画像所見の解釈の仕方」(p. 11)の章は,もう一度基本的な理解を促すものであり,研修医からベテランのドクターまで,ぜひ一読していただきたい内容となっている。症例はいずれも,呼吸器内科医が日常的に遭遇する可能性のある疾患でありながら,大変興味深い検討対象である。

 宮城先生のお人柄が伝わるご発言と藤田教授の見事な構成により,面白く読みやすい内容となっており,読み始めて一晩で読破してしまった。次は,自分がカンファレンスの参加者となった気持ちで,1例ずつ時間をかけて読み直したいと思っている。ぜひ,多くの先生方に本書を読んでいただいて,同じ気持ちになっていただくことを切に願うものである。
アートとサイエンスの見事な融合
書評者: 長坂 行雄 (洛和会音羽病院洛和会京都呼吸器センター所長)
 呼吸器診療の大先達の宮城征四郎先生,そこに大学での綿密な検討を加え,科学的な根拠を積み重ねているのが藤田次郎先生である。本書はこの日本の呼吸器診療を代表するお二人から,沖縄県臨床呼吸器同好会での症例検討を基に,表題通り,「呼吸器診療のアートとサイエンスを“わかりやすく”学べる」ように仕上がっている。多様な病像の20例が示され,画像もレイアウトも優れているので見直しもしやすい。

 いずれの症例にも宮城先生の明快なコメントがあり,症例検討の流れが決まる。これは豊富な経験だけでなく,徹底的に文献を調べ,勉強された集大成である。一見,直観的なコメントだが,実は数字も多く挙げられ,緻密な考えがわかりやすく示されている。広範な知識を,個々の症例に的確に応用するアートの部分である。

 症例検討では,藤田先生の要点を的確に指摘する画像解説に加え,お二人の薫陶を受けた多くの著名なドクターのコメントもあり,沖縄の呼吸器病学が大きな発展を遂げ,日本の中心の一つとしての地位を確立したと実感される。

 各症例の最後は藤田先生の文献考察である。これがサイエンスの最たる部分で,一般論に陥らず,先生の独自の視点を文献的にしっかりと裏付けていて白眉である。当該症例の理解に役立つだけでなく,周辺疾患との関わりも見事に解説されている。

 本書はジェネラリストを対象としたのではなく,呼吸器疾患を専門とする医師を対象として書かれている。専門医でも診断の勘所(アート)が再確認できるだけでなく,疾患の知識(サイエンス)も整理でき,さらに精選された文献に簡単にたどり着くので後進の指導にも便利である。若い先生方にもこのアートとサイエンスの見事な融合にぜひ触れていただきたい。

 本書で驚いたのは,素晴らしい内容と装丁,ブックデザインだけでなく,価格である。この内容と造本で4,800円と格安で,著者と出版社の本書にかける期待と意気込みを感じた。

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