聴覚障害学 第2版

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言語聴覚士養成校学生向けの「聴覚障害学」領域のテキストの改訂版。国家試験出題基準を踏まえたうえで、実際の臨床場面で聴覚障害者を訓練・指導する際に必ず抑えておくべき知識の修得も重視。今回の改訂では、音の特性や両耳聴などを扱った「音と聴覚」と題する章を新設。また、この領域の現状に合わせ、人工聴覚器について詳説するなど最新の情報へ更新している。理解に役立つ知見や先駆的試みを扱ったColumnも多数収載。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準言語聴覚障害学
シリーズ監修 藤田 郁代
編集 中村 公枝 / 城間 将江 / 鈴木 恵子
発行 2015年09月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-02117-3
定価 5,720円 (本体5,200円+税)
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第2版の序

 私たちの住む世界には音が遍満している.人間の聴覚の可聴周波数域は20Hzから20,000Hzといわれるが,いうまでもなく自然界には人間の耳では聞くことができない音も存在し,そのような聴知覚圏外の音からも皮膚感覚などを通し生体はさまざまな影響を受けている.また,聴覚は空間的にも時間的にも継続的に情報を受け取り続ける遠隔受容器官であり,それによって広く環境や人を認識し,相互的な関係を形成している.しかしながら音環境と人間の存在との関係や複雑な聴覚情報処理機構については未知の領域も多く,われわれは未だ「聴覚障害」の実像を捉えきれているとはいえない.その解明には,さらに多くの研鑽と時間が必要であり,その前提のうえで本書はある.
 本書は2010年12月に初版が刊行された.時代はまさに医療をはじめ,テクノロジー,社会制度,価値観などが大きな変革期を迎えていた.それから約5年が経過し,その変化の実態と課題が明確になりつつあるときに,第2版の刊行が実現したことは大変意義深いことと感謝している.この間の特筆すべき変化として,(1)難聴の遺伝子診断の実現,(2)補聴器のデジタル化および人工聴覚器,特に人工内耳の普及,(3)ハビリテーションにおける0歳児数の増加,(4)療育・教育分野での障害種別を超えた一元化構想の定着,が挙げられる.その結果,聴覚障害領域に携わる言語聴覚士には,医学やテクノロジーの進歩に見合った新たな臨床的知見や技法の習得とその共有化が求められている.少子高齢化が勢いを増すなか,聴覚障害領域の医療や(リ)ハビリテーションへのニーズは増加している.その一方で聴覚障害領域で働く言語聴覚士の数は極めて少ない.現状を打破するひとつの鍵は,聴覚臨床の専門性を高め,信頼を得ることであり,本書がその一助となればこれに勝る喜びはない.
 今版では,まずは教科書としての内容の適正さと理解のしやすさを考慮し,編集にあたるとともに,最新情報の提供,歴史的経緯や関連情報の提供,具体例や臨床的知見による解説を充実させ,臨床現場での有用性に配慮した.構成面では,新たに「音と聴覚」を章立てし,各章に分散されていた内容を整理した.また,聴覚補償機器の節内にあった「人工内耳」の項を「人工聴覚器」に変更し,最新の各種人工聴覚機器類について解説を施した.さらに,「人工内耳」そのものについても頁数を増やし,内容の充実を図るとともに,小児や成人の「指導・訓練」の項においても人工内耳を想定した内容を加えた.Columnも最新情報の提供を図るために,「難聴の遺伝子診断およびカウンセリング」,「先端研究の報告」,「日本の聴覚特別支援教育の現状と課題」に変更した.また,理解しやすいよう可能な限り各図表には簡単な説明を加えた.本文中には関連する内容の参照ページを適宜記載しているので利用していただけると幸いである.なお紙面の制約上,「障害認識」や「保護者支援」など十分取り上げきれない項目があるが,それは今後の課題としたい.
 第2版の刊行にあたり,内容変更に伴う執筆者の交代があった.初版で執筆された先生方にはこれまで最大限のお力添えをいただき衷心より感謝申し上げる.また今回,熱意と誠意をもってご執筆いただいた先生方ならびに第2版刊行にご尽力いただいた医学書院編集部の方々にも深謝申し上げる.

 2015年7月
 編集
 中村公枝
 城間将江
 鈴木恵子

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第1章 聴覚と聴覚障害
 1 聴覚の機能
  A 感覚のもつ意味
  B 聴覚のはたらき
  C 聞こえとことば
  D 聴覚の発達
 2 聴覚障害とはなにか
  A 用語の定義
  B 聴覚障害の発症率と分類
  C 「聞こえる世界」と「聞こえにくい世界」
  D 聴覚障害の影響とライフステージ
 3 聴覚障害のリハビリテーションの歴史と現状
  A 聴覚障害のリハビリテーションの歴史
  B 聴覚障害のリハビリテーションの現状と課題
 4 聴覚障害のリハビリテーションの概要
  A 聴覚障害のリハビリテーション/ハビリテーションの内容と構成
  B 聴覚障害のリハビリテーションの流れと言語聴覚士の役割
  C 指導機関と指導方法

第2章 音と聴覚
 1 音の物理的特性
 2 人間の聴覚

第3章 聴覚の医学
 1 聴覚の発生
  A 聴覚器官の発生
  B 聴覚野の形成
 2 聴覚器官の解剖・生理
 3 聴覚の病理
  A 末梢感覚器官の疾患
  B 中枢聴覚伝導路の疾患
  C 聴力の変動

第4章 聴覚障害の評価
 1 評価の概要
  A 総論
  B 聴覚障害児者に対する評価と言語診断・聴覚診断
  C 検査と評価の方法
  D 聴覚障害臨床と職能の展開
 2 聴覚機能検査
  A 検査の心得
  B 自覚的聴覚検査
  C 他覚的聴覚検査
  D 乳幼児聴力検査
  E 選別聴力検査
 3 小児の評価
  A 聴覚評価
  B 言語評価
  C 発声発語評価
  D 認知発達検査
  E 情緒・社会性評価
  F 症例の報告例
  G 今後の展望
 4 成人の評価
  A 評価の観点
  B 聴覚の評価
  C コミュニケーションの評価
  D 心理社会的側面の評価
  E 評価のまとめ

第5章 聴覚障害の指導・訓練
 1 聴覚補償機器
  A 補聴器
  B 人工聴覚器
  C 補聴援助システム
 2 小児の指導・訓練
  A 小児聴覚障害の特徴
  B 小児のハビリテーションにおける選択への支援
  C コミュニケーションと言語習得
  D 聴覚活用と聴覚学習
  E 聴覚障害児の音声言語習得上の課題
  F ハビリテーションプログラムの立案
  G 子どもの発達段階と学習方法
  H 言語指導段階
  I 乳児期の指導:前言語的段階
  J 幼児期の指導:言語習得段階
  K 学童期の指導
 3 成人の指導・訓練
  A 成人のリハビリテーションの目的と観点
  B 補聴と残存聴力の活用-聴覚機能にかかわる支援
  C コミュニケーション障害の改善
  D 障害認識と障害受容を促す支援
  E 発症時期別の対応

第6章 特異的な聴覚障害
 1 中枢性聴覚障害
  A 中枢性聴覚障害の概要と診断・評価に用いる検査
  B 中枢性聴覚障害への配慮・リハビリテーションアプローチ
  C 今後の課題
 2 機能性聴覚障害
  A 機能性聴覚障害の概要
  B 検査・評価
  C 指導・訓練
 3 視覚聴覚二重障害
  A 視覚聴覚二重障害の概要
  B 面接・検査・評価
  C コミュニケーション支援
 4 その他の重複障害
  A その他の重複障害の概要
  B 検査・評価
  C 補聴器装用指導とコミュニケーション発達の援助

第7章 聴覚障害のバリアフリーと社会資源
 1 情報保障
  A バリアフリー
  B 情報保障とは何か
  C 情報保障を実現するための対応
 2 聴覚障害と社会資源
  A 聴覚障害と社会福祉制度
  B 聴覚障害と教育制度
  C 今後の情報保障

参考図書
索引

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