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初学者のための質的研究26の教え

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いくら「入門書」と銘打った本でも、初学者にとっては敷居が高く感じられる。質的研究も同様だ。本書では、研究の準備からまとめ・発表まで、質的研究の過程から厳選した26の要素を解説する。質的研究に取り組もうとする学生や看護師に向け、質的研究への入り口を広げ、抵抗感なく実践へつなげられる、まさに「質的研究の入門書」。
中嶌 洋
発行 2015年07月判型:A5頁:132
ISBN 978-4-260-02405-1
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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  • 序文
  • 目次
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まえがき

 研究とは何だろうか。大学,大学院,専門学校,医療現場などで学ぶあなたにとって,「学ぶ意義」とは一体何だろうか。卒業・修了をめざし,幾度かの定期試験に臨み,順調に単位取得しているあなたにとって,進むべき道はどのように見えているだろうか。そして,あなたにはどのような専門性が身についたと実感できているだろうか。
 学生の質の低下が叫ばれる昨今だが,裏を返せば,教員の資質向上や教材の創意工夫が喫緊課題となっていることを示している。どの学生も自身のビジョンをもち,その基礎固めとして,自己の学びの成果を明確にし,主張を展開していく術を身につけることが重要である。
 本書では,質的研究に興味を抱く初学者をはじめとして,各々の専門領域における学習成果をゼミ論文,卒業論文,修士論文,査読つき論文などにまとめようとする学生およびその指導者を読者対象と想定している。とりわけ,面接調査やインタビューなどを行う質的研究に特化し,人との直接的な関わりを介し,個々の専門性を明確にする支援をし,研究成果を通して社会参加への意欲や職業意識を高めることをめざす。
 本書は,個々の不得手な箇所を補強する素材として,あるいはとことん自身の研究を深化させるための手引きとして,どの項目から読んでもらっても活用できる。
 質的研究とは,まず,自己の興味・関心から出発すること,次いで,他との徹底的な比較・検討から新たに気づくこと,そして,今まで知らなかったあなた自身の世界観を拓くことである。その第一歩として,実際にフィールドやインタビュー対象者の元へ出かけて,勇気をもって,あなたの言葉で問いかけ,直接的関わりを始めてほしい。
 本書をきっかけに,各学問分野で,質的研究が深化し,直接的関わりという姿勢が実践に生かせる多くの人材が育つことを願っている。

 2015年7月
 中嶌 洋

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まえがき

Step 1 質的研究を行うための基礎固め
 1 研究とは「問う」こと
 2 一次資料と二次資料
 3 質的調査(定性的調査)と量的調査(定量的調査)
 4 文献検索・文献検討
 5 先行研究分析
 6 倫理的配慮

Step 2 データ収集の方法
 7 研究参加者選び(サンプリング)
 8 インタビュー調査の種類と手順
 9 効果的なインタビューのための質問
 10 インタビューの種類
 11 観察法
 12 エスノグラフィック・インタビュー
 13 ナラティヴ・インタビュー
 14 フォーカス・グループ・インタビュー

Step 3 データの分析方法
 15 信頼性と妥当性
 16 トライアンギュレーション
 17 グラウンデッド・セオリー・アプローチ
 18 エスノグラフィー
 19 KJ法
 20 絶えざる比較法
 21 KH Coderによる分析
   [COLUMN] KH Coder による分析の実際

Step 4 質的研究の論文執筆と発表
 22 論文執筆
 23 厚い記述
 24 研究論文の進め方
 25 査読をクリアするための秘訣
 26 プレゼンテーションの留意点と秘訣

あとがき
索引

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質的研究へのハードルを下げる研究全般の入門書 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 水戸 優子 (神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科教授)
 保健医療福祉の現場で,対象者のニーズに応じたケアを実践するためには,もちろん疫学調査などの量的研究を行うことも大切ですが,それと同じぐらい,あるいはそれ以上に,1人ひとりの対象者の価値観や経験を洞察する質的研究の実施は大切なことであると思います。しかし,質的研究の方法は,統計学を駆使するような量的研究方法とは異なり,研究者自身の能力がそのままデータ収集の範囲や深さ,分析の質に影響してしまいます。そのため,保健医療福祉の実践者で,初めて質的研究に取り組もうとする人には,ハードルが高い印象があるかもしれません。特に,「インタビューをしたいけど,どうしたらいいの?」とか「逐語録に起こしてはみたけれど,この膨大なデータをどうしたらいいのだろう?」と途方にくれる人は多いのではないでしょうか?そのような人に,本書は役立つと思います。

 簡単に本書の構成・内容を紹介しましょう。本書のタイトルが「初学者のための質的研究26の教え」というように,質的研究にかかわる内容が26項目(各項目が4~6ページ)に簡潔にまとめられており,最初の項目から順々に読むこともできれば,途中の項目から必要な箇所だけを読むことができるようになっています。それぞれの項目は,質的研究の種類や方法の特徴,手順や留意点が概要の文章と表のかたちで整理されているので,一目瞭然でわかりやすいです。ところで,前半の項目は,「質的研究」の本でありながらも質的研究の内容に限定したものではありません。初学者が,研究を始めるうえで悩みそうなこと,たとえば「研究とはなにか」や「一次資料と二次資料の違い」「文献検索や文献検討をどうやってやればいいのか」というように,研究全般にかかわる基礎的知識や方法が紹介されています。また,質的調査(定性的調査)と量的調査(定量的調査)の違いが紹介されています。このことは,初学者が目的に応じて研究方法を選ぶときに量的研究がよいのか質的研究がよいのかを考えるうえで参考になるでしょう。研究方法の紹介は著者の経験が活かされており,具体的に示されています。たとえば,インタビュー法では,よい質問と悪い質問の例が表の形で載せられています。分析方法についてもデータ,コード,サブカテゴリー,カテゴリーの流れの具体例で明示されているので,実際の分析作業の手助けになると思います。

 私(書評者)の欲を言うならば,質的研究の本であるので,もっと量的研究に比べて質的研究のここがすばらしい!というのをアピールしてくれたらよいのにと思います。おそらくは,各項目を簡潔にまとめるために,不必要な説明を省いたためでしょう。それでも,保健医療福祉の現場で活躍されている方々にお薦めできる1冊です。

(『看護教育』2015年12月号掲載)

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