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網膜剥離と極小切開硝子体手術

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眼科診療のエキスパートを目指すための好評シリーズの1冊。網膜剥離の病態理解のための最新知見から診断検査・治療の実際までを解説した決定版テキスト。手術器械や観察系の進歩、補助薬剤の使用などで大きな変化を遂げている硝子体手術の全貌を網羅し、極小切開ならではの注意点や合併症対策についても解説。豊富な図解と画像に加え、エキスパートの手術手技が閲覧できるWeb動画付き。すべての眼科医必読の最新スタンダード。

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シリーズ 眼科臨床エキスパート
シリーズ編集 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信
編集 寺崎 浩子 / 𠮷村 長久
発行 2015年04月判型:B5頁:388
ISBN 978-4-260-02115-9
定価 18,700円 (本体17,000円+税)

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 極小切開硝子体手術(micro-incision vitreous surgery;MIVS)は,minimally invasive vitreous surgeryといわれるほど,手術侵襲は小さくなっている.その理由のもっとも大きなものは,細いながらもカッターの性能が向上していること,トリアムシノロンアセトニドによる硝子体の可視化,そして,クロージャーバルブをつけたトロカールにより真にclosed surgeryとなったことなどである.観察系の変化も大きく寄与している.しかし,20ゲージの手術とは,ただ器械の太さが違うだけではないので,MIVSなりの注意点,合併症が存在することを忘れてはいけない.
 本書では,まず,第1章の総説で,網膜剥離についての歴史を有名なSchepensとその門下による著書に学び,また網膜剥離の病態については最新の文献を引用して,網膜剥離でどのような変化が起こり,なぜ視力が低下し,また回復するのかについて,わかっていそうでわからないところを,ごく平易に解説した.誰もが知りたいところであったと思う.続いて,症例を提示した.さらに,診断,手術手技や合併症,術後の評価について解説した.また,裂孔原性網膜剥離の中でも,毛様体裂孔は特殊な状況であり,なかなか理解が得にくいのであるが,本書ではかなりの重点が置かれてわかりやすい図でよく説明されている.読んでいただくと,日ごろの疑問が解決されるであろう.
 網膜剥離は,眼科医の誰もが経験する疾患である.診断が明らかなものもあれば,悪性腫瘍など重篤な疾患との鑑別を迫られることもある.どのような施設に紹介するか,その緊急度はいかがなものか? さて,いったん裂孔原性網膜剥離と診断したら,次は治療選択である.強膜バックリング手術を行うのか,硝子体手術を行うのか方法を選択し,手術のタイミングを決めなくてはならない.自身の施設でできるならば,例えば加齢に伴う胞状の剥離では,午前の外来診療の時間に来院したのであれば,おそらく当日手術となるであろうし,夜間に来院したら,翌日昼間に手術となるであろう.我々はその短い間に,裂孔を同定するのは当たり前,それに加え患者の全身状態,家族の背景,本人の職業などをはじめ,屈折,眼軸,緑内障の有無や水晶体の状況などたくさんのことを把握しなくてはならず,迷っている時間はない.その時に備えて日ごろから本書で知識を蓄えていただき,手術が終わったらもう一度,本書に立ち返ってみていただくと,何倍も理解が深まると思う.
 本書の執筆者は,手術のエキスパート中のエキスパートであるか,エキスパートのもとで耳が痛くなるほど手術中のつぶやきを聞き,日々手術の研鑽を積んできた中堅の医師である.
 重要な手技については,付録として動画を用意した.本書を読んでいただくと明日から先生も網膜剥離診療のエキスパートである.
 最後に,多忙の中,本書に熱意あふれる執筆をしてくださった先生方に感謝を申し上げて序文とする.

 2015年3月
 編集 寺崎浩子,吉村長久

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第1章 総説
 網膜剥離の診療概論
   I.網膜剥離診療の歴史
   II.網膜剥離による形態変化
   III.網膜剥離の臨床診断のプロセス
   IV.網膜剥離の画像診断:OCTの重要性
   V.MIVSの適応と術前検査
   VI.硝子体手術の実際
   VII.網膜剥離治療後の形態変化
   VIII.術後網膜機能
   IX.術後の視細胞解析
   X.術中OCTの活用
   XI.網膜剥離とサイトカイン:増殖硝子体網膜症阻止への期待

第2章 ケーススタディ
 I 弁状裂孔による胞状網膜剥離
 II 格子状変性の裂孔による網膜剥離
 III 巨大裂孔網膜剥離
 IV アトピー性皮膚炎に合併した毛様体無色素上皮剥離を伴う網膜剥離
 V 黄斑円孔網膜剥離
 VI 未熟児網膜症による網膜剥離
 VII 角膜混濁を有する網膜剥離
 VIII 眼球破裂に伴う網膜剥離
 IX 炎症性網膜剥離(ARN)
 X 増殖硝子体網膜症
 XI 前部増殖硝子体網膜症
 XII 家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)の手術症例(小児重症例)

第3章 網膜剥離の診断
 I 解剖
   I.眼球
   II.前眼部と毛様体
   III.四直筋と前毛様動脈
   IV.上斜筋と下斜筋
   V.網脈絡膜の循環系
   VI.硝子体と網膜
 II 眼底の観察とスケッチ
   I.倒像鏡による眼底検査
   II.前置レンズを用いた細隙灯顕微鏡検査
   III.眼底スケッチの仕方
 III 疾患概念
   I.硝子体液化
   II.後部硝子体剥離
   III.網膜赤道部変性
 IV 裂孔原性網膜剥離の進行度と緊急度
   I.裂孔原性網膜剥離の手術時期
   II.裂孔原性網膜剥離の進行度と緊急度
   III.ウィークエンド手術
 V 臨床所見
  A 病歴聴取
   I.滲出性網膜剥離
   II.牽引性網膜剥離
  B 視機能検査
   I.病態による視機能の違い
   II.時期による視機能の違い
   III.術式による視機能の違い
  C ERG
   I.対象患者とERG装置
   II.ERGの光刺激の条件
   III.ERGの波形解析
   IV.網膜剥離時のERGの波形
   V.眼底が透見できない症例
   VI.網膜剥離と紛らわしい先天網膜分離の症例
  D 眼底写真
   I.カラー眼底写真
   II.広角眼底写真
  E 網膜裂孔検出の指針
   I.患者の病歴からの推測
   II.剥離の範囲と裂孔の位置
   III.検査法
   IV.症例
  F 前眼部検査
   I.前房深度,隅角
   II.画像検査
   III.前房内細胞と虹彩毛様体炎の有無
   IV.眼圧
   V.水晶体の異常
   VI.毛様体無色素上皮剥離の検出
  G 光干渉断層計(OCT)
   I.OCTによる裂孔原性網膜剥離の進行度判定
   II.OCTによる黄斑剥離の有無判定
   III.裂孔原性網膜剥離に伴う視細胞障害
   IV.剥離網膜のOCT所見と病理学的考察
   V.裂孔原性網膜剥離以外の網膜剥離のOCT所見
 VI 鑑別診断
   I.眼底の観察が困難な症例
   II.裂孔原性網膜剥離との鑑別が困難な網膜剥離
 VII 網膜剥離の原因
  A 疫学
   I.罹患率
   II.好発年齢
   III.男女比
  B 視神経乳頭異常
   I.視神経乳頭ピット
   II.朝顔症候群
   III.乳頭コロボーマ
  C 巨大裂孔
   I.巨大裂孔の特徴
   II.Wagner症候群,Stickler症候群
  D 無・偽水晶体眼
   I.疫学
   II.発症機序
   III.治療上の留意点
  E アトピー性皮膚炎
   I.アトピー性皮膚炎に合併した網膜剥離を理解する上で必要な解剖学
   II.アトピー性皮膚炎に合併した網膜剥離の原因裂孔
  F 外傷
   I.外傷による網膜剥離のメカニズム
   II.鈍的外傷による障害
   III.外傷による網膜剥離
   IV.外傷による網膜剥離の硝子体手術
  Topics
   黄斑円孔以外の強度近視の網膜剥離例

第4章 網膜剥離に対する硝子体手術
 I 強膜バックリング手術と硝子体手術の選択
   I.強膜バックリング手術の適応となる網膜剥離
   II.硝子体手術の適応となる網膜剥離
 II 術前準備
   I.実際の手技
 III 硝子体手術装置の進歩と注意点の変化
   I.歴史
   II.硝子体手術器械の進歩
   III.駆動方式とデューティサイクル
   IV.灌流系
   V.眼内照明装置
 IV 硝子体カッター
   I.駆動系と切除方式
   II.安全かつ効率のよい硝子体カッターの開発
 V 黄斑部膜処理
   I.周辺部網膜剥離を伴った黄斑前膜
   II.後部硝子体が未剥離の網膜剥離
   III.黄斑部に増殖膜がある網膜剥離
 VI 広角眼底観察システム
   I.広角眼底観察システム
   II.シャンデリア照明
 VII 白内障との同時手術
   I.裂孔原性網膜剥離症例での同時手術の適応
   II.裂孔原性網膜剥離症例での同時手術の実際
   III.IOLの選択
 VIII 硝子体切除
   I.後部硝子体剥離に伴う裂孔原性網膜剥離
   II.増殖硝子体網膜症における硝子体切除
   III.黄斑円孔網膜剥離における硝子体切除
 IX 周辺増殖膜処理
   I.周辺増殖膜処理の必要性
   II.方法
 X 術中排液
   I.通常の症例での術中排液
   II.巨大裂孔網膜剥離での術中排液
   III.液体パーフルオロカーボン使用時の注意
 XI 術中光凝固
   I.光凝固の条件
   II.網膜裂孔への光凝固の基本的な考え方
   III.意図的裂孔の作成
   IV.液・空気置換下以外での術中光凝固
 XII タンポナーデ
   I.ガス
   II.シリコーンオイル(SO)
   III.液体パーフルオロカーボン(PFCL)
 XIII 手術記録
   I.手術記事
   II.手術ビデオ
   III.手術データベースの作成
 XIV 術後管理
   I.体位管理
   II.術後安静
   III.生活指導
 XV 術後視機能評価
   I.視力の評価法と問題点
   II.光干渉断層計(OCT)
   III.眼底自発蛍光
   IV.眼底微小視野検査
   V.補償光学を用いた眼底評価
  Topics
   網膜剥離術後の補償光学(AO)

第5章 合併症に対する治療と予防
 I 術中合併症
   I.毛様体無色素上皮下(網膜下)灌流
   II.脈絡膜剥離
   III.網膜嵌頓
   IV.網膜裂孔
   V.網膜血管の障害・硝子体出血
   VI.脈絡膜からの出血
   VII.slippage
   VIII.網膜下液体パーフルオロカーボン
   IX.黄斑円孔
   X.ライトガイドなどの器具による網膜の直接損傷
   XI.角膜上皮浮腫
   XII.低眼圧,駆逐性出血
   XIII.術中白内障・水晶体損傷
 II 術後合併症
   I.網膜再剥離
   II.高眼圧
   III.低眼圧
   IV.術後眼内炎
   V.術後出血
   VI.白内障(ガス白内障・核白内障)
   VII.シリコーンオイルによる角膜障害
 III 僚眼の管理
   I.裂孔原性網膜剥離の僚眼にある網膜格子状変性
   II.裂孔原性網膜剥離の僚眼にある網膜裂孔
   III.特発性巨大網膜裂孔の僚眼
   IV.若年鋸状縁断裂,硝子体基底部裂孔
   V.アトピー性皮膚炎に合併する毛様体皺襞部裂孔
   VI.限局性網膜剥離
   VII.未熟児網膜症・家族性滲出性硝子体網膜症など
  Topics
   増殖硝子体網膜症に対する薬物療法の展望

和文索引
欧文・数字索引

付録Web動画一覧
動画-1 弁状裂孔による胞状網膜剥離
動画-2 黄斑円孔網膜剥離
動画-3 未熟児網膜症での網膜剥離に対する早期手術
動画-4 増殖硝子体網膜症
動画-5 前部増殖硝子体網膜症
動画-6 後部硝子体未剥離の網膜剥離
動画-7 増殖硝子体網膜症での黄斑部膜処理
動画-8 後部硝子体剥離の作製
動画-9 周辺部硝子体切除
動画-10 術中排液
動画-11 術中光凝固
動画-12 術中合併症(1)脈絡膜灌流
動画-13 術中合併症(2)網膜医原性裂孔
動画-14 術中合併症(3)網膜下液体パーフルオロカーボン

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網膜剥離治療の必読書
書評者: 竹内 忍 (竹内眼科クリニック院長)
 網膜剥離の治療に対しては本邦でもいくつかの成書が既に発刊されているが,この度,網膜剥離治療について新しい本が上梓された。『網膜剥離と極小切開硝子体手術』というタイトルのごとく,硝子体手術による治療法についての最新の方法が解説されている。

 本の構成は非常にユニークであり,総説,ケーススタディ,診断,硝子体手術,合併症に対する治療と予防について,順に書かれている。まず,総説は非常に内容のある質の高いもので,網膜剥離の診断と治療,さらには手術後の形態および機能についてERG,OCT,AOカメラによる評価を行っている。また,網膜剥離に伴う炎症,細胞死などを各種サイトカインなどによる評価とともに,わかりやすく解説している。したがって,この総説を読むことで,いかに裂孔原性網膜剥離の病態が奥深く,興味深い疾患であるかがわかる。

 ケースタディでは,代表的な12症例についての手術方法と詳細な解説が行われている。それぞれ代表的な症例を提示して,画像と図を示しながら解説しているので,非常に理解しやすい。特にアトピー性皮膚炎に伴う毛様体裂孔に関する解説は,序文にも書かれているように,わかりやすい図でよく説明されており,網膜剥離の診断の項での詳細な解説と合わせて読むと,病態と治療方法の理解が一層深まると思われる。

 網膜剥離の診断については,多くの項目を設けて詳細に記述されている。まず,解剖から始まり眼底の観察法とスケッチ,疾患概念,進行度と緊急度,臨床所見では視機能検査,ERG,網膜裂孔検出の指針および前眼部検査,OCTについても的確な解説がなされている。鑑別診断に続いて,網膜剥離の疫学のほか,視神経乳頭異常,巨大裂孔,偽水晶体眼,アトピー性皮膚炎,外傷について,その成因を適切な写真と図を用いた解説は,病態を理解する上で非常に役立つと思われる。

 硝子体手術の項では,術式の選択,術前検査,手術装置の進歩,硝子体カッター,黄斑部膜処理,広角眼底システム,硝子体切除,周辺増殖膜処置,術中排液,光凝固,タンポナーデ,手術記録,術後管理,術後視機能検査と細項目が作成され,前半では手術に当たっての必要な知識と検査について,続いて手術方法および手技の具体的な解説が豊富な写真を用いて詳述されている。最後に,術後の経過での問題点と対応策を的確に示している。

 最終項は,さまざまな合併症と僚眼の管理であるが,ここでも多くの項目を設けて,それぞれに対する対策が具体的に示されていある。

 この本の特徴は,他の本には見られないほど網膜剥離治療に必要な多くの項目を作成し,それぞれの項目に関する41名のエキスパートが執筆していることである。各項目のページ数は少ないものの要領良く簡潔に,図や写真を多く使って解説しているため,非常に読みやすくなっている。これにより網膜剥離治療に必要な多くの課題を網羅的に解説することができている。その結果,網膜剥離治療での疑問や不明な点があった場合,この本をひもとくことによって解決策が得られるであろう。また,Topicsとして3つの興味深い話題が取り上げられているのも特筆すべきである。さらに付録としてWeb動画が付いているので,実際の手術手技を動画で見ることができ,大いに参考になるであろう。

 裂孔原性網膜剥離を硝子体手術で治療を行う際には,この本が必読書であることは間違いない。是非ともお勧めしたい一冊である。ただし,強膜バックリング手術方法の選択と手術方法については詳述されていないので,これについては他の成書が必要であろう。

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